プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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第25回宇宙ステーション利用計画ワークショップ開催結果について

平成15年9月17日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1. 報告事項

 「第25回宇宙ステーション利用計画ワークショップ 〜国際宇宙ステーション利用の現状と新たな展開〜 」の開催結果の概要について報告する。

2. 開催目的

 国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)計画に関して、広く国民一般の理解を深め、ISS及び我が国の実験モジュール(JEM: Japanese Experiment Module/愛称:きぼう)の利用拡大・多様化を図るとともに、参加者(利用コミュニティー)の意見を取りまとめ、今後のISS/JEM利用計画等に反映する。

3. 開催概要

(1)日 程: 平成15年9月9日(火)、10日(水)
(2)場 所: 砂防会館 シェーンバッハ・サボー
(3)主 催: 宇宙開発事業団
(4)共 催: 文部科学省
(5)後 援: 総務省、国土交通省
(6)協 賛: 40団体((社)日本経済団体連合会、 日本宇宙生物科学会、 (社)日本物理学会、 日本マイクログラビティ応用学会等)
(7)参加者: 宇宙環境利用に関係又は関心のある研究者、企業、一般人等を中心に2日間で延べ約640名が参加

4. 開催結果(各プログラムにおける主な内容)

(1)第1日目(全体会合)

(a)プログラム1(1):ISS組立再開に向けて

 米国航空宇宙局(NASA)のコステルニック宇宙飛行局次長より、コロンビア号事故調査委員会(CAIB)の事故調査報告書(平成15年8月26日(日本時間)公表)、それを受けたシャトル再開に向けたNASAの実行計画(平成15年9月8日(日本時間)公表)の概要報告とともに、ISSの現状と将来展望についての報告があった。

(b)プログラム1(2):各極におけるISS利用計画の推進状況と今後の展望

 ISS参加の国際パートナーから、利用の現状等について報告が行われた。特にNASAからは、ISSを利用した研究の現状、シャトル飛行再開までの利用への影響、国際協力によるISSの利用例などの紹介があった。

(c)プログラム1(3):きぼうの現状と日本における今後のISS利用計画の展望

 宇宙開発事業団から、「きぼう」の現状と宇宙開発委員会・利用部会の中間報告に基づくISS利用の重点化、多様化、利用制度・体制の見直しの方向性等について報告した。
 また、(社)日本経済団体連合会 宇宙システムワーキンググループ主査の北原氏からISS計画に対する産業界の要望について、電気通信大学 高柳教授からこれまでの研究開発とは異なる教育等の新しい利用領域の可能性と宇宙機関への期待について、それぞれ講演が行われた。

(d)プログラム1(4):今後のISS利用計画にかかる国際協力の進め方と今後の展望

 プログラム1(1)〜(3)の報告を踏まえた上で、各国際パートナーの代表者をパネリストに迎え、利用における国際協力と国際競争、成果のわかりやすいアピール、利用に関する費用対効果の考え方等について討論された。
 利用における国際協力と国際競争については、国際協力で推進するISSでは、最良の科学利用テーマを選ぶという点で競争はあるものの、実施に際しては国際協力の枠組みを作ることが効果的との意見が大勢であった。
 国民一般や政策決定レベルへの成果のアピールについては、獲得されつつあるISSでの成果を各国が共有して活用すること、科学的な面だけでなく地上の様々な問題解決への橋渡しとなること、教育などへの貢献もアピールすべきとの意見が出された。
 費用対効果の算出については、雇用創出、経済効果などのマクロな指標を使うことはあるものの、各極においても数値化することの困難さを実感している旨の発言が見受けられた。

(e)プログラム2:宇宙航空研究開発機構(JAXA)発足と今後の我が国のISS利用計画の推進体制

 宇宙3機関統合の経緯とJAXA組織の概要説明及びJAXAにおけるISS利用計画推進の考え方・体制についての紹介が行われた。

(2)第2日目(分科会)

 ISS利用に関する5つの分科会( (1)物質科学分科会、(2)宇宙生命科学分科会、(3)科学観測/先端技術開発分科会、(4)基礎科学分科会、(5)一般利用分科会)を開催した。
 各分科会では、分野における重点化の方向性、利用多様化に向けた方策、これまでの研究成果等についての報告とともに、JAXAにおける今後の研究・利用の進め方等について、参加者の意見も交えつつ、討論が行われた。参加者(コミュニティー)からの主な意見(概要)は次のとおり。

  • 科学としての体系的研究の推進を行うべき
  • 短時間微小実験手段等を活用しつつ、早期かつ効率的な成果の創出を目指すべき
  • 基礎から応用化(産業界との連携)を目指した取り組みも重要
  • 研究コーディネーション機能を強化すべき
  • 新機関設立を契機として、大学との連携をより推進すべき
  • ISS利用に関する国際協力の仕組みの構築、具体的方策を提示すべき
  • フレキシブルな資金が獲得できるような体系作りが必要
  • 民間利用促進のため、宇宙機関としてできること、できないことを早急に明確にすべき
  • 利用者参加型プログラムを効果的に推進すべき
  • ISSは、科学研究・技術開発のみならず、教育、文化、人文社会、民間利用等、幅広い利用が可能であり、この方向の利用も積極的に推進すべき

5. まとめ

 本ワークショップでは、1日目の全体会合で各宇宙機関から貴重な情報提供及び討論が、2日目の各分科会で参加者も交えた活発な議論が行われた。本ワークショップで得られた参加者(コミュニティー)からの意見は、十分検討した上で、今後のISS利用推進策の検討の過程で可能な限り反映していく。