プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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データ中継技術衛星「こだま」と環境観測技術衛星「みどりII」による
衛星間通信実験の成功について

平成15年2月21日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙開発事業団は、データ中継技術衛星「こだま」*1と環境観測技術衛星「みどりII」*2との間で衛星間通信実験を初めて実施し、日本と直接交信できない地域の上空で「みどりII」が撮影した地表面の画像データを、静止軌道上の「こだま」で中継して地球観測センター(埼玉県鳩山町)へリアルタイムで伝送することに成功しました。

 この成功により、「こだま」の有する世界最先端のKa帯周波数*3衛星間通信技術を駆使したデータ中継機能を初めて実証することができました。またわが国も、米国、ロシアに次いで、衛星間通信技術を用いた宇宙ネットワーク時代の本格的な幕開けを迎えることとなりました。

 今後、「みどりII」のほかにも、打ち上げを予定している陸域観測技術衛星(ALOS)や「きぼう」*4など、中〜低高度(約300〜1,000km)の軌道上を周回する宇宙機からの観測データや実験データを「こだま」で中継して地上局に伝送する*5衛星間通信実験を順次行い、より高度な衛星間通信技術の蓄積を図ります。

*1:DRTS、平成14年9月10日打上げ
*2:ADEOS-II、平成14年12月14日打上げ
*3:20〜30GHz帯(こだま、みどりIIの通信には26GHz帯を使用)
*4:国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験モジュール
*5:地球上空の約60%でリアルタイムの通信が可能になります。





図1「こだま」による「みどりII」観測データ中継イメージ



図2 地上局(日本)との直接通信可能領域



図3 「こだま」を経由した場合の通信可能領域

 「こだま」のようなデータ中継衛星を用いない場合、「みどりII」などの周回衛星が1つの地上局との通信を確保できるのは、地上局からの可視範囲を衛星が通過するわずかな時間に限られます。(図2)

 しかし、「みどりII」など地球観測衛星による観測データや、「きぼう」で行う実験のデータには、大容量のため地上へ伝送するのに連続した長時間の通信を必要とするものがあります。そのため、世界各地に多数の地上局を設置する必要があります。

 一方、「こだま」を用いる場合、静止軌道上に配置された「こだま」で地上局と高度1000km以下の軌道を飛行する宇宙機との通信を中継することにより(図1)、宇宙機の飛行領域の6割程度を通信可能領域に収めることができます。(図3)

 そのため、国土が限られた我が国においても、少ない地上局で宇宙機と通信を確保できる時間を飛躍的に多くすることができます。

「こだま」を経由して取得した「みどりII」搭載
グローバルイメージャ(GLI)の画像


2月20日 日本時間の午後2時頃の雪をかぶったチベット高原からインド亜大陸、セイロン島にかけての広い範囲が観測されました。
GLIの3つの可視光観測波長帯、660ナノメートル(チャンネル22)、545ナノメートル(チャンネル21)、460ナノメートル(チャンネル20)のデータをそれぞれ赤、緑、青色に割り当てた、目で見た状態に最も近い合成画像です。