プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

マイクロラブサット(μ-LabSat)の開発と軌道上実験結果について

平成15年2月19日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

マイクロラブサット(μ-LabSat) 1号機の概要

  • マイクロラブサット(μ-LabSat) 1号機は、小型衛星技術の研究開発の一環として、技術研究本部がインハウスで製作した約50?(約70?×約50?)の小型衛星。
  • 主な実験内容は、以下のとおり。
    (1)将来衛星の分離機構実証
    (2)50kg級小型衛星バス実験
    ※遠隔検査技術実験も通信総合研究所(CRL)/航空宇宙技術研究所(NAL)/東京大学との共同研究として行う。
  • 平成14年12月14日、H-IIAロケット4号機の副衛星として成功裏に打上げられ、約35分後にロケットから分離され、所定の軌道に投入された。

実験成果:将来衛星の分離機構実証

  •  本実験は、分離と同時に衛星を回転させることを目的とし、新規に開発した小型衛星用分離機構の軌道上実証である。
  •  衛星は約12.6回転/分が与えられ、また、大きな傾きもなく分離し、その挙動が設計通りであったことを確認し、所定の目的を達成した。

実験成果: 50kg級小型衛星バス実験

?)50?級スピン衛星バスの技術実証

  1. 基本機器である通信系、データ処置系、電源系、姿勢制御系、熱制御系など全て正常であることを確認した。
  2. スピン衛星の次の特性を把握し、安定して制御している。
    • スピンレートの制御
    • ニューテーション(すりこぎ運動)の制御
    • スピン軸の制御
  3. 定常時の主要データ
    • スピンレート: 3.0 回転/分
    • 発生電力 :約70 W (計画値:55W以上)
    • 太陽方向 :スピン軸に対して上部から 約45度
    • ニューテーション :0.2度

■50?級スピン衛星の技術を実証した。

II)小型衛星の三軸姿勢制御実験

 平成15年1月24日から三軸姿勢制御実験を開始し、成功した。
 2月11日には地球指向も成功し、三軸姿勢制御機能を確認した。


各軸の挙動(H15/1/24)

若手職員のインハウス作業

  • 開発フェーズ及び運用フェーズともに事業団の若手職員が自ら実施している。
  • 機器製作は、事業団の設計に基づき専門業者に依頼した。
  • 搭載ソフトウェアは、事業団で全て製作した。

衛星組み立て作業

ソフトウェアの製作

分離機構の取付け作業

 若手職員が衛星開発の一連の流れを経験したことの意義は大きく、事業団の各プロジェクト及び研究開発に対する人的資源の維持養成とその質的向上に成果があった。

実験成果のまとめ


筑波宇宙センター内にある小型衛星運用室
  •  以上のように、スピン衛星としての機能性能が順調であることを確認し、引き続いて、実施した三軸姿勢制御実験にも成功した。これにより「50?級小型衛星バスの技術実証」という所期の目的を達成した。
  •  また、事業団若手職員によるインハウスの衛星作りは、事業団技術者の人材育成及び設計・組立て・試験技術の習得に役立った。
  •  本衛星の成功は、小型衛星利用の可能性を示した。今後、宇宙機器の実証手段として小型衛星をシリーズ化する際に、この成果を生かしたい。
  •  主要な実験が完了したことから今後は、CRL、NAL及び東京大学との共同研究である遠隔検査技術実験を進める。また、運用の継続が期待できることから、本衛星を活用した各種実験も併せて計画したい。

参考:遠隔検査用カメラの動作確認時に得られた画像

CRLが開発したCMOSカメラで撮影


2003年1月5日10時30分頃
衛星は約11回転/分のスピン状態

2003年2月8日11時30分頃
衛星は約3回転/分のスピン状態