プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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「みどりII(ADEOS-II)」の状況について

平成15年1月15日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

1.現在の「みどりII(ADEOS-II)」

「みどりII」は初期軌道制御を実施するとともに、高性能マイクロ波放射計(AMSR)のアンテナ回転、グローバル・イメージャ(GLI)の所定の温度への冷却を終了し、1月10日にクリティカルフェーズを終了した。衛星状態は良好であり、搭載機器のチェックアウトを継続中である。
尚、現在の「みどりII」の軌道は以下のとおりであり、所定のミッション軌道に投入されたことを確認した。

遠地点高度 818Km
近地点高度 799Km
軌道傾斜角 98.7度
周期 101分

クリティカルフェーズ:
電力の確保や三軸姿勢制御の確立等衛星の基本機能の確認を含め、観測軌道への軌道変換、観測機器の立ち上げなど運用初期における困難性を伴う運用段階のこと。

太陽電池パドルの展開状況

2.これまでの主な運用結果

12月14日 打上げ
12月14日 太陽電池パドル展開
12月17日 軌道間通信系(IOCS)アンテナ展開
12月17日 定常制御モードへ移行
12月23日〜1月10日 初期軌道制御
1月3日〜1月7日 AMSRランアップ(40rpm)
1月10日 GLIクールダウン
クリティカルフェーズ終了
1月11日 SeaWindsランアップ(18rpm)

AMSRランアップ:
AMSRを停止状態から、定常観測回転数(40rpm)まで安定回転させること。
GLIクールダウン:
センサ部を所定の温度 (短波長赤外検出器:220K、中間熱赤外検出器:80K)へ冷却すること。
SeaWindsランアップ:
SeaWindsを停止状態から、定常観測回転数(18rpm)まで安定回転させること。

3.現在までに確認された主な特異事象と対処

(1)ロール軸まわり姿勢制御スラスタ噴射頻度

現象
ロール軸(衛星の進行方向)まわりの姿勢制御を行う1N(ニュートン)スラスタの噴射頻度が予想値の1.5〜3倍となっていた。

原因
その後の調査検討の結果、スラスタの推力に問題なく、リーク(推進薬の漏れ)もないことが分かった。解析の結果、初期の自然外乱等の推定量が小さかったことが原因であると判断した。 適正な自然外乱値等を用いて再解析を行った結果、噴射頻度の実測値と予測値がほぼ一致した。

対処
特になし。(衛星はリアクションホイールを用いた定常制御モードで問題なく運用されている。)

(2)太陽電池パドル張力モニタ値の規格外れ

現象
太陽電池パドルの挙動をモニタするデータの一部(張力モニタ)が規格を外れた。(規格値5kgf〜8kgfに対して、日陰時1kgf、日照時8kgf から10kgf)他のモニタデータ(パドル張力機構のストローク値や温度、発生電力)は正常な値を示している。

原因
4点ある歪みセンサの温度差による0点校正が、一部の剥離等によりできないことによる出力異常と推定している。本推定については、地上での再現試験を検討している。

対処
データの監視を継続する。なお、パドルの固有振動数、発生電力、ストローク等からパドル自身および張力機構動作は健全であることを確認した。

(3) Sバンド(USB)送受信の乱れ

現象
AMSRランアップ開始後(1月3日(JST)以降)にコマンド送信NGが複数回発生する等、Sバンド送受信に乱れが生じた。

原因
衛星及び地上局受信機の受信レベルにAMSRアンテナの回転周期に同期した変動が見られることから、AMSRアンテナの回転に伴う反射電波が干渉したと判断している。

対処
現在も同様にレベル変動は発生しているが、地上局可視の後半でコマンドの送信を行うこと等で対処している。尚、定常段階では、主にDRTSを使うので本件が問題になることはない。 DRTSを使用しない場合でも、上記対策により対応可能である。

4.今後の計画

「みどりII」は、今後4月中旬までの約3ヶ月間、センサ等の衛星搭載機器の機能確認を実施する初期機能確認段階に移行する。

1月下旬〜2月上旬 センサ初期観測画像の公開
2月下旬〜3月上旬 「こだま(DRTS)」との軌道間通信実験
4月中旬以降 定常運用/校正・検証期間へ移行

初期機能確認段階:
搭載観測機器の機能確認(画像取得等)、衛星間通信実験等を実施する定常運用開始(4月中旬予定)までの運用段階のこと。

定常運用/校正・検証期間:
4月中旬以降、衛星は初期チェックアウトを完了し定常運用に移行し、取得される観測データについては、校正・検証を実施する。