宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
「みどりII」は初期軌道制御を実施するとともに、高性能マイクロ波放射計(AMSR)のアンテナ回転、グローバル・イメージャ(GLI)の所定の温度への冷却を終了し、1月10日にクリティカルフェーズを終了した。衛星状態は良好であり、搭載機器のチェックアウトを継続中である。
尚、現在の「みどりII」の軌道は以下のとおりであり、所定のミッション軌道に投入されたことを確認した。
クリティカルフェーズ:
電力の確保や三軸姿勢制御の確立等衛星の基本機能の確認を含め、観測軌道への軌道変換、観測機器の立ち上げなど運用初期における困難性を伴う運用段階のこと。 |
![]() 太陽電池パドルの展開状況 |
12月14日 | 打上げ |
12月14日 | 太陽電池パドル展開 |
12月17日 | 軌道間通信系(IOCS)アンテナ展開 |
12月17日 | 定常制御モードへ移行 |
12月23日〜1月10日 | 初期軌道制御 |
1月3日〜1月7日 | AMSRランアップ(40rpm) |
1月10日 | GLIクールダウン |
クリティカルフェーズ終了 | |
1月11日 | SeaWindsランアップ(18rpm) |
現象
ロール軸(衛星の進行方向)まわりの姿勢制御を行う1N(ニュートン)スラスタの噴射頻度が予想値の1.5〜3倍となっていた。
原因
その後の調査検討の結果、スラスタの推力に問題なく、リーク(推進薬の漏れ)もないことが分かった。解析の結果、初期の自然外乱等の推定量が小さかったことが原因であると判断した。 適正な自然外乱値等を用いて再解析を行った結果、噴射頻度の実測値と予測値がほぼ一致した。
対処
特になし。(衛星はリアクションホイールを用いた定常制御モードで問題なく運用されている。)
現象
太陽電池パドルの挙動をモニタするデータの一部(張力モニタ)が規格を外れた。(規格値5kgf〜8kgfに対して、日陰時1kgf、日照時8kgf から10kgf)他のモニタデータ(パドル張力機構のストローク値や温度、発生電力)は正常な値を示している。
原因
4点ある歪みセンサの温度差による0点校正が、一部の剥離等によりできないことによる出力異常と推定している。本推定については、地上での再現試験を検討している。
対処
データの監視を継続する。なお、パドルの固有振動数、発生電力、ストローク等からパドル自身および張力機構動作は健全であることを確認した。
現象
AMSRランアップ開始後(1月3日(JST)以降)にコマンド送信NGが複数回発生する等、Sバンド送受信に乱れが生じた。
原因
衛星及び地上局受信機の受信レベルにAMSRアンテナの回転周期に同期した変動が見られることから、AMSRアンテナの回転に伴う反射電波が干渉したと判断している。
対処
現在も同様にレベル変動は発生しているが、地上局可視の後半でコマンドの送信を行うこと等で対処している。尚、定常段階では、主にDRTSを使うので本件が問題になることはない。 DRTSを使用しない場合でも、上記対策により対応可能である。
「みどりII」は、今後4月中旬までの約3ヶ月間、センサ等の衛星搭載機器の機能確認を実施する初期機能確認段階に移行する。
1月下旬〜2月上旬 | センサ初期観測画像の公開 |
2月下旬〜3月上旬 | 「こだま(DRTS)」との軌道間通信実験 |
4月中旬以降 | 定常運用/校正・検証期間へ移行 |
初期機能確認段階:
定常運用/校正・検証期間: |
![]() |