本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
1.これまでの運用経過
(1)打上げ、衛星分離
- 「みどりII」は平成14年12月14日午前10時31分、H-IIAロケット4号機により成功裏に打上げられ、打上げ約16分32秒後にロケットから分離、所定の軌道に投入された。
(2)クリティカルフェーズ(*1)の運用
- 初期軌道制御により「みどりII」を所定の太陽同期準回帰軌道へ投入した。投入軌道と現在の太陽電池発生電力からすると今後3年間の面外軌道制御は不要である。
- クリティカルフェーズの運用は、打上げ直後から確認されたロール軸まわり姿勢制御スラスタ噴射頻度の超過現象のため、定常制御モードへの移行を2日間延期したが良好に完了した。
*1:打上げ段階から初期機能確認開始まで
(3)初期機能確認段階(*2)の運用
- チェックアウト計画及び手順に基づき、バス系の各サブシステム及びミッション系(観測機器)のチェックアウトを行った。
- 「こだま(DRTS)」および欧州宇宙機関(ESA)の「ARTEMIS」との衛星間通信実験を行い、データ中継衛星によるグローバル観測ができることを実証した。
*2: 打上げ段階から初期機能確認終了まで(打上げ後約4ヶ月)
初期機能確認段階の主要作業スケジュールは図1のとおり。
図1 ADEOS-II 初期機能確認段階の主要作業スケジュール
2.初期機能確認段階の評価
- バス系各機器について、ADEOSからの変更点及び新規開発要素を含め、所定の機能・性能を満足することを確認。
- GLI、AMSRとも正常に動作し、画像の生成を実施。
- すべてのミッション機器についてグローバル観測を行い得ることを確認。
- DRTSとの間で、世界最先端のKaバンドデータ通信、SバンドTLM/CMD運用を実施。
- ESAのARTEMISとの間で、日/欧初の衛星間通信を実施。
- 次段階以降に反映すべき内容(運用基準、運用上の注意事項等)を識別。
- 一部、校正検証段階に処置、検討を持ち越す事項(AMSR/USB干渉等)があるが、グローバル観測には影響を与えない。また、いずれも解決の見通しが立っている。(表1参照)
表1 軌道上特異事象サマリ
No | 特異事象 | 発生時期 | 運用への影響 | 原因、処置/対策 |
1 |
ロール軸まわり姿勢制御スラスタ(1N)の噴射頻度が予想値の1.5〜3倍となっていた。 |
2002年12月15日 |
なし |
原因:初期の自然外乱等の推定量が小さかったことが原因であると判断した。
対処:特になし。(衛星はリアクションホイールを用いた定常制御モードで問題なく運用されている。) |
2 |
AMSRランアップ開始後にコマンド送信不受理が複数回発生する等、Sバンド送受信に乱れが生じた。 |
2003年1月3日 |
回避運用で対応 |
原因:AMSRアンテナの回転に伴う反射電波が干渉したと判断している。
対処:地上局可視の後半でコマンドの送信を行うこと等で対処している。 |
3 |
データレコーダ(MDR)によって取得したミッションデータにパケット欠損が発生していることが複数のパスで確認された。 |
- |
なし |
原因:ほぼ必ず同位置でパケット欠損が発生していることから、新たに発生したMDR特異点(エラー発生点)が原因である。
対処:パケット欠損は発生するが、データへの影響度は小さいことから、このまま使用する。 |
総合評価
前記成果は、打ち上げ前に宇宙開発委員会に報告した下記の「打上げ後の評価基準」に照らし、初期チェックアウト終了時としての達成度3は満足していると判断する。
達成度 | 定義 【】内は判断時期 |
0 |
打上げ失敗または衛星の全面的な機能喪失。
【打上げ直後】 |
1 |
バスの機能が確認される。
【初期チェックアウト終了時】 |
2 |
一部のセンサが機能し、全球観測データの取得ができる。
【初期チェックアウト終了時】 |
3 |
NASDAセンサが機能し、全球観測データの取得ができる。
【初期チェックアウト終了時】 |
4 |
○3年間の運用及び軌道上技術評価を通じADEOSによる広域観測技術の継承・発展が検証できる。
○地球環境問題に係る全地球規模の水・エネルギー循環のメカニズム解明に有益な地球科学データを3年間提供できる。
【設計寿命3年終了時】 |
5 |
達成度4のデータ提供が3年以上できる。 |
3.定常観測/校正・検証段階への移行
- 初期機能確認段階終了以降は、ADEOS-IIミッションを完遂することを目的として、データ中継衛星経由または直接受信によりグローバルに観測データを取得(定常観測)する。
- 地球観測衛星の運用体制の複雑さ及びADEOS軌道上運用からの改善要望の反映から、ADEOS-II衛星の開発プロジェクトチームを初期機能確認段階後も存続し、ADEOS-II衛星を継続的に責任もって運用するとともに、衛星システムに関する軌道上技術評価を実施する。
- データ取得処理システムについては、取得データの評価(校正・検証)ならびに処理アルゴリズムの更新のため、打上げ後1年を目処とする校正・検証期間へ移行する。
図2 ADEOS-II ミッション運用計画
「みどりII」がとらえた、2003年台風2号「くじら」
Typhoon No.2 "KUJIRA" captured by "Midori II"
12 Apr. 2003, 00:27(UTC)
アムール川流域および.日本海にたなびく煙