宇宙開発事業団
宇宙開発事業団は、平成15年9月9日から14日(日本標準時、以下同じ)にかけて、光衛星間通信実験衛星(OICETS)の光通信機器の開発モデル(衛星搭載機器と同等のもの)と、軌道上にある欧州宇宙機関(ESA)の先端型データ中継実験衛星「アルテミス(ARTEMIS)」との間で、データ送受信のためのレーザ光による光通信実験を実施し、通信に成功しました。
本試験は、OICETSの光通信機器地上モデルを大西洋上のスペイン領カナリヤ諸島テネリフェ島にあるESA光地球局に設置し、静止軌道上のアルテミス衛星との間で双方向の光通信を行い、OICETS打ち上げ前に光適合性を確認するための実験です。
今回の試験の成功により、OICETS打上げ前の重要な確認事項である両衛星の光通信機器相互の適合性が確認できたといえます。
OICETSは、通信の大容量化および機器の小型化という観点で将来の宇宙活動に重要となる光衛星間通信技術に関し、ESAとの国際協力により静止衛星軌道上のアルテミス衛星と地球低軌道上のOICETSとの間で、捕捉・追尾・指向技術を中心とした要素技術の軌道上実証を目的とした衛星で、平成17年度の打ち上げを目指し準備を進めております。
OICETSは将来の宇宙活動において重要となる光衛星間通信に関し、ESAとの国際協力により静止衛星軌道上のアルテミス衛星と低軌道上のOICETSとの間で、捕捉・追尾・指向技術を中心とした要素技術の軌道上実験を目的とした衛星で、平成17年度の打上げを目指し準備を進めております。
寸法 | 衛星本体 0.78m×1.1m×1.5m(高さ) 光アンテナを含む全高 2.93m、 太陽電池パドルを含めた全長 9.36m |
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重量 | 打上げ時 約570kg |
軌道 | 円軌道(高度:610〜550km、軌道傾斜角:約35度) |
寿命 | 1年 |
ミッション | 光学系による衛星間の捕捉追尾を中心とした要素技術の軌道上実験 光半導体デバイス、光学系技術の宇宙実証 |
欧州宇宙機関(ESA)の先端型データ中継技術衛星「アルテミス」(ARTEMIS)は、高度な衛星間通信実験、陸域移動体通信実験等を目的とします。
2001年7月12日にアリアン5で打上げられましたが、ロケットの上段の失敗により静止軌道への投入に失敗しました。衛星の軌道制御用電気推進装置によって静止軌道への遷移を試み、1年半のオペレーションの末、2003年1月31日静止軌道への遷移を完了し、同年3月下旬にはNASDAの環境観測技術衛星「みどりII」との間でマイクロ波による衛星間通信実験に成功しました。
寸法 | 25mx8mx4.8m(アンテナ展開時) |
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重量 | 打上げ時 3.1トン |
軌道 | 静止衛星軌道 (東経21.5°) |
設計寿命 | 10年 (光通信機器は5年) |
ミッション | 光通信 データ中継(S/Kaバンド) 陸域移動体通信(Lバンド) |
OICETSとアルテミスとの軌道上実験を円滑に実施するため、OICETS打上げまでに両方の光衛星間通信機器間の適合性を事前に確認する試験を実施する。本試験により、光通信のインタフェースの検証が打上げ前に可能となり、軌道上実験におけるリスクを最小化できる。
ESAは、カナリア諸島テネリフェ島のテイデ山麓の高度約2400 mのところに、アルテミス光通信機器の機能確認用に光地球局(OGS:Optical Ground Station)を整備している。OGSを利用することにより、大気の揺らぎの影響を抑えた実験が可能である。
本適合試験は、アルテミスの静止化後、開発試験の完了したOICETS搭載用光通信機器(LUCE:Laser Utilizing Communications Equipment)地上モデル(LUCE EM)をOGSのドーム内に設置し、OGSの助けを借りながらアルテミスとの光リンク(光通信路)を成立させて、両者の適合性を確認するものである。
LUCEはOGSドーム中のOGS望遠鏡の隣に設置される。OGS望遠鏡からの強力なレーザ光でアルテミスをOGSに指向させることにより、LUCEによる捕捉を容易にする。LUCEの制御はドームルーム下の制御室から実行される。
下図はLUCEをOGSの望遠鏡の側に設置し、アルテミス方向を向いている図。開口部に見える点は月。実験では望遠鏡のレーザ光の送信レベルを下げ、最後はLUCEとアルテミス間の通信のみとなる。