プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)の
地表反射光観測装置(POLDER)の初画像公開について

平成15年2月21日

宇宙開発事業団

 フランス国立宇宙研究センター(CNES)が開発した、環境観測技術衛星「みどりII」搭載の観測センサ、地表反射光観測装置(POLDER)による解析画像が、CNESによって公開されましたのでお知らせ致します。

 発表の画像は、平成15年2月1日にPOLDERが試験的に取得したデータをCNESが処理、解析したものです。

 POLDERは、地表と大気から反射される太陽光の偏向、分光特性などをグローバルに測定する広角型放射計であり、その独自の観測機能は、地表での反射と大気の散乱を識別する新たな情報を与え、気候におよぼすエアロゾルの影響や雲の特性の解明に役立てられるものと期待されています。

 なお、CNESと宇宙開発事業団が共同開発した「みどりII」搭載のデータ収集システム(DCS)についても、初期機能確認を実施しており、4月中旬以降に本格運用に入る予定です。

  • エアロゾル:大気中に浮遊する固体または液体の粒子のこと。主に霧や霞などの水滴、スモッグ、チリなどから構成される。
  • DCS(Data Collection System):地球上の複数の地点に配置された観測ブイなどで測定した水温、流速、雨量、気温などのデータを人工衛星経由で地上の受信局にデータ伝送し、各地からの種々のデータを一括して記録するシステム。

POLDERで観測した自然光画像と偏光画像



環境観測衛星「みどりII」(ADEOS-II)搭載の地表反射光観測装置(POLDER)は可視から近赤外にかけた8つの波長帯の自然光と偏光の画像を取得します。この2つの画像は、2003年2月1日にイベリア半島と北アフリカを観測した自然光(左)と偏光(右)の画像です。これらの画像は、443nmを青に、670nmを緑に865nmを赤に振り分けてカラー合成した画像です。左の自然光の画像では、雲を白、海を濃い青で、地表面は植生を赤で、土壌を茶色や黄色で明確に識別することが出来ます。右の偏光画像はこのセンサ特有のものです。全体的に青色が卓越しているのは、短い波長域で光が大気の分子によって効率的に散乱されるためです。大気により散乱された光の偏光の程度は、太陽光と視線との間の角度によります。左上に見える虹色は光が水の粒によって散乱されたことによります。このことにより雲頂にあるのが氷なのか水なのかを判断することができます。またこれらの画像から、地表面による偏光の影響は非常に小さいことがわかります。このため偏光画像は微細な大気の特徴や、エアロゾルの性質を決定するのに有効な情報となります。

POLDERで得られたヨーロッパとアフリカの連続画像


環境観測衛星「みどりII」(ADEOS-II)搭載の地表反射光観測装置(POLDER)が、2003年2月1日の西ヨーロッパと北アフリカ(上から下へ、左から右の順番で観測)を、異なるアングル(視角)で、可視・赤外の8つの波長帯を用いて連続的に取得した画像です。これらは、443nm(青)、670nm(緑)及び865nm(赤)の3つの波長のカラー合成画像です。雲(白)、海(青)、および植生(赤)、土壌(茶または黄)などの地表の違いを明確に区分しています。広い視野を持つPOLDERは、衛星の進行方向への動きとともに、異なる視角で地球上の同じ対象物を見ることができます。この結果、観測視角による明るさの変化を明確にとらえることができます。このユニークな能力により、地表面や大気により反射される太陽光を複数の視角で観測し、視角に依存する観測対象や大気の効果をより正確に把握できるようになり、地表面等の特徴をより精度高く決定できます。