プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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高品質タンパク質結晶生成プロジェクト 第1回宇宙実験結果(速報)

平成15年5月14日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

第1回 フライト実験計画の概要

■ 打上げ:2003年2月2日
■ 回 収:2003年5月4日

・ GCF結晶化装置基本性能の検証と技術課題抽出
・ STS-107宇宙実験との比較(蒸気拡散法 vs 液液拡散法)

*スペースシャトルコロンビア号事故により、比較検討できなかったが、試料の結晶化有無は確認機能、結晶成長、立体構造解析、医薬品開発への応用などについて学んでもらうことを目的とする。

● 搭載タンパク試料数: 36種類

● 宇宙実験用に提供されたタンパク質の特徴(22種類)

アモルファス形状 タンパク質分子が集合する速度が速く、結晶構造を組む時間が充分でない。針状結晶 ある方向性に偏り針状に結晶が成長する。
結晶が大きくならない 微結晶は生成するが、それ以上成長しない。分解能が低い 結晶は得られるが、分解能が非常に低い。
クラスター形成 数個の結晶が集合し、クラスターを形成する。その他(板状、再現性なし等) -

● STS-107宇宙実験との比較実験
 (財)大阪バイオサイエンス研究所、味の素(株)、茨城大学、福井県立大学、名古屋大学

顕微鏡観察による結晶生成結果の概要

構造解析の有無参加機関搭載タンパク質(種類)宇宙での結晶生成の結果(種類)
単結晶が生成何らかの結晶が生成結晶生成無し
地上で構造解析がなされていないタンパク質地上では結晶が得られていなかったもの 理化学研究所 11 3 5 3
地上で結晶は生成するがデータを取得できる結晶にならなかったもの 理化学研究所 11 1 4 6
データ取得はできるが構造解析に十分な分解能のデータが得られなかったもの 理化学研究所 5 4 0 1

(小計) 27 8 9 10
既に構造データが得られているタンパク質 理化学研究所 2 2 0 0
STS-107テーマより提供
(味の素(株)、茨城大学、大阪バイオサイエンス研究所、名古屋大学、福井県立大学)
6 4 0 2
NASDA 1 1 0 0
(小計) 9 7 0 2

(合計) 36 15 9 12

地上では全く結晶が得られなかったが、宇宙で初めて単結晶が生成した例




地上で結晶は生成するが、データを取得できる結晶にならなかったもののうち、初めて宇宙で単結晶が生成した例


データ取得はできるが構造解析に充分な分解能のデータが得られなかったもののうち、単結晶が生成した例
(宇宙と地上での結晶との対比)


データ取得はできるが構造解析に充分な分解能のデータが得られなかったもののうち、単結晶が生成した例




地上では全く結晶が得られなかったもののうち、何らかの結晶が生成した例



地上では結晶は生成するがデータを取得できる結晶にならなかったもののうち、何らかの結晶が生成した例


今後の予定

  • 今後、利用者側(理化学研究所等)で1〜2ヶ月程度を目処に、放射光施設等によるデータ取得及び結晶品質の評価を行った後、構造解析を実施する。
  • NASDAにおいては、宇宙実験の有効性を提示するたに、利用者から結晶品質データを入手し、データベース化を図る。
  • 第2回目の宇宙実験は、本年8月または9月頃打ち上げ予定のロシア・プログレス輸送船搭載に向けて、準備を進めている。(搭載するタンパク質の最終決定は打ち上げの約1ヶ月前を想定)

バックアップチャート

プロジェクトの特徴と概要

■プロジェクトの特徴

  • ロシアとの商業利用契約とESAとの技術協力
  • 継続的、安定的な宇宙実験機会の確保
  • ポストゲノム時代への対応
■プロジェクトの概要
  •  実験実施場所: 国際宇宙ステーション ロシアサービスモジュール
  •  打上げロケット: プログレス無人貨物船
  •  回収宇宙船: ソユーズ宇宙船
  •  実験実施回数: 2003年2月以降3年間、年2回(計6回)を予定

  •  実験実施期間: 2〜4ヶ月
  •  実験装置: GCF(Granada Crystallization Facility)(ESAより借用) 4回目(2004年)以降は、NASDA開発の結晶生成ユニットの利用を想定

タンパク質結晶を用いた構造・機能解析と宇宙の関わり

高品質タンパク質結晶生成プロジェクトにおける利用機関との体制

利用機関とNASDAとの作業分担と成果の帰属

相互の実施事項及び役割分担を明確にした共同研究体制を組み、成果は相互に分担する事項について単独で所有する。

<作業分担>
利用機関 ・蛋白質試料の準備
・蛋白質結晶の構造解析による結晶特性の評価
NASDA ・結晶化条件の検討
・微小重力環境での実験装置の整備及び打ち上げ、軌道上運用、回収作業
<成果>
利用機関 ・蛋白質の発現・精製法
・蛋白質結晶の構造及び座標データ
NASDA ・結晶化条件の検討システム技術
・軌道上結晶生成システム技術

本プロジェクトで利用する結晶生成装置(GCF)

本プロジェクト実施の枠組み