プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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タンパク質機能・構造解析のための高品質タンパク質結晶生成プロジェクト
第2回宇宙実験の実施について

平成15年8月27日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

高品質タンパク質結晶生成プロジェクト第2回宇宙実験の概要

●打上予定日時:
平成15年8月29日 10時47分(日本時間)
●打上時輸送手段:
プログレス補給船(12P)
●帰還予定日:
平成15年11月5日
●帰還時輸送手段:
ソユーズ宇宙船(6S)
●実験実施場所:
国際宇宙ステーション(ロシアサービスモジュール、米国実験棟)
●実験実施期間:
約2ヶ月間
●実験装置:
GCF※1 3式 (69個のGCB※2を搭載)、恒温槽(CGBA※3)
●利用機関等:
理化学研究所
農業生物資源研究所
蛋白質構造解析コンソーシアムに参加する企業(3社)
先導的応用化研究(6テーマ)
その他(NASDAが搭載するリファレンス用の標準タンパク質)
●搭載タンパク質:
53種類(69個のGCBに搭載)

※1:GCF(Granada Crystallization Facility、タンパク質結晶生成装置)
※2:GCB(Granada Crystallization Box、タンパク質の結晶生成用のセル)
※3:CGBA(Commercial Generic Bioprocessing Apparatus)

第2回宇宙実験の特徴と搭載タンパク質数

●高品質タンパク質結晶生成技術の確立のため、第1回宇宙実験で発生した不具合を改良して実施)

    第1回宇宙実験で発生した不具合と処置対策

●STS-107ミッションで成果を喪失したテーマのうち、先導的応用化研究テーマの再実施

    先導的応用化研究のテーマ
    テーマ名代表研究者所属機関テーマ概要搭載タンパク質数(種類)
    睡眠物質及びアレルギー物質合成酵素の結晶成長実験と医薬品への応用 裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所 睡眠物質及びアレルギー物質合成酵素の結晶化を目的とした宇宙実験を行い、居眠り防止薬や抗アレルギー薬等の開発に繋げる。 2 STS-107で成果を喪失したタンパク質
    新規抗寄生虫薬の結晶解析に基づく分子設計 北 潔 東京大学 宇宙実験で得られたタンパク質の立体構造解析の結果により、新規の抗寄生虫薬の開発に繋げる。 3
    加齢性疾患の病因蛋白質に対する特異的阻害剤の創薬支援研究 杉尾 成俊 三菱化学(株) 加齢性疾患等の病因タンパク質の結晶化を目的とした宇宙実験を行い、タンパク質の立体構造解析の結果から医薬品の開発に繋げる。 1
    光受容膜蛋白質の結晶化研究 石黒 正路 (財)サントリー生物有機科学研究所 宇宙環境を利用して光受容膜タンパク質の結晶化を行い、立体構造の解析結果から、受容体の立体構造と機能を解明し医薬品の合理的設計・開発に応用する。 1
    高分解能結晶解析に基づく未来志向型酵素の開発 鈴木榮一郎 味の素(株) 近未来の食糧、生活必需品、医薬、環境等のニーズに則し、宇宙実験で得られた高品質結晶の構造データと、地上実験や計算科学情報とを組合せて、高機能な酵素を設計・開発する。 2
    高機能医薬品の開発をめざしたサイトカイン受容体複合体の構造決定 黒木 良太 キリンビール(株) 微小重力環境における結晶成長のメリットを生かし、糖タンパク質の良質な結晶取得法を開発し、得られた立体構造情報を創薬に活用する。 1

●新たな利用機関の参加

  • 農業生物資源研究所
  • 蛋白質構造解析コンソーシアムに参加する企業3社
    【蛋白質構造解析コンソーシアム参加企業】
    エーザイ、 大塚製薬、 キッセイ薬品工業、 協和発酵工業、 三共、 塩野義製薬、 大正製薬、 大鵬薬品工業、 武田薬品工業、 田辺製薬、 第一製薬、 大日本製薬、 中外製薬、 日本新薬、 日本たばこ産業、 帝人、 万有製薬、 藤沢薬品工業、 三菱ウェルファーマ、 明治製菓、 持田製薬、 山之内製薬 (五十音順) (以上、日本製薬工業協会加盟22社)

●米国実験棟内の恒温槽の利用(NASAより無償借用)

    米国実験棟の恒温槽(CGBA)

    CGBA=Commercial Generic Bioprocessing Apparatus
    (製造元:米国コロラド州BioServe Space Technorologies.)

    ■ 装置の概要:
    内部容量: 約14.5x28.7x32.3cm
    温度制御範囲:16℃〜37℃(GCFの温度は20℃で管理)
    温度制御方法:自動運転(地上よりコマンド制御)

    CGBA概観

    上部ロッカーを開けた状態。ロッカー内部にGCFが3つ設置される。(写真は別サンプルが収納されている)


●搭載予定タンパク質数

    利用機関搭載タンパク質数
    理化学研究所
      横浜研究所ゲノム科学総合研究センター
      播磨研究所ハイスループットファクトリー
      播磨研究所ストラクチュローム研究グループ
    34種類
      13種類
      11種類
      10種類
    農業生物資源研究所 4種類
    蛋白質構造解析コンソーシアム(3社) 4種類
    先導的応用化研究 10種類
    NASDA (リファレンス用標準タンパク質(各GCFに搭載)) 1種類
    合計 53種類  順不同



<参考1>第1回宇宙実験における解析結果速報

  • NASDAタンパク質(α-アミラーゼ)

    宇宙及び地上で得られた結晶を用い、放射光施設において回折データの取得を完了した。宇宙で得られた結晶において、地上で生成した同一のタンパク質結晶と比べ、分子が均一に配列した良質な単結晶が生成されたことを確認した。最大分解能はこれまで行われた宇宙実験によって得られた結晶の中でも最も高品質なものに匹敵する。現在、構造解析を実施中であるが、これまでより詳細な解析結果が得られることが期待される。解析によって得られる構造データは、例えば、新薬の創製等に利用することが可能となる。

  • 利用機関のタンパク質

    結晶のサイズ、分解能※4、モザイク性※5において、改善された結晶があった。
    現在、SPring-8等により回折データの取得及び構造解析を継続中である。

※4 分解能;結晶中のタンパク質分子の配列の均一性を示す代表的な指標の一つ。分解能が高いとタンパク質分子がより均一に配列しているといえる。
※5 モザイク性;結晶は分子の配向性の高い領域がいくつか集まってできている。それぞれの領域の方向性のずれを示す指標をモザイク性という。モザイク性が高いとずれが大きく、品質が低い結晶といえる。

<参考2> プロジェクトの特徴と概要

■プロジェクトの特徴

  • ロシアとの商業利用契約とESAとの技術協力
  • 継続的、安定的な宇宙実験機会の確保
  • ポストゲノム時代への対応

■プロジェクトの概要

  • 実験実施場所: 国際宇宙ステーション ロシアサービスモジュール等
  • 打上げロケット: プログレス補給船
  • 回収宇宙船: ソユーズ宇宙船
  • 実験実施回数: 2003年2月以降3年間、年2回(計6回)を予定
  • 実験実施期間: 2〜4ヶ月
  • 実験装置: グラナダ結晶生成装置(GCF: Granada Crystallization Facility) 4回目(2004年)以降は、NASDA結晶生成装置の利用を想定

  • <参考3>タンパク質結晶を用いた構造・機能解析と宇宙の関わり

    <参考4> 実施体制及び国内利用機関との利用の枠組み

    ●実施体制




    ●国内利用機関との利用の枠組み