宇宙開発事業団
本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
※1:GCF(Granada Crystallization Facility、タンパク質結晶生成装置)
※2:GCB(Granada Crystallization Box、タンパク質の結晶生成用のセル)
※3:CGBA(Commercial Generic Bioprocessing Apparatus)
●高品質タンパク質結晶生成技術の確立のため、第1回宇宙実験で発生した不具合を改良して実施)
●STS-107ミッションで成果を喪失したテーマのうち、先導的応用化研究テーマの再実施
テーマ名 | 代表研究者 | 所属機関 | テーマ概要 | 搭載タンパク質数(種類) | |
---|---|---|---|---|---|
睡眠物質及びアレルギー物質合成酵素の結晶成長実験と医薬品への応用 | 裏出 良博 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 | 睡眠物質及びアレルギー物質合成酵素の結晶化を目的とした宇宙実験を行い、居眠り防止薬や抗アレルギー薬等の開発に繋げる。 | 2 | STS-107で成果を喪失したタンパク質 |
新規抗寄生虫薬の結晶解析に基づく分子設計 | 北 潔 | 東京大学 | 宇宙実験で得られたタンパク質の立体構造解析の結果により、新規の抗寄生虫薬の開発に繋げる。 | 3 | |
加齢性疾患の病因蛋白質に対する特異的阻害剤の創薬支援研究 | 杉尾 成俊 | 三菱化学(株) | 加齢性疾患等の病因タンパク質の結晶化を目的とした宇宙実験を行い、タンパク質の立体構造解析の結果から医薬品の開発に繋げる。 | 1 | |
光受容膜蛋白質の結晶化研究 | 石黒 正路 | (財)サントリー生物有機科学研究所 | 宇宙環境を利用して光受容膜タンパク質の結晶化を行い、立体構造の解析結果から、受容体の立体構造と機能を解明し医薬品の合理的設計・開発に応用する。 | 1 | |
高分解能結晶解析に基づく未来志向型酵素の開発 | 鈴木榮一郎 | 味の素(株) | 近未来の食糧、生活必需品、医薬、環境等のニーズに則し、宇宙実験で得られた高品質結晶の構造データと、地上実験や計算科学情報とを組合せて、高機能な酵素を設計・開発する。 | 2 | |
高機能医薬品の開発をめざしたサイトカイン受容体複合体の構造決定 | 黒木 良太 | キリンビール(株) | 微小重力環境における結晶成長のメリットを生かし、糖タンパク質の良質な結晶取得法を開発し、得られた立体構造情報を創薬に活用する。 | 1 |
●新たな利用機関の参加
●米国実験棟内の恒温槽の利用(NASAより無償借用)
CGBA=Commercial Generic Bioprocessing Apparatus
(製造元:米国コロラド州BioServe Space Technorologies.)
●搭載予定タンパク質数
利用機関 | 搭載タンパク質数 |
---|---|
理化学研究所 横浜研究所ゲノム科学総合研究センター 播磨研究所ハイスループットファクトリー 播磨研究所ストラクチュローム研究グループ |
34種類 13種類 11種類 10種類 |
農業生物資源研究所 | 4種類 |
蛋白質構造解析コンソーシアム(3社) | 4種類 |
先導的応用化研究 | 10種類 |
NASDA (リファレンス用標準タンパク質(各GCFに搭載)) | 1種類 |
合計 | 53種類 順不同 |
宇宙及び地上で得られた結晶を用い、放射光施設において回折データの取得を完了した。宇宙で得られた結晶において、地上で生成した同一のタンパク質結晶と比べ、分子が均一に配列した良質な単結晶が生成されたことを確認した。最大分解能はこれまで行われた宇宙実験によって得られた結晶の中でも最も高品質なものに匹敵する。現在、構造解析を実施中であるが、これまでより詳細な解析結果が得られることが期待される。解析によって得られる構造データは、例えば、新薬の創製等に利用することが可能となる。
結晶のサイズ、分解能※4、モザイク性※5において、改善された結晶があった。
現在、SPring-8等により回折データの取得及び構造解析を継続中である。
※4 分解能;結晶中のタンパク質分子の配列の均一性を示す代表的な指標の一つ。分解能が高いとタンパク質分子がより均一に配列しているといえる。
※5 モザイク性;結晶は分子の配向性の高い領域がいくつか集まってできている。それぞれの領域の方向性のずれを示す指標をモザイク性という。モザイク性が高いとずれが大きく、品質が低い結晶といえる。