プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

STS-107教育プログラム(タンパク質結晶実験)の審査結果について

平成15年5月14日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

目的

 宇宙開発事業団は、スペースシャトル実験ミッションSTS-107において、各種のタンパク質結晶成長実験が行われることに関連して、高校生を対象とした国内初の宇宙実験教育プログラムを実施する。
 本教育プログラムでは、高校生にタンパク質結晶成長実験を行ってもらうことを通して、宇宙環境利用への興味と関心を喚起すると共に、同時に、タンパク質の構造、機能、結晶成長、立体構造解析、医薬品開発への応用などについて学んでもらうことを目的とする。

研究テーマ

 蒸気拡散法により、タンパク質(卵白由来リゾチーム)の良好な(大きくて傷の少ない)結晶化条件を探る。

応募状況

  • 募集期間:平成14年2月20日〜3月22日
  • 全国から 149チーム(89校)が参加。 (なお、高校は全国に約5800校あるので、その1.5%)
  • 応募時の高校生参加人数は、約700人。指導教員は約100人
    内訳は男子生徒約400人、女子生徒約300人。 学年比(主体は2・3年生)は、ほぼ同数。
  • 89校の中 女子高は 7校。
    1校から 複数チーム を出している学校は 27校。
    中には 11チーム を出している学校もあり。
地域参加数県 別 構 成
北海道 23  
東北 6 岩手1、宮城2、山形2、福島1
関東 73 茨城14、栃木1、群馬12、埼玉9、千葉6、東京24、神奈川7
中部 10 長野1、石川3、福井2、愛知4
近畿 9 京都2、大阪6、兵庫1
中国 17 鳥取3、岡山3、広島10、山口1
四国 3 徳島3
九州 7 長崎1、熊本3、宮崎3
沖縄 1  
総計 149  


STS-107宇宙実験教育プログラムの流れ  (当初の打上げ予定日は平成14年7月)




平成15年2月1日に発生したスペースシャトル・コロンビア号の事故により宇宙で生成したタンパク質結晶は得られなかった。
しかし、宇宙実験チームは、宇宙実験条件を検討した成果をまとめて、最終レポートを完成させた。
自由研究を行った地上実験チームと合わせて、最終レポートは、計40レポート提出された
これは当初の応募チームの約30%にあたる。

最終審査結果

最優秀賞

埼玉県立浦和第一女子高等学校

エタノール添加による結晶化を追及し、シャトル飛行時間に合わせた地上実験を行うなど、定量的な検討・考察、独創性、探究心等の点で極めて優れている。

優秀賞

山口県立厚狭高等学校

実験条件を根本から検討しつつ、最適な結晶化条件を緻密に広範囲に探索し、論理的考察と構成で実験レポートを良くまとめた点が高く評価できる。

準優秀賞

土浦日本大学高等学校(茨城県)

結晶化条件の探索を精力的に行い、理論的考察と着眼点の良い研究を行った。

茗渓学園高等学校(茨城県)

予備調査を十分に行い、丹念に結晶化実験を実施して、定量的データ解析を行った。

努 力 賞

北海道立札幌啓成高等学校(北海道)
北海道立札幌南高等学校(北海道)
旭川工業高等専門学校(北海道)
江戸川学園取手中・高等学校(茨城県)
桐朋女子高等学校(東京都)
慶應義塾湘南藤沢高等部(神奈川県)
日本女子大学附属高等学校(神奈川県)
宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(宮崎県)

最終審査総評

全国から期待以上の数の高校生が参加して、真剣にタンパク質結晶実験を行い、打ち上げ延期とシャトル事故を乗り越えて最後まで頑張ってくれたことに感謝感激している。高校生の熱気が周囲の人達の宇宙への関心を高めることにもつながった。定量的考察とレポート作成能力の向上は今後の課題。今後とも魅力的な教育実験の機会が提供されることを望む。

本教育プログラムの今後

●表 彰 式:6月15日(日)
●成果報告会:8月上旬(予定)

参 考 資 料

一次審査会の開催

・応募した149チームのうち121チーム(81%)が1次レポートを提出。
・日時:平成14年5月16日午後
・目的:宇宙実験を実施する上位6チームを選抜
・審査委員:
細矢 治夫 <委員長>
  (お茶の水女子大学 名誉教授)
八木 達彦
  (静岡大学 名誉教授)
安岡 則武
  (姫路工業大学 名誉教授)
岩崎 不二子
  (電気通信大学 名誉教授)
平山 大
  (東京都立忠生高等学校 教諭)

一次審査会の結果

・実験結果と実験過程が優秀と認められた6チームが宇宙実験チームとして選抜。

・審査総評(抜粋)
 非常に多数の応募があり驚いている。各チームともレベルが高く、評価について、紙一重の違いしかないものが多かった。その中でも宇宙実験チームとして選ばれたチームは与えられた条件以外に様々な考察を加えるなど、 工夫が見られた。今回の実験は、生物・物理・化学・数学など様々な要素を含むものである。これを機に理科離れのムードを変えるきっかけとなってほしい。


選抜された宇宙実験チーム
 (1)北海道札幌啓成高等学校
 (2)茨城県・土浦日本大学高等学校
 (3)茨城県・茗溪学園高等学校
 (4)埼玉県立浦和第一女子高等学校
 (5)山口県立厚狭高等学校
 (6)宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校

自由研究と最終レポート作成

  • 一次審査で選ばれなかった地上実験チームは、NASDAが作成・配布した「自由研究の手引き」を参考にして、自由研究を進めた。
     (手引きには、実験例も掲載し、解説文の加わった「教員用 自由研究の手引き」も作成した。
  • 自由研究のテーマは、『タンパク質または結晶に関すること』。
  • 最終的に、地上実験チームからは、34件の最終レポート(自由研究レポート)が提出された。

STS-107実験前会議(向井宇宙飛行士とのテレビ会議)

●目的:
シャトル打ち上げ前に、実験実施手順と状況を確認し、STS-107副ミッションサイエンティストである向井宇宙飛行士と意見交換を行う。
●日時:
平成14年12月16日夕方

●内容:
6つの高校、向井飛行士(米国)、NASDAを、多地点のテレビ会議システムで接続。
(1)学校紹介および研究内容・テーマの発表(宇宙実験チーム)
(2)STS-107ミッション概要と、実験実施手順と状況の説明(NASDA)
(3)質問コーナー(全員)
●成果:
(1)宇宙実験実施への期待感の高揚。
(2)他チームとの初めての会話による競争心の再燃。
(3)科学的な深い質問と、事前に準備された明確な回答。
(4)記念すべき向井宇宙飛行士との会話。
(5)マスコミを通しての広報効果。

宇宙実験の実施

  • 実験溶液は宇宙実験チームが作成し、NASDAがそれを輸送して、シャトル射場での準備を代行。
  • 日本及び米国での実験進捗状況は、ホームページとメールサービスにて、タイムリーに報告
  • 打ち上げ:平成15年1月17日00:39(日本)
     宇宙実験は、計画通り順調に進行したが、スペースシャトル・コロンビア号は地球への帰還途中、空中分解し、実験試料を全て失った。