プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

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輸送系の将来展望にかかる基本的な考え方について

平成15年4月16日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

はじめに

  • 将来の輸送系に関する研究開発は、新機関における.中核的な業務であると認識。
  • 統合を前に、将来の輸送系に関する展望と研究開発の方向性について三機関が合同で検討した結果を報告。

宇宙輸送系の取り組みの基本的考え方

  1. 日本のロケット技術は、H-IIAロケット標準型により、世界最高水準に近づき、キャッチアップの時代から新たな段階に入りつつある。
    一方、ロケット技術は日進月歩であり、我が国の自律性と競争力を維持し続けるためには、不断の技術向上努力が不可欠。
  2. 我が国の基幹ロケットであるH-IIAロケット標準型は、平成17年度打上げから民間移管され、民間の経営手法によるコスト低減、品質向上等による国際競争力の確保を図る。新機関は、民間移管後も信頼性向上を含む基盤技術の維持・改善に取り組む。
  3. 民間移管後の標準型の能力向上については、民間の競争力強化及び国際宇宙ステーションへの補給手段の確保を目的として、民間と共同で取り組む。
  4. 新たな段階に入ったことを踏まえ、輸送系基幹技術については、長期的戦略の下で日本独自の技術を高め、将来においてもフロントランナーとして、世界最高水準の技術を保有すべく、より高度な技術に挑戦する。

独自技術の研究開発の方向

  • 使い切りの基幹ロケットは、長期にわたり運用が期待されるところであり、それを支える基幹技術を高めてゆき、次期基幹ロケットの開発に備える。
    − ユーザへの対応能力(ユーザフレンドリ性)の向上
    − 信頼性、経済性、迅速性の追求
  • 再使用型輸送系については、軌道からの回収、抜本的な輸送コストの低減等の面から期待されており、着実に技術の発展を図る。
  • 高性能・高信頼性・低コストの推進系は、将来にわたり輸送系技術の主軸であり、重点を置いた研究開発を推進する。
  • 各時代の運用機は、推進系技術の完成度とその時代の要求に応じて実現することとなるが、その際、以下の課題についても検討する。
    − 輸送能力の限度(例:超大型輸送能力は狙わず、我が国の需要との整合性を重視)
    − 再使用技術の完成度と適用範囲(例:軌道からの回収、部分再使用、完全再使用等)
    − 小型ロケット
    − その他(軌道間輸送、有人輸送等)等

輸送系基幹技術発展の概念

将来の宇宙輸送系技術に関する認識

使い切りロケット(ELV)
  • 長期にわたり、高軌道への輸送や大型のペイロード輸送をはじめ、様々なミッションでの運用に対応
  • エンジンの高性能化・高信頼化、高度な誘導制御技術等の基幹技術をさらに高度化し、世界のトップを走れる技術力を保持、発展
  • 時代に応じた需要に適した打上げ能力を有する基幹ロケットの運用を継続

再使用型輸送系(RLV)
  • 軌道からの回収、低軌道への高頻度・低コストな往復宇宙輸送、再使用による環境への配慮及び有人輸送に対応
  • これまで軌道再突入実験( 1994年)から高速飛行実証( 2002年)などを通じて着実に基礎的な技術を蓄積。
  • 完全再使用型システムに向かって、長期にわたる段階的な実証や部分的実用化により、技術を蓄積してゆくことが肝要。
  • ELVとRLVの技術分野の多く(高性能・高信頼性ロケット推進系など)は共通的であり、ELVの技術開発成果を基幹輸送系へ早期に反映するとともに、RLVとの共通的研究開発にも資することが効果的。
  • また、長期にわたりELVとRLVはそれぞれの特徴に応じて使い分けて運用
20〜30年程度において「宇宙利用の一般化」を目指し、次の可能性を追求
 − 輸送コストを1/10〜100とした完全再使用型輸送系による頻繁な輸送
 − 再使用型軌道間輸送機の運用
 − 軌道上大型拠点の運用
 − 有人宇宙飛行