プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

平成15年度 宇宙開発ベンチャー制度 
研究テーマ選定結果について

平成15年7月2日

宇宙開発事業団
航空宇宙技術研究所

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

研究テーマ選定の経緯及び結果

  • 平成15年4月から同年5月末まで、ホームページ掲載や地方自治体、大学、産業界等の関係方面への周知を行うとともに、昨年度末より全国各地で技術交流会を開催するなど、当該制度の研究テーマ公募を行った。
  • 今年度より、より利用しやすい制度運営を目指し、利用技術なども募集分野に加え、大企業社内ベンチャー・技術移転機構(TLO)などへも応募対象を広げた。また、技術コーディネーターによる事前相談を積極的に実施した。
  • その結果、小型軽量化技術や廉価・短期間製造プロセスなど中小・ベンチャー企業 が保有する斬新なアイディアやユニークな技術を活かしたテーマ46件(戦略21件/芽だし25件)の応募があった。
  • このたび、宇宙応用化の可能性、独創性・新規性の高さ、民生分野への技術的波及.効果などを勘案し、航空宇宙技術研究所及び宇宙開発事業団と共同研究すること が適当なテーマ17件を選定した。(次頁参照)

宇宙開発ベンチャー制度の採択テーマ(平成15年度)

戦略研究テーマ<3件>

No企業名採択テーマ名都道府県名
1 (株)エックスレイプレシジョン 惑星・恒星の結晶性化合物非破壊分析システムの要素技術開発

京都府

2 シーエムシー技術開発(株) カーボンマイクロコイル(CMC)を活用した衛星通信用高性能マイクロアンテナの実用化研究 岐阜県
3 (株)アクロス 3次元繊維配向を持つ超高性能カーボン・金属複合新素材の研究開発 埼玉県

芽出し研究テーマ<14件>

No企業名採択テーマ名都道府県名
1 (株)ユー・コーポレーション  将来宇宙機搭載用高熱伝導自励振動型ヒートパイプの開発

群馬県

2 (有)井藤電機鉄工所 3次元音場再生可能な頭外定位ヘッドホンシステムの開発
三重県
3 アドバンストスペーステクノロジー(株) 特殊電鋳コーティングを施した炭素基複合材を用いた燃料タンク及び配管の軽量化対策
福岡県
4 太盛工業(株) ミクロン級ポーラス材料の開発
大阪府
5 高松帝酸(株) 高分子材の耐宇宙環境性向上を目指した直接フッ化表面改質技術の開発
香川県
6 (株)化研 フラーレンファイバーナノ配線材料の開発
茨城県
7 (株)アストロリサーチ 超小型リアクションホイールのトルク測定器開発
神奈川県
8 (株)インパルス物理研究所 静電気放電による電磁妨害作用解析の為の基礎技術の開発
神奈川県
9 (株)フジキン MR(Magneto-Rheological)流体を利用したシールの実用化
大阪府
10 (株)エーシーティー・エルエスアイ 高機能、低消費電力 DCブラシレスモータードライバICの開発
神奈川県
11 (株)サーマルプリンタ研究所 距離センサー及び視覚センサー用自動焦点調節装置
福井県
12 三立工業(株) スペース・マイクロ・昆虫(SMI)の研究
東京都
13 (株)レーザック 極低温・超高温耐用光ファイバーセンサシステムの開発
東京都
14 (株)エムアイエムエンジニアリング ガイアドライブを利用した展開構造物 神奈川県

採択された戦略研究テーマ(平成15年度)

■惑星・恒星の結晶性化合物非破壊分析システムの要素技術開発
((株)エックスレイプレシジョン/京都府)

小型X線管(上)電源一体型小型X線源図(下)
  • 昨年度の芽出し研究で得た成果をもとに、トリウムタングステン陰極材料を使った電源一体型の小型X線源の開発を行う。
  • 国際宇宙ステーション内など軌道上でのその場分析のほか、惑星探査機への搭載し、鉱物資源等の結晶性化合物非破壊分析にも応用可能。
  • 血管に挿入しての人体内部からの放射線治療、航空機・原子力発電設備の溶接箇所などの微小内部欠陥X線検査の小型化などの民生分野においても貢献できる技術。


■カーボンマイクロコイル(CMC)を活用した衛星通信用高性能マイクロアンテナの実用化研究
(シーエムシー技術開発(株)/岐阜県)

カーボンマイクロコイル(CMC)を活用した衛星通信用高性能マイクロアンテナ
  • 昨年度の芽出し研究で得た成果をもとに、CMC電波吸収特性を活用したアンテナ素子基本特性についての調査研究、評価解析などを行う。
  • 小型軽量、高利得、高指向性の衛星通信用平面アンテナへの応用も期待。併せて、GHz帯域の電波を活用する地球観測用の超小型・高性能アンテナ、放射計の小型化も可能。
  • 携帯電話をはじめとする移動体端末、CS/BS受信機など民生用通信設備機器の超小型アンテナへの応用も期待できる。


■3次元繊維配向を持つ超高性能カーボン金属複合新素材
(C/CMC:Carbon . Carbon Metal Composite)の研究開発
((株)アクロス/埼玉県)

3次元繊維配向を持つ超高性能カーボン・金属複合新素材
  • 優れた特性を有するC/CMCの繊維配向を3次元にて制御、改良した画期的新素材の開発を行う。
  • 高強度・導電性・耐摩耗性・潤滑性のほか低コストで迅速な製造技術を活かし、マニ ピュレーター等将来系宇宙機の摺動部などの高機能構造材として期待。
  • 耐摩耗摺動・軽量高強度・耐熱耐蝕材料として、自動車のクラッチ・ブレーキ部品、電車のパンタグラフ材、産業用ロボットアームのアーム材など民生分野での応用も可能。
ロボットによる軌道上組立・保守

今後の進め方

  • 今後、選定された各研究テーマについて、航空宇宙技術研究所及び宇宙開発事業団より共同研究者を設定し、平成16年3月末まで中小・ベンチャー企業等と共同研究を実施する。
  • 宇宙航空研究開発機構(JAXA)における重点化項目である宇宙への参加を容易にする仕組み「オープンラボ」の一環として、引き続き、更なる本制度の充実、改革を図り、積極的に運営していきたい。

参考:宇宙開発ベンチャー制度の概要

■概要・目的:

中小・ベンチャー企業との共同研究を通じて、民生分野の優れた技術や独創的なアイディアを宇宙分野に応用化するプログラム。
本プログラムを通じて、宇宙への「しきい」を下げ、宇宙開発利用への参加者を増や.し裾野を広げるとともに、民生技術の宇宙分野への展開により、新産業・雇用創出を促し、地域経済・企業の活性化への貢献も目指す。(平成12年度から実施)

■研究形態: 宇宙開発事業団と航空宇宙技術研究所の両機関と中小・ベンチャー企業との共同研究
■募集分野: 主として、4分野(マイクロ化・材料/部品・誘導制御・熱技術)
■応募対象: 主として、中小・ベンチャー企業(大企業社内ベンチャー、TLO等も含む)
■研究区分: 提案内容の段階に応じて戦略研究(研究費数千万円程度)と芽出し調査研究(研究費.100万円程度)の2種類。
■成果の取り扱い: 宇宙機関及び中小ベンチャー企業の共有とし、貢献度に応じて持ち分を決定。
■その他: 技術コーディネーターによる事前相談及びニーズとシーズのマッチング活動、コンサルティング活動を、随時、実施している。

これまで、中小企業等に宇宙開発への門戸を開いた学官連携の先駆的取り組みである本制度を通じて、民生/宇宙の両分野での目標をもった“Dual Goal"の研究開発を進め、MEMSジャイロ/加速度計、超耐熱セラミックス、超小型ポンプなど世界最先端を含む技術を獲得した。