宇宙はたいへんおもしろいところです。宇宙環境は、生命体に大変影響を与えます。何の準備もなく火星まで出て行くと、そのうち火星人のようになってしまうかもしれません。なぜならば、火星に行くにはかなりの時間がかかるからです。計算によると、2014年1月に地球から火星に出発して、火星に到達するまで161日あまり。そして、地球に帰還するために都合がいい位置関係になる2016年1月までの573日間を火星で過ごし、その後154日間かけて地球に戻らなくてはならない。およそトータル2年半という非常に長いものになるのです。
半年くらい宇宙飛行をすると、元気な男性で6〜7%の骨密度が減ってしまいます。それが直線的に加速されるとすると、30カ月でおよそ20〜25%の骨密度を失ってしまうので、火星人のような、軟体生物みたいなものになってしまう可能性も出てきます。骨ひとつ取ってみても、長期にわたって宇宙を飛ぶということは、非常に難しいことなのです。
月を有人火星探査のためのテストの場として、いろんなことをやっていくとしても、国際宇宙ステーションで、ライフサイエンス、医学、生命体を地球から外に送るための検証、起こってくるメカニズムなどをさらに解明しなければなりません。
国際宇宙ステーションは、高度約400kmの地球周回軌道に入っています。つまり、ここでは無重力――重力のない、物の落ちない世界が作り出されているのです。この状態は、周回軌道か、天体の重力が釣り合っているラグランジュポイントでないと作ることはできません。ですから、国際宇宙ステーションは、周回軌道にある実験室として大きな意味があるのです。
既存の重力レベルがほぼゼロ、つまりマイクログラビティという国際宇宙ステーションの環境を利用してさまざまな実験が行われています。ここでは、遠心力とうまく組み合わせて、どんな重力でも作ることができるので、地球では恒常的に作り出すことができない微小重力の環境で何が起こっているかを調べるのに最適な施設なのです。
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