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高橋 栄一 写真 人間の住む惑星のできるまで
			東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻教授
			高橋栄一
高橋 栄一 写真 文部科学省が進める「21世紀COEプログラム」の拠点でもある高橋教授らのグループは、「大型の酸素呼吸をする生命が地球上に誕生したのには、どのような必然性があるのか?」「その過程は?」「生命誕生が期待できる惑星は他にもあるのか?」という謎を、地球惑星科学を中心に、環境科学や生命科学の研究者と協力しながら実証的に解明することを目指しています。
生まれたばかりの地球の姿を探る
地球が人の住むことができる惑星になった原因を問う場合には、地球と、金星や火星などの地球型惑星の差がなぜ生まれたかということを理解しなければなりません。
私たちは、地球の初期条件を求めるために、実験によって高圧の限界に挑み、地球の表面から深さ千数百キロ、あるいは核マントル境界からさらに地球の中心部にいたる領域を研究していこうとしています。それでわかることは「マグマオーシャンができた直後に、地球はいったいどう分化したのか」「中にどのような成層構造ができたのか」「地球の核となったのはどんな元素なのか」ということです。これらがわかると、最初に地球の表面にできたであろうマグマオーシャンと、そこから分かれてできた大気と海洋の、組成や量がわかるのです。

地球の初期条件、そして最初の数億年間を理解するためには、実験や惑星の理論的なシミュレーションでしか研究できませんが、その後、生命がどの段階で発達して、どのように進化を遂げたかということは、岩石によって知ることができます。化石を得ることができる39億年間の地球の歴史について、化石を徹底的に解読し、地球環境を解析するという方法を使って、地球を取り巻いた大気と海水の状態を明らかにしようと考えています。

また、生命の進化を考える上で、磁場は重要な要素です。太陽風と地球の磁場の相互作用によってできるバンアレン帯は、地球に入ってくる有害な太陽風をカットしていますが、バンアレン帯ができる以前の地球は宇宙と同じような環境で、生命にとって非常に過酷だったはずです。
そしてオゾンの存在。オゾンは、酸素濃度の上昇にともなってでき始めます。地球の歴史の中でいつオゾンできたかということは、生命の陸上への進出に深くかかわっていたと考えられています。

人の住みうる惑星を見つける
最近、天体観測によって、遠くの恒星に属する惑星が観測されるようになってきました。現在は百数十個見つかっており、望遠観測の精度の向上によって、生命が存在しうる環境にある惑星を観測できるようになろうとしています。
また、次世代の宇宙干渉望遠鏡が打ち上がれば、2020年くらいに外の恒星に属す惑星の大気のスペクトルを直接観測することが可能になると予想されています。これを利用すれば、地球の生命と環境の歴史を、大気中の酸素濃度と大気の組成構造から明らかにできると考えています。
そうすれば将来、地球以外の惑星における生命の発展段階も理解することができるようになるのではないかと思っています。
人間を含む酸素呼吸をする大型の生命を生み出した環境とはどんなものだったかを、大気酸素の濃度を軸に解明し、地球史年表を作る。そうすれば、太陽系外の惑星の観測によって、生命の進化段階を予測することができるかもしれない
 
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