宇宙航空研究開発機構
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成22年5月21日(日本標準時、以下同様)に種子島宇宙センターから打ち上げられたIKAROSに、航行とは別の理学ミッションの一部として搭載されていたガンマ線バースト観測装置(※1)により、7月7日のガンマ線バースト(※2)を観測していたことが、詳細な解析によりわかりましたのでお知らせいたします。今後は、世界で初めてとなるガンマ線の偏光観測(※3)を目指します。
ガンマ線の偏光観測は、ガンマ線バーストの磁場構造、放射機構の解明につながり、ひいては星の死とブラックホールの誕生の謎に迫ることが期待されます。
(※1)IKAROSは、金沢大学と山形大学と理化学研究所の共同研究としてで作られたガンマ線バーストを観測する装置(GAP)を、ソーラー電力セイルミッションとは別に、実証機本体に搭載しております。GAPは6月末から機能確認を開始し、初期設定を終えた直後にガンマ線バーストを観測しました。
(※2)非常に重い星の寿命の最後に、ガンマ線を放出しブラックホールを作りながら大爆発することをガンマ線バーストと言います。宇宙で一番規模が大きな爆発と知られ、遠い宇宙の果てで発生しても明るく観測されるため、今までに知られている最遠の天体はガンマ線バースト時のものです。
(※3)光は電磁波なので進行方向に垂直に電場ベクトルと磁場ベクトルを持っています。このベクトルが一定の方向に偏った光を偏光といいます。ガンマ線バーストは非常に激しく、ほとんど光速で両側に飛び出すジェットのようになると考えられ、ガンマ線の出る向きや電場ベクトル・磁場ベクトルが偏ると考えられています。それを観測することを、ガンマ線の偏光観測と言います。ガンマ線の偏光は未だ観測されておらず、GAPは世界初に挑戦しています。
GAPは、実証機裏面(太陽電池面の反対側)方向から入射するガンマ線の観測が可能ですが、偏光観測を行うためにはより正面からの入射が必要となります。今回のガンマ線バーストはGAP正面からの入射ではなかったため、偏光観測には至りませんでした。仮に全方向から等確率でガンマ線が入射すると仮定した場合、GAPで観測したガンマ線バーストの約2割が偏光観測可能な方向から入射することとなります。