宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)

チームリーダが語る私たちのミッション

宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)、愛称「こうのとり」は、国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)に補給物資を運ぶために、日本が開発した有人対応型の無人大型宇宙船です。こうのとりは、日本で最も強力なH-IIBロケットで種子島宇宙センターから打ち上げられ、ISS搭乗員(宇宙飛行士)の食糧、衣料や実験機器、ISSを維持するために必要な機器など最大6トンの物資をISSに輸送します。その後、ISSで使用済みの実験機器や衣類などの不要品を積み込み、大気圏へ再突入し燃え尽きます。こうのとりがISSにドッキングしている間に、搭乗員がこうのとりの与圧部に入って荷物の出し入れなどの作業をします。船外物資はロボットアームを使って搬送されます。
2009年の1号機(技術実証機)に続き2011年の2号機の連続した成功により、宇宙開発における先進国としての地位や、科学技術創造立国としての日本の評価を高めました。
目標点に正確にランデブ(接近)して微動だにせず停止させる高度な技術は、今後の低軌道や、月探査、火星などの惑星探査活動に必要です。また、開発や運用で獲得した有人安全要求に適合したランデブ技術は、将来の有人施設開発に必須なものです。更に、待ったなしの実時間管制技術は、有人/無人を問わず、今後の宇宙船の運用に応用できます。宇宙先進国である米国の企業が、こうのとりの通信機器を日本から購入している例が、その技術と信頼性の高さを如実に示しています。
今後、7号機までの打ち上げが計画されています。本年にスペースシャトルが退役した後は、こうのとりのみが、ISSの運用に不可欠な大型保全機器の輸送を一手に担います。また、こうのとりは、荷物と一緒に大きな大きな夢も運んで行きます。いくら積んでも重さがありません。
完璧なミッション成功により、物資を回収する回収型HTV(HTV−R)の研究も始まり、その先にある日本独自の有人宇宙船開発の機運も高まって来ています。国民の皆さんの強力なバックアップのもと、衛星、ロケット及び有人技術の粋を結集して開発したこうのとりの成果を持って、新たな有人宇宙活動に乗り出そうではありませんか。

(2011年7月 更新)

プロジェクトマネージャ 小鑓 幸雄