ハンググライダーを楽しむ白石さん
私の場合、宇宙好きというわけではなく、興味を持っていたのは「空」でした。小さい頃から空を見上げて自由に飛べたらいいなって思っていましたね。それで飛行機を作りたいと思うようになって、どうやったら飛行機が作れるようになるかを考え、中学生の頃に飛行機のことを学べる大学に行こうって決めたんです。でも、特に自分が将来どんな仕事に就くという確固たる目標はなくて、ただ空を飛びたいという自分の欲求に任せて素直に進んできたという感じです。今でも空への憧れがあって、時々、ハンググライダーで空を飛んでいます。 Q. ロケットのどういうところが好きですか? バリバリと音をたてながら打ち上がっていく姿が好きです。ロケットを現場で見るととても大きく、いろいろな所にいろいろな技術が詰まっていています。そんな技術の結晶が、宇宙に向かって飛んでいく姿は、多くの人に感動を与えると思うし、たまらなく好きです。 Q. どのようなきっかけでロケットに興味を持ったのですか? ロケットに興味を持ったのは大学に入ってからです。大学で航空宇宙工学科に入ったので、飛行機と一緒にロケットのことを学んでいました。当時は、H-IIロケットの打ち上げ失敗を乗り越え、H-IIAロケットの開発が始まって試験機打ち上げが成功した頃で、日本のロケットの歴史の中でも、一つの大きな挑戦の時期でした。開発者たちの話を直接聞く機会もあり、ロケットはまだ確立されていない技術で、今も日々、開発者たちが新しい技術に挑戦しているということに興味を持つようになりました。
もともと飛行機が作りたくて大学に入ったものの、1903年のライト兄弟による初飛行以来、その世界は大きく飛躍して、今では誰もが飛行機に乗れる時代になりました。でも、ロケットはまだまだ発展途上の乗り物です。技術は創造と挑戦でどんどん飛躍していくと思っているので、ロケットの世界も、飛行機と同じように一般の人を乗せて自由に飛ぶ時代がきっと来るでしょう。将来は宇宙旅行に行ける時代になるのだと思います。そんな風に時代が変わっていく時に、私もその世界に入って、ロケットの技術を一緒に確立していきたい、次の未来につながるロケットの世界に、自分も貢献できたらいいなと思ったのが、ロケットの道に進みたいと思ったきっかけです。
ロケットに興味を持ったのが大学時代の後半でしたので、すぐに就職活動を始めなくてはという状況でした。そこで私がまず行ったのは、ロケットに関わる仕事のリサーチです。ロケットには非常にたくさんの技術が結集されていますので、部品を作っている会社もあれば、大手重工メーカーも関わっていますし、NASDA(現JAXA)もあれば、国にもロケットに関わる部門がありました。そういったロケットに携わる人達に直接話を伺いに行き、それぞれがどんな立場で関わっているのかを調べました。そして、自分はNASDAに行きたいと思ったんです。民間会社に行けば、設計や製造など自分の手でロケットを作れるという魅力はありますが、どんなロケットを何のために作るのかという日本の宇宙開発の方向付けをするNASDAのポジションに魅力を感じました。念願がかなって、第一志望のNASDAに採用されてロケットの近くで仕事をすることができ、とても幸せだと思っています。 Q. 今後の夢あるいは目標を教えていただけますか? 将来は人を載せられるロケットを作りたいです。そして、人も荷物ももっと簡単に宇宙に行けるようになって、地球上だけでなく、宇宙も自由に利用できる時代が来ればいいなと思います。でもそれを実現するためには、私がこれまで経験したLCDRや運用の仕事の知識だけでは足りないと思いますので、もっといろいろな経験を重ね、自分にできることを少しずつでも進めていきたいです。ロケットを使った新しい時代が来るまで全力で取り組みたいと思います。
白石紀子(しらいしのりこ)
JAXA 宇宙輸送ミッション本部 H-IIBプロジェクトチーム 開発員
2000年、東京都立科学技術大学航空宇宙システム工学科卒業。2002年、同大学力学システム工学専攻修士課程修了。同年、宇宙開発事業団(現JAXA)に入社し、宇宙輸送システム本部 種子島宇宙センター 発射管制課に所属。2006年、宇宙基幹システム本部H-IIAプロジェクトチーム。2007年、宇宙基幹システム本部 H-IIBプロジェクトチーム。2009年9月より、発射指揮者として3機のH-IIBロケット打ち上げに携わる。