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「星の王子さま」への旅 −小惑星が教えてくれること−
記念すべき50年目に小惑星に到達する「はやぶさ」

 現在、日本の小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星に向けて飛行中です。「はやぶさ」は、2003年5月9日に鹿児島県の内之浦町からM-Vロケットによって打ち上げられました。「はやぶさ」は、もともとMUSES-C(ミューゼス・シー)という名前で呼ばれていたもので、新しい宇宙工学の技術を実証することが目的の探査機です。同時に惑星科学においても最先端を目指しており、世界で初めて小惑星から表面物質を持ち帰ろうとしています。小惑星の起源や、さらには太陽系誕生の謎を探ることを目標としています。  「はやぶさ」が小惑星に到着するのは、2005年の夏の終りの予定です。3ヶ月間ほど小惑星の近くに滞在し、表面を観察したり物質を採取したりします(図3)。表面物質を採取する方法が、あたかも鳥のハヤブサが獲物を捕獲するのと似ているので、探査機が「はやぶさ」と名付けられました。2005年末には小惑星から出発し、地球に戻ってくるのが2007年6月の予定です(脚注3)。


 「はやぶさ」は、その4年余りにおよぶミッションの期間中、数多くの試練をくぐり抜けなければなりません。最初の試練は、新しく開発されたイオンエンジンです。イオンエンジンは順調に動作しており、目的地である小惑星にたどり着けるように加速を続けています。また2つ目の試練としては、地球スイングバイがありました。「はやぶさ」が打ち上げられてから約1年後の2004年5月19日に、「はやぶさ」は地球に戻ってきて、地球の重力を利用して小惑星に向かう軌道に乗ったのです。「はやぶさ」が地球スイングバイを行った様子が図4です。そして次の試練は、いよいよ小惑星到着です。


 「はやぶさ」の目的地の小惑星ですが、その名前は「イトカワ」です。これは、日本のロケットの生みの親である糸川英夫博士にちなんで名付けられたものです。糸川博士によって作られた日本最初のロケットであるペンシル・ロケットの発射試験が行われたのが1955年のことでした(脚注4)。それからちょうど50年後の2005年に、M-Vロケットによって打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星イトカワに到着するのです。ちょうど半世紀にわたる技術の進歩に、亡き糸川博士も感無量なのではないでしょうか。


 その小惑星イトカワですが、地上からの光学望遠鏡やレーダーによる観測では、差し渡し500m、幅が300m程度と推定されています。今までアメリカの探査機がいくつかの小惑星に行っていますが、それらは大きさが20kmないし60kmくらいありますので、これらに比べると桁違いに小さい小惑星なのです。まさに、星の王子さまの故郷のB-612に似たサイズの小惑星なんですね。図5には、小惑星イトカワの形状を示します。サツマイモのような形をしており、星の王子さまの小惑星とはちょっと違っていますね。「はやぶさ」が小惑星イトカワに到着したときに、どのような画像を地球に送ってくるのか、楽しみです。



図3:「はやぶさ」が小惑星にタッチダウンした瞬間の想像図
図3:「はやぶさ」が小惑星にタッチダウンした瞬間の想像図。イラストは、池下章裕/MEF/JAXA・ISASによる。


図4:地球スイングバイを行う小惑星探査機「はやぶさ」
クリックするとムービーがごらんいただけます。
CGは、JSGAの西山広太氏による。


図5:小惑星イトカワ
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イトカワのモデルは、JPLのS. Ostro氏より。天体(地球−月系を含む)の大きさは誇張されている。CGは、JSGAの西山広太氏による。

脚注3:「はやぶさ」ミッションについては、JAXAのウェブサイト(http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/index.shtml)を参照。
脚注4:糸川英夫博士については、ISASニュース1999.4 NO.217(http://www.isas.jaxa.jp/docs/ISASnews/No.217/ISASnews217.html)を参照。

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