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今後の飛行では、シャトルの機体を軌道上で点検し、RCCパネルや耐熱タイルなどの熱防護システムに破損がないかどうかを軌道上で確認すること、また傷があった場合、それが致命的な大きさかどうかを短時間で評価し、必要があれば船外活動とロボットアームを駆使して、機体の損傷を修理する能力を有する事が要求されています。
これらの作業を宇宙で実際に行うのは宇宙飛行士ですから、その方法についての検討、評価などの開発作業には私たちの意見も重要になってきます。10名以上の宇宙飛行士たちがその作業にかかわっていますが、私もその一員として業務に携わっています。スペースシャトル・プログラム統括部門や技術部門のエンジニア、運用管制部門の人たち、さらに実際にモノを作るメーカーのエンジニアらと共にシャトル熱防護システム検査用ブームの開発に取り組んでいます。
検査用ブームは、シャトルのロボットアームの先に取り付けられます。約15メートルのブームの先端にレーザー装置とカメラがつき、それらを使って熱防護システムに損傷がないか調べます。またブームの先端に宇宙飛行士が乗って損傷の目視検査をする事も想定しています。
私は実際にロボットアームの運用を経験した観点から、ロボットアームの先端に取り付けたブームを安全に動かし、シャトルや宇宙ステーションの構造に接触する事のないように、ブームのどこにカメラを付けたら良いかなどの提案も行ってきています。シミュレータで新しく使う検査用ブームを実際に自分で操作して安全性、操作性などを検討することもありますが、通常、そのような評価には複数の宇宙飛行士にも同様なシミュレーションを行ってもらい、その結果に基づいて、宇宙飛行士室のコンセンサス(総意)をまとめ、設計側に、こういう機能が安全な運用には必要、この機能は不要などといった提案を行います。
また、宇宙で強化炭素複合材(RCC)パネルや耐熱タイルなどのシャトルの熱防護システムを船外活動によって修理するための技術(修理材・道具類)の開発にも参加しています。修理作業性の評価には、船外活動服を着た状態で中性浮力を利用して無重力環境を模擬できる専用の水槽の中で行ったり、放物飛行により25秒程度微少重力状態を実現できるKC-135航空機を用いたり、宇宙空間の熱・真空環境を模擬できるチャンバーなどを利用します。このような一連の評価作業では、シャトル飛行再開の第1回目のフライトで実際に船外活動を担当するJAXAの野口聡一宇宙飛行士も重要な役割を担っています。
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