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―― それはおっしゃる通りかもしれません。では、どういう国家戦略があるべきだと?

立花 そもそも戦後の日本は、基本的国家戦略が何もなかったのではないでしょうか。戦後しばらくの間は、手から口への、生きていくだけで精いっぱいの時代がつづき、そのあとは数十年にわたって、ひたすら高度成長と生活上の安楽(個人的富の獲得)だけを求める時代がつづき、国家が生きる上で、国家戦略が必要だとは誰も夢にも思わない時代がつづいた。しかも、冷戦中は、アメリカにオンブにダッコでいくという国家戦略以外とりようがなかった。しかし、冷戦終結とともに、アメリカはニューワールドオーダー(新世界秩序)を意識的に追究しはじめ、日本に対しても、パターナリズム的庇護一方の関係をやめたから、日本も新しい世界秩序の中で生きていくためには、国家戦略が必要であることを思い知らされた。
 今は、あらゆる意味で国家戦略が必要な時代に入っていると思います。
 バブル時代とちがって、いま日本は経済的にかなり苦しい状況にあり、こういう状況が、まだこれからもかなりつづきます。国家財政はしばらく前から破綻状況にあり、もう大盤ふるまいの国家経営はできません。
 これからこの国はどう生きのびていくのか、活路をどこに見出せばいいのか。国家的サバイバル能力を身につけていくためにいま日本はどうすればいいのか。国力が下降ぎみであるいまこそ、限られたリソース(資力、マンパワー)を、どちらにどうふり向けていかなければならないのかをよくよく考えることが必要です。
 航空宇宙技術というのは、そもそもの性格として、国家戦略と直結する技術なのですから、最初からこういう戦略的思考をすることが不可欠なのに、日本ではそれがほとんど欠けたまま、場当たり的思考しかしてこなかったというところが最大の問題だと思います。

―― ではどうすれば?

立花 従来の政府のパターンだと、航空宇宙技術国家戦略研究委員会みたいなものを作って、適当な有識者を委員に委嘱して、事務局は官僚でしっかりかため、そこで官僚主導の下に議論と原案作りをすすめ、それを答申として所管の大臣のところに提出してもらう、という流れになるのですが、それだと官僚の作文の域を出ない。
 ぼくはそのパターンを打ち破って、官僚以上の知恵を出して国家戦略をしっかり練っていくためには、その前段階の有志による下からの議論の叩き上げ・叩き合いをしっかりやるべきだと思います。
 委員会的な機関を作る前に、広場(フォーラム)の議論が必要だということです。
 まずは、ウェブの上で「戦略構想フォーラム」のようなものを作って、甲論乙駁をガンガンやってもらう。技術的にはこのJAXAのページの上に、そういうスペースを作ってもらって、JAXAに官僚はそのページの技術的管理と議論の交通整理だけをやってもらう。議論の進行具合によって、議論の柱を何本かたてて、意見の交換がやりやすいようにする、ゲスト・スピーカーの寄稿をどんどん依頼して議論の活性化につとめるくらいのことはしてもらうが、議論の内容の誘導は厳に避ける。議論がある程度積み重ねられたところで、オフラインのフォーラムを(リアルな場、リアルな時間で)何回か開いて、代表的論者に意見を正面からぶつけあってもらうといったことをする。委員会的なものを作るのはそのあとでしょう。
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