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―― 日本の航空宇宙を活性化するには軍事化が再度必要だと?

立花 いや、とんでもない。巨額国家資金の投入が必要だという大義名分を、国防以外のところでちゃんと作れということです。そのような理論構築が必要だということです。

―― 別のいい方をすると、よく問われる、「そんなにお金をかけて宇宙開発をする必要がどこにあるんですか」という問いに対する答えを見つけろということですね。

立花 そうです。よく使われる、人類の未来の幸せと可能性のためといった、理想主義的な概念的な答えも、それはそれでウソではないし、大事なことですが、それだけでは足りません。そんなことに使う国家資金があるなら、景気回復に使えといった議論が出てきてしまいます。そういうロジックだけでは、宇宙予算大幅カットといったもうひとつ、今のような時代であればこそ、はっきりいうことが必要なのは、そういう巨額国家資金にはケインズ政策効果があるということです。
 ケインズ政策効果というのは、経済というのは民間の自由な経済活動だけに経済をまかせておくと、どうしても有効需要が不足して不景気になる。いまの日本がまさにそうなんですが、そういう場合、国家が大きな公共事業を興して、資金を散布すると、それがもたらす需要が呼び水になって何倍もの需要を引き起こす(乗数効果)というものです。それは実際ある程度きくんですが、やりすぎると効果がなくなる上に、国家に巨額の借金(国債)を残し、やがて国家が借金で首がまわらなくなる(これがいままさに日本がおちいっている状態)ということになります。
 日本では歴代つづいた自民党政権がこれをやりすぎて、しかも、公共事業を利権構造化してしまい、一部の政治家とそれにつらなる実業家連中がうまい汁を吸うという政治腐敗構造ができてしまった。しかも、公共事業でやったことが、もっぱら不要不急の土建工事、公共建造物工事で、日本中に公共事業の残骸ばかり残ってしまい、公共事業はいまや政治悪の代名詞のようになってしまいましたが、ケインズ政策はいつでもある程度必要だし(有効要素不足=デフレギャップを埋めないとデフレになる)、また次世代にいいものを残すためにやるなら、公共事業は基本的にいいものなんです。いままでの土建屋的公共事業はやればやるほど次世代に借金を残すものだったけど、やればやるほど次世代に豊かなものを残すものであれば、公共事業はやったほうがいいんです。
 資源貧乏国日本は、付加価値で食べていくほかないという宿命を昔から負っています。付加価値を生んでくれるものは人材であり科学技術力です。宇宙開発のように巨大資金を投じて行なわれる巨大科学技術プロジェクトは、基本的に公共事業なんです。それは有効需要をもたらすという通常の経済効果以上に、日本経済全体により高度な科学技術力を付けるための牽引車になってくれるという技術上のケインズ政策効果をもたらしてくれます。さらに、高度な技術を持った人材に対する需要をかき立て、その方向の教育力を高めてくれるという技術マンパワー上、ならびに教育上のケインズ政策効果ももたらしてくれます。科学技術立国をめざす国にとって何より必要なのが、このような巨大科学技術プロジェクトという公共事業を継続的に行っていくことです。アメリカの今日の繁栄と科学技術のリーディングパワーは、アメリカがこのような巨大科学技術プロジェクトを継続的に行ってきたことによってもたらされています。日本もそのような巨大プロジェクトの継続によって科学技術力と科学技術を持ったマンパワーをより一層強化していくことが必要です。それこそが、日本の国の未来のサバイバル能力そのものです。そして、そのようなサバイバル能力を高めることこそ最も現代的な意味における国を守る力、国防力です。これこそ、なぜ宇宙開発をやることが日本の国のためになるのかという最大の大義名分を与えるものだと思います。
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