―― カッシーニ・ホイヘンス計画とは、どのような計画なのですか。
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土星の衛星タイタンは、太陽系の衛星の中で唯一厚い大気に覆われ、山吹色に見える。大気は主に窒素やメタンから成り、酸素は存在せず水素が優勢。大量の汚染物質が放出されている今日の地球の大気は、酸化性から還元性の大気へと変化している。還元性の大気は、原始大気特有の状態である |
カッシーニ・ホイヘンス計画は、かつてない非常に重要なミッションです。アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、イタリア宇宙事業団(ASI)による大規模プロジェクトで、太陽系のミニチュアを思わせる“土星系”の探査を目的としています。
ここで重要なのがホイヘンス突入機の任務です。土星の衛星タイタンの大気圏に突入し、大気の化学的、物理的特性を調べ、地表の調査を行います。タイタンは、地球の20〜30億年前に似た姿をしているため、その解明は、太古の地球を理解することにもつながります。
―― ホイヘンス突入機は、タイタンに着陸してからも機能を維持し、素晴らしいデータを取得することができましたね。
ホイヘンス突入機の目的はタイタン大気の測定だったので、大気圏通過中に観測機器が動作することに主眼を置いていました。ホイヘンス突入機が打ち上げられた当時、タイタンの地表は液体メタンの海や湖のようなもので覆われていると考えられていたので、着陸機能があっても沈んでしまい使いものにならないだろうと思われていたのですが、念のため、地表で数秒あるいは数分でも耐えられた場合の備えもしておきました。液体でもなく、しかも硬すぎない場所に突入機が着陸したのは、予想外の非常に嬉しい驚きでした。
最初のデータを受信中、ミッション担当の科学者が、「タイタンの表面は、クレームブリュレのように非常に薄く硬い表面で覆われていて、突入機はそれを突き破って内側のやわらかい部分に着地した」と表現していました。
そのおかげで突入機は沈むことなく、未踏の天体の貴重な科学データを2時間以上も送信し続けることができたのです。まさに感極まる思いでした。
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