ご覧いただいているページに掲載されている情報は、過去のものであり、最新のものとは異なる場合があります。
掲載年についてはインタビュー 一覧特集 一覧にてご確認いただけます。


有人月探査復活への期待
ハリソン・シュミット
			アポロ17号 宇宙飛行士
			アメリカ・ウィスコンシン大学客員教授
人類が最後に月に降り立ってから30年以上が経過した。そして今、再び月への注目が高まっている。「2018年に月に人を送り込む」と宣言したNASAに、月探査のプロジェクトが順調に進む中国、日本のSELENE(セレーネ)も打ち上げの時が近づいている。アポロ計画最終ミッション、アポロ17号の宇宙飛行士で、月に降りた唯一の科学者(地質学者)でもあるハリソン・シュミット博士に、月探査そして宇宙開発の今後について聞いた。 ハリソン・シュミット 写真
Harrison Schmitt
			1935年、アメリカ・ニューメキシコ州サンタリア生まれ。57年、カリフォルニア工科大学卒業(地質学)。64年、ハーバード大学にて博士号(地質学)を取得。
			65年、科学者として宇宙飛行士に選ばれる。その後、地質学や月でのサンプル採集方法などをアポロ計画の宇宙飛行士に指導する。また、月でのサンプル採集のためのハードウエア開発に従事。72年12月、アポロ17号でアポロ計画最後の月面着陸を行う。シュミットは、アポロ計画で月に行った12人の宇宙飛行士の中で唯一の科学者。
			1977年〜82年には、連邦上院議員(ニューメキシコ州選出)を務め、現在はニューメキシコ州アルバカーキで、科学・技術・公共政策の独立コンサルタントとして活躍。最近は月のヘリウム3を使った新エネルギー開発に情熱を注いでいる。
初めて月面に立った時の感想をお聞かせください。
最初に感じたのは、「母国アメリカだけではなく、人類を代表しているのだ」という幸福感でした。そして次に、月の美しさです。月は、太陽に照らされ光り輝く丘陵地帯と、暗黒の空が奏でるコントラストの世界です。私たちが着陸したタウルス・リトロー地域の南西部には2100mの山脈があり、その上空に青く美しいマーブル模様の地球の姿を目の当たりにすることができました。
博士は月面に降り立った唯一の科学者ですが、宇宙探査に科学者が参加する重要性とは何でしょう?
【アポロ17号 1972年12月7日打ち上げ】(提供:NASA)
映像をご覧になる方はプレイボタンをクリックしてください
それは、彼らがもつ専門分野の貴重な経験を活かしながら、効率的かつ理知的に作業を遂行できることです。
アポロ計画の宇宙飛行士は、私を除く全員がパイロット出身者でした。確かに、元パイロットであっても、訓練によってきちんと観測できるようになります。しかし、フィールドワークの経験が15年もある地質学者とは、比較になりません。経験豊富な地質学者は、重要なものとそうでないものを瞬時に見極めることができます。宇宙開発で必要とされるあらゆる分野において、蓄積した経験に勝るものはないのです。
地質学者に自分の心臓を手術してほしいとは思わないでしょう? 経験豊富な医師にやってもらいたいと思うはずです。月面探査も同じことで、地質学者としての経験がある人に任せたい。科学者が宇宙探査に参加するということは、非常に有意義なことなのです。
人間が宇宙に行くことは、「脳」という優れたコンピュータを宇宙に持ち込こむということ。加えて、人間には、「目」という優れた視覚能力や、ロボットよりも高精度の操作能力を備えた「手」もあります。決まった手順で機械的に情報収集を行うだけならロボットの方が人間よりも遥かに上かもしれませんが、人間とロボットの優れた面を共に活用してこそ、宇宙で素晴らしい成果が出せるのだと思います。

 
1  2  3
次へ