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国民への理解促進が大切

Q. 「アリアン5」とH-IIAロケットの設計理念の違いは何だと思われますか?


基本的には同じだと思います。他国に左右されないように、国は国の衛星を打ち上げられる手段を持っていなければなりません。それが、「アリアン」とH-IIAの使命だと思います。この使命を達成するためには、信頼度の高いロケットであることが最も重要だと思います。


Q. 日本のH-IIAロケットは、商業打上げ市場でのポテンシャルを持っていると思いますか?


ポテンシャルはあると思います。特に最近、H-IIAは信頼度を高め、市場からの関心を集めるようになりました。顧客のスケジュールに合わせて、いつでもロケットを打ち上げられるような体制を作ることができれば、商業ビジネスにおける需要が高まるのではないでしょうか。


Q. これまでに、「アリアン5」も打上げの失敗を経験していますが、どのように克服をし、再び信頼を得るようになったのでしょうか?


まず失敗の原因を突き止め、対策を十分にとりました。どのような対策をとるかを、顧客や保険業界に詳しく説明をすることによって、信頼性を向上することできたと思います。また、失敗が顧客に及ぼす影響を少なくするよう心がけ、その1つの対策が、先程述べたバックアップ協定です。


Q.日本の宇宙開発について、何かご意見があればお話ください。


JAXAはこれまでに素晴らしい仕事をしてきました。また、今もいい仕事をしています。しかし、そのことがあまり日本の国民に伝わっていないように思います。これは非常に残念なことですが、その責任は、報道する記者への説明が不足しているからかもしれません。
打上げが失敗した時には、「失敗」だけが取り上げられ、JAXAが何か大変な悪いことをしたという報道しかされませんし、JAXAのコメントも「申し訳ないことをしました」という謝罪の言葉だけです。私は、ロケットの打上げが延期になっただけでも、まるで失敗したかのように新聞に書かれているのを見たことがあります。私はこれらのことに疑問を感じています。なぜなら、宇宙開発には失敗がつきものだからです。絶対に失敗は起こります。ですから、失敗した時には、謝罪の言葉ではなく、これから失敗を少なくしましょうという前向きの報道をするべきだと思います。ヨーロッパのように、常日頃から記者によい説明をし、記者からの協力を得られるような関係を築いていたらよいのかもしれません。



Q.JAXAとヨーロッパが今後どのような協力体制を築いていけばよいと思いますか?


政府間の打上げバックアップ協力を期待します。現在あるのは、私どもがアメリカと日本の企業と結んだ商業衛星用の協定ですが、政府衛星の場合にも同じような協定があれば大いに成果を上げるはずだと思います。


Q.今後のアリアンスペース社の計画を教えてください。有人ロケットの計画はあるのでしょうか?



ギアナ宇宙センターで射点に運ばれる「アリアン5」
(提供:アリアンスペース)

「アリアン5」は、今年は6機、来年は7機の打上げを予定しています。再来年には、8機までいくかもしれません。これからも、世界をマーケットにして、商業衛星の打上げ実績を作っていきたいと思います。また、有人ロケットについての計画はありません。有人ロケットに関しては、国がどうするかを決める問題であり、政策として決定した場合に協力することがあったとしても、アリアンスペース社が有人ロケットを作るという計画を起こすことはありません。アリアンスペース社は、今後も「アリアン5」を使って、たくさんの打上げをしていきたいと思います。


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