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日本の産業を活性化するためにも

Q. 航空機開発分野での国際協力はどのようなことが考えられますでしょうか?


旅客機は、その寸法や運用方法などさまざまな機体があります。30人乗りから500人乗りまで、用途に合わせた機体が運用されています。これらの機体をすべて日本が独自で開発することは難しいと思います。旅客機は商品ですから、マーケティングの観点から、他国と協力して開発する方が適していると思われる分野においては、国際協力するべきだと思います。私たち、国産旅客機チームも、海外との共同研究や情報交換を日常的に行っています。また、国際協調してそれぞれの得意分野を持ち寄ることで、開発資源の重畳化、すなわち技術開発の重複を防ぎ、コスト的にも競争力の高い航空機開発が可能になると思います。


Q.航空機の開発の魅力とは何でしょうか?


子供の頃はパイロットになりたいと思っていました。思うように空を飛べたらどんなにか楽しいだろうとの思いは、残念ながら近眼になってしまったため叶いませんでした。しかし、大学生の時は、クラブ活動としてグライダーを操縦し、少しばかり大空を飛ぶ希望を果たしました。航空機に限らず、開発の魅力は、自分の関わった物を自分で動かしてみる、動いているのを自分で見る経験ができることではないでしょうか。ハードウエアの開発に限らず、自分の関わったものが具体的な形になって見える、自己実現の証を見ることができる喜び、これが開発の魅力だと思います。


Q. 今後の夢は何ですか?


もうこの年ですから、自分がというよりは、若い技術者たちを育成していくことが私の夢です。これは、技術を伝承するという意味ではありません。団塊世代がいなくなって技術が伝承しないとよく言われていますが、これは間違いで、技術は伝承するものではないと思います。技術は自分で覚えていくしかないのです。上に立つ者は、若い人たちに技術を覚えさせる機会を与え、彼らが道を間違えそうになった時に、自分の経験を元に軌道修正してあげるべきだと思います。後輩たちが関わった旅客機を見るのを楽しみにしています。

永尾陽典(ながおようすけ)
JAXA総合技術研究本部 複合材技術開発センター 低コスト複合材セクション・リーダ
JAXA航空プログラムグループ 国産旅客機チーム 構造セクション(併任)
1950年生まれ。1975年、民間の航空宇宙機製造会社に入社。航空機構造設計・解析、宇宙往還機HOPE-Xの民間3社合同設計チームのサブリーダなどを経て、2003年に航空宇宙技術研究所(NAL)に入所。その後JAXAとなり現在に至る。
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