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インターネットの地域格差のない社会を

Q.WINDSは私たちの生活にどのように役立つのでしょうか?


RF放射試験中のWINDS衛星システム


都市部ではインターネットが非常に普及していますが、山間部や離島などではまだ設備が整っていない所が多くあります。また、アジア諸国では日本ほどインターネット環境が良くありません。WINDSは、そのような場所でも、大都市並みの通信環境を提供し高速通信を可能にします。現在はインターネットが飛躍的に普及し、その能力も大幅に向上しています。それにより、そのようなインターネット環境を前提に世の中の仕組みも出来つつあります。例えば行政手続きや、遠隔医療をはじめとした医療、教育など、わざわざその場所へ行かなくてもサービスを受けることができるようになるでしょう。そのようなインターネットが生活のインフラを整え、今までパソコンに馴染みがなかったお年寄りにとっても便利で安心できる環境が出来ると思います。
さらに、WINDSの技術は防災対策にも大きな貢献が期待されています。日本を含めアジア諸国は自然災害が多いですが、その被害情報を迅速に知ることは対策をとるのに非常に重要です。WINDSがあれば、小型の機器で素早く地上局を確保でき、安定した通信で、ハイビジョンのような高精細な画像も災害対策本部や報道局にすぐ送ることができます。万が一、通信網が寸断されたとしても、衛星が被災地と対策本部、また被災地と皆さんを結ぶ太いパイプラインとなれるよう、WINDSの技術を確立していきます。


Q.打上げ後はどのようなスケジュールで運用されるのですか?


2007年度の冬期にH-IIAロケットで打ち上げられた後、まず初期機能の確認、衛星と地上のネットワークがうまく通信できるかどうかなどを検証するための実証実験を実施します。また総務省が、 WINDSを利用した実験の参加者を公募し、数多くの海外からの参加も含め53のテーマが選定されました。国内外の研究機関、大学、民間企業が応募した通信関連の技術的な実験や防災に関する実験、そして最も多いのは教育関係の実験です。日本とアジアの大学を結び、インターネットを遠隔教育に活かせるかどうかといった実証実験などが予定されています。先ほど、衛星の中に交換機を搭載すると申し上げましたが、それによって、生徒同士のやり取りも自由にできるようになります。これまでの衛星を使った教育に比べ、先生が一方的に教えたり、先生と生徒の一対一の双方向ではなく、例えば、日本にいる学生とタイにいる学生が衛星を経由して直接話ができるなど、全員が授業に参加できます。これらの実験を成功させ、WINDSのさらなる可能性を追求していきたいと思います。


Q.WINDSによる国際協力はどのようなことが考えられていますか?


総務省が公募した実験には前に述べたようにアジアの各国から、防災、教育など数多くの参加があります。そして、期待が大きいのは衛星を使った防災活動です。「センチネルアジア」という、アジア太平洋域の災害関連情報をインターネットで共有し、災害管理に活用する取り組みがJAXAを中心に行われています。その最初のステップとして、陸域観測技術衛星「だいち」などが撮った衛星画像がすでに使われていますが、次のステップとして、通信衛星が重要な役割を果たすことになります。今はまだ、実際の災害現場でWINDSをどう使うか、どういう使い方をすればWINDSの能力を発揮できるかを検証している段階ですが、国際社会にも貢献できる衛星にしたいと思います。


Q.中村プロマネがWINDSに最も期待している点はどこですか?


インターネット技術が進み、インターネットによる情報コンテンツも、文字から音、映像へとどんどん進化しています。環境が整ってくると、それに合わせて、情報を提供する側もいろいろなものをどんどん送り出すようになりました。インターネットのある社会が当たり前になりつつあり、例えば、最近の入社試験の申し込みはインターネットによるものがほとんどです。しかし、全ての地域の人々が都市部と同じようなインターネット環境を提供されているかといったら必ずしもそうではありません。インターネットを使った世の中の仕組みができると、便利な地域はますます便利になりますが、通信環境の整っていない不便な地域はそういった社会から取り残されてしまう可能性があります。私は、世の中の仕組みが、便利な所にいる人のためにだけあってはいけないと思います。不便な所と便利な所の格差があってはいけません。そういう意味で、どんな場所でも高速通信ができるWINDSの技術は、インターネットの地域格差を解消します。WINDSが、世の中を改善する1つの手段になってくれればと思います。
また、災害に起きた場合、通信というのは最も重要な要素です。きちんと通信がつながり、現地の情報が返ってくる。中央からの情報がきちんと正確に届くというのは、非常に大事なことです。やはり、どんな状況においても、きちんと通信がつながっているというのは、安心の要因なんです。いつでも、どこでも、確かな情報が自分に届き、自分からの情報が相手に届く。そういう安心安全な社会の実現に、WINDSの技術が貢献できればと思います。


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