Q.子供の頃から宇宙や衛星づくりに興味があったのですか?
子供の頃から天文に興味があり、望遠鏡で星を観測したりしていました。特に宇宙に対する興味が高まったのは、1969年に月に着陸したアポロ11号のニュースです。これは私の人生に大きな影響を与えました。月に降り立つ数年前から、テレビや新聞でアポロ計画のことが取り上げられ、宇宙に関する情報がたくさん入ってくるようになりました。それを見て「すごい」と思い、自分も宇宙に関係した仕事に就きたいと思うようになりました。そこで宇宙開発事業団(現JAXA)に入社し、最初に配属されたのが人工衛星を試験する部門でした。その後、地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」や、環境観測技術衛星「みどりII」の開発などに携わり、現在WINDSのプロジェクトを担当しているわけですが、衛星の開発というのは面白くやりがいのある仕事です。
私が初めて人工衛星を見たのは、旧ソ連のスプートニクでした。私が子供の頃は東京の空でも人工衛星が見えたんです。何月何日の何時何分頃に、東の空から西の空を人工衛星が通りますと新聞記事が載り、その時間になるとみんなで空を見上げるんです。近所の人たちと見ながら、「ああいうものが宇宙を飛ぶんだなあ」と子供ながらに感心したのを覚えています。そして実際に衛星づくりをするようになって最も感動するのは、やはり打上げの時です。自分たちが何年もかけて作った衛星が打ち上がり、ロケットのフェアリングが開いて衛星が分離され、真っ暗な宇宙へと飛び立っていく姿を見ると胸がいっぱいになりなります。さらに、衛星から最初に電波を受信した時も感動的です。確かに、衛星の開発に苦労はつきものです。現在はプロジェクトマネージャという責任のある仕事につき、プレッシャーもあります。しかし、仲間と力を合わせて衛星を開発し、それを宇宙へ打ち上げるということは、とても大きな達成感があります。
Q.打上げを目前にした今のお気持ちを教えてください。
現在WINDSは開発の最終段階にきています。今年の初めから筑波宇宙センターでさまざまな試験を行い、計画に沿って進んでいます。すべての試験が終わった後、種子島宇宙センターへ衛星を運び、打上げに向けた最終チェックを行います。打上げは2008年の1、2月期を予定しています。今の気持ちは、とにかく試験が無事に終わり、宇宙に元気に飛んでいってほしいという強い思いだけです。
Q.中村プロマネの今後の夢は何ですか?
衛星のような宇宙の技術が、いろいろな人の生活にちゃんと役立ってほしいというのが私の希望です。これは宇宙の技術なんだと意識されることなく、皆の生活の中で役割を果たしていくような社会を実現したいです。例えば、今放送衛星のテレビを見ていても、人工衛星が使われていると意識する人はあまりいません。気象衛星もそうです。一般の方たちは、その情報が人工衛星から来ているかどうかは関係なく、当たり前のように見ています。同じように、すべての衛星技術が、自然と皆さんの生活の中に入り、「宇宙は特殊な世界ではない」と思われるような時代が早くくればいいと思います。本当の意味で、宇宙が私たちの生活にもっと身近な存在になってほしいです。WINDSが、そのための1つのきっかけになればと思います。