Q.未来の宇宙活動はどうなっていると思われますか?
いろんな答えがあるとは思いますが、まずは、宇宙(地球低軌道)までの輸送コストがずいぶん安くなると思います。今までコストが高いためにできなかったことがたくさんありますので、輸送のコストが下がったら、ずいぶん変わると思います。
次に考えられるのは、太陽系内の直接探査です。人間が生きた状態で火星や木星に向かうという宇宙航行も、近未来には実現するでしょう。ただ、物理の法則とはなかなか冷酷なもので、海外旅行並みの気安さで、火星などほかの惑星へ到達できる船ができるのはまだ先だと思います。核融合ロケットが今のところ一番有望だと思いますが、これを使ってもそれほど画期的に速く宇宙を航行できるわけではありません。ですから、まずは地球の軌道や月など、地球・月圏内で人類の生活圏や活動範囲が拡大していくでしょう。
さらには、人間、あるいは、人間の知能のあり方、意識のあり方というのが、ずいぶん変わるかもしれません。例えば、人間の脳の活動をコンピュータに移し替えて、その上で活動や思考をすることができるかもしれない人工知能の形で、宇宙へ進出することもあると思います。意識のデジタル化ということができれば、移動は単に電波を飛ばせばできるわけですから、宇宙飛行の形も根底から変わってきます。これまで無人探査機でやってきたことに、人間の知性がそのまま関わっていけるようになるのです。
このように、未来像として考えるのは、地球低軌道到達の低コスト化と、太陽系内直接探査、生活圏の拡張、そして、人工知能技術の確立です。21世紀の内に、これらのことに直面すると思います。
Q.JAXAにはどのようなことを期待しますか?
日本がどうしたいかという強い意志をもって、日本の宇宙活動をリードしていってほしいと思います。日本はもの作りの国です。特に、エンジニアの方々、技術系や研究者の方々が生き生きともの作りができる態勢づくりをしていってほしいです。そして、独自の有人宇宙飛行に挑戦していただきたいと思います。