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「子ども宇宙サミット」の成功を未来へつなげよう 多摩六都科学館 館長 高柳 雄一
2008年5月23〜25日に、北海道の苫小牧市で、「美しい星・地球をめざして」をメインテーマにした「子ども宇宙サミット」が行われました。本サミットでは、海外5カ国を含む国内外の子どもたちが、宇宙から見た地球環境をテーマに、美しい星・地球に暮らす命の大切さや身近な環境問題、地球の未来について意見を交わしました。「子ども宇宙サミット」では「環境宣言」と「提言書」を採択し、本年7月に開催された北海道洞爺湖サミットに向け、G8の首相に読んでいただくために外務省に届けられました。期間中は、子どもたちによる議論のほか、宇宙や地球観測の専門家たちの講演や自然環境映画の上映、宇宙実験教室など多彩なイベントが行われました。「子ども宇宙サミット」の全体ファシリテーター(とりまとめ役)として重要な役割を果たされました、多摩六都科学館館長の高柳雄一さんに、サミットの感想や宇宙教育についてお話をうかがいました。
高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)
多摩六都科学館 館長
1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)に入局。主に科学系シリーズ番組をてがける。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフ・プロデューサーを歴任、1994年からNHK解説委員。2001年9月、高エネルギー加速器研究機構教授に就任。2003年4月に電気通信大学共同研究センター教授に就任し、NHK部外解説委員を兼務。2004年4月から多摩六都科学館館長を務める。小惑星No.9080にTakayanagiと命名される。主な著書に「創造の種」(NTT出版)、「火星着陸」(NHK出版)、「天体の狩人」(ベネッセ・コーポレーション)など。2008年5月に北海道苫小牧市で行われた「子ども宇宙サミット」の全体ファシリテーターとして、サミットのとりまとめを行う。
世界とのつながりを知るために
Q.「子ども宇宙サミット」とは、どのような取り組みなのでしょうか?

子ども宇宙サミットの開会式(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)
子ども宇宙サミットの開会式
(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)
これから、地球の主人公となるのは、いまの子どもたちです。国内外の子どもたちが集まり、環境問題など地球が抱える問題を宇宙からの視点でとらえ、自分たちがこれから生きていくうえで、何に努めればよいか、何を大事にしていくべきかを話し合うのが「子ども宇宙サミット」の目的です。地球環境をきちんと把握するために、宇宙からの目はとても重要です。現在、地球が抱えているさまざまな問題に国境はなく、宇宙から見ると、それらが全部つながっているように見えます。私たち人類がまねいた地球環境問題は、それぞれ住んでいる地域によって違いますが、それらを宇宙からとらえることで、つながりがあることが分かります。子どもたちがこのことを意識して話し合い、将来の方向性を導き出していくことは、とても重要だと思います。
また、今年は日本の北海道洞爺湖町でG8サミットが開催され、世界の指導者たちが環境やエネルギーの問題を議論することになっていましたので、その問題を子どもの視点から話し合い、将来どう活動していくべきかという提言書をつくり、G8サミットに訴えかける機会にしたいという目的もありました。

Q. 何歳ぐらいの子どもたちが集まり、どのように話し合いが行われたのでしょうか?

分科会のようす(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)
分科会のようす
(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)

小学5年生から高校2年生までの子どもたちで、国内からは、応募95名から選考された20名、海外からは9名が参加しました。韓国、中国・香港、インドネシア、オーストラリア、そして、南太平洋に位置するツバルの子どもたちです。ツバルはサンゴ礁からできた島国で、温暖化による海面上昇により、国が海に沈んでしまうかもしれない問題に直面しています。
話し合いは、テーマを設定して分科会で行われました。「環境問題で失うもの」「人間にできること」「宇宙に期待する役割」「科学技術の役割」「子どもの役割」という5つのテーマで、男女の数はだいたい半々になるように、また、年齢もうまく散らばるようにグループをつくり、大人がついて通訳をするなどサポートしました。私が参加したグループでは、「人間にできること」について話し合いましたが、子どもの意見を尊重しつつ、子どもが困った時に助け船を出すよう心がけました。グループのまとめ役や書記も子どもたちが話し合いで決めて、全員がそれぞれ役割を持てるよう工夫しながら進めていきましたので、内容的にも充実した議論が展開されたと思います。話し合いの結果は、「わたしたちの願い」という環境宣言と、提言書としてまとめられました。

* 関連リンク:環境宣言と提言書の内容はこちら「子ども宇宙サミット」特設サイト

Q.子どもたちの話し合いで特に印象に残っていることは何でしょうか?

分科会で子どもたちと話す高柳氏(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)
分科会で子どもたちと話す高柳氏
(提供:YAC(財)日本宇宙少年団)
日本の子どもが、「お父さんやお母さんが消し忘れた電気をいつも消している」と言っていましたが、子どもたちの省エネ意識が高いのに驚きました。もしかしたら、大人よりも子どもたちの方が節約を意識し、自分たちの未来にどう関わってくるのかを考えているのかもしれません。私が属した分科会のグループでは、「もったいない」(Shame to Waste)という言葉を環境問題から地球を救う世界のキーワードとして広めようという議論がありましたが、この「もったいない精神」は、昔から日本人が小さい島国で生活していくために必要とされてきたことです。地球環境問題によって「節約」ということが世界的に意識される前に、昔の人が知恵として持っていたことを、子どもたちが発言したのはとても印象的でした。
   
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