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日本の宇宙航空産業の発展を支援
Q. JAXAは、今後、日本の宇宙航空産業の発展に、どのように貢献していく計画があるのでしょうか?

「JAXA COSMODE PROJECT」のロゴマーク
「JAXA COSMODE PROJECT」のロゴマーク

日本の宇宙航空産業は世界的に見ると、まだ規模が小さいというのが現状です。宇宙基本法が制定された背景に、日本の宇宙産業をもっと育成、強化しようということがありますが、JAXAとしては、日本の宇宙航空産業が発展して国際競争力を持ち、国の基幹産業として成長するよう、支援していきたいと思います。そのためにまずJAXAがやるべきことは、基盤技術の研究開発を推進し、新しい技術を産業界に移転することです。それはJAXAが単独に開発するのではなく、企業や大学と共同で行い、研究開発の裾野を広げながら進めていきたいと考えています。すでに、JAXAは多くの大学と協定を結んで共同プロジェクトを進めています。
次にJAXAができることは、宇宙実証だと思います。システムにしても部品にしても、宇宙で本当に使えるということを利用実証しなければ、産業やサービスとして発展しません。例えば、陸域観測技術衛星「だいち」を災害観測に使えることを実証したわけですが、このように新しい利用方法を開拓して、宇宙での利用実証を行うことが重要だと思います。そういう意味で、相乗り衛星の公募を開始しました。JAXAの人工衛星を打ち上げるときに、ロケットの余剰スペースに衛星を相乗りさせるのです。今回打ち上げる「いぶき」にも、民間企業や大学が作った小型衛星を相乗りさせる予定です。この相乗り衛星の公募はこれからも継続し、企業や大学に人工衛星の打ち上げの機会を提供していきたいと思います。これにより、宇宙利用の裾野を広げるとともに、教育や人材育成にも貢献できればと期待しています。
そして、JAXAが開発した技術をスピンオフすることも重要です。これは宇宙産業に対してではなく、一般の産業に使っていただくのを一つの狙いとしています。JAXAでは、宇宙オープンラボという、宇宙ビジネスを始める方を支援するプログラムを行っていますが、それと同時に、民間が一般に使っている技術を宇宙で利用するという、民間産業から宇宙への「スピンイン」も進めています。昨年、宇宙ブラント「JAXA COSMODE PROJECT」を発足させました。これは、日本の宇宙開発から生まれた商品やサービスに、このロゴマークを使って販売していただくというプロジェクトです。スピンオフされた宇宙技術を国民の皆さんに知っていただくとともに、宇宙関連産業の発展につなげたいと思います。

関連リンク:産学官連携部


Q. 航空分野ではJAXAはどのような貢献をしていくのでしょうか?

静粛超音速機
静粛超音速機

JAXAは日本の航空技術の研究開発機関ですが、その体制を強化するためにも、JAXAの主導でやることを「選択」「集中」し、民間企業と分担しながら進めることが重要です。現在JAXAが集中して行っているのは、次世代旅客機や静粛超音速機の研究です。旅客機の場合は、機体から出る騒音の低減をするほか、主翼や機体などに使われる軽くて丈夫な複合材、環境にやさしいエンジン、安全運行につながる操縦席やコックピットなど、現在のジェット旅客機よりも高付加価値あるいは差別化できる技術の開発を行っています。また静粛超音速機についても、静かでエネルギー効率の高い超音速機の実現に向けた技術研究に、世界に先駆けて取り組んでいます。そのための静粛超音速機の実証機をつかった実験を早期に行いたいと思います。さらに、航空では安全運行が一番重要です。次世代のための安全運行システムの研究を進めていますが、これを世界に提案して標準化してもらえるよう、確実なものにしていきたいと思います。
静粛超音速機については、実現までに10年から20年かかる長期的な取り組みですし、一国だけで開発するのは難しいと思いますので、世界で共同して作るという体制ができるのではないかと思います。今から20年後くらいには静粛超音速機が飛べるようになって欲しいと思いますが、JAXAはさらにその先を見据えた先端技術の研究開発を行い、その技術を移転することで、日本の航空技術の向上に貢献したいと思います。

関連リンク:航空プログラムグループ

宇宙利用でアジア各国との連携を強化
Q. 今後、アジアの国に対して、JAXAはどのような貢献をしていくのでしょうか?



日本は宇宙先進国として、アジア各国との連携を強化し、宇宙開発利用の可能性を提起していきたいと思います。1993年に日本が主体となってアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF:Asia-Pacific Regional Space Agency Forum)を設立し、ほぼ毎年国際会議を開いて、宇宙利用の促進を目的とした議論を行っています。昨年の12月には、日本とベトナムの共催により、第15回APRSAFをベトナムで開催し、アジア太平洋諸国の20カ国、65機関と7国際機関が参加しました。この国際会議を15回も継続しているという点で大変意味があり、2006年からは具体的な国際協力プロジェクトとして、アジアの災害監視を目的とした「センチネル・アジア」を始めました。これによって、人工衛星を持たない国も、災害情報を共有できるようになり、JAXAの「だいち」が大変貢献しました。日本のほかにもインドの人工衛星も参加し、今年は韓国やタイの衛星も参加する予定です。これからどんどん人工衛星の数が増えてくれば、よりタイムリーな災害監視情報を提供できると思います。特にアジアは自然災害の多い地域ですから、「センチネル・アジア」のような取り組みが、国民の安全な生活を守るためにも重要だと思います。
もう一つのAPRSAF発のイニシアチブとして、今年の4月から、アジア各国で小型衛星を共同開発するという、STAR(Satellite Technology for the Asia-Pacific Region)計画が始まります。JAXAの相模原キャンパスに、関係国の研究者や指導者が集まって、小型衛星を共同開発し、将来的にはそれぞれの国が人工衛星を独自で作れるようにします。
さらに、昨年のAPRSAFで日本が提案した環境問題への対応として、宇宙から環境を監視するSAFE(Satellite Application for Environment)プロジェクトを立ち上げることで合意しました。アジア各国が宇宙利用を通じて団結し、地球規模の環境対策に貢献できるよう、JAXAがその先導役となってプロジェクトを推進していきたいと思います。

関連リンク:国際協力

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