Q. この他で、今年、理事長が注目しているプロジェクト、力を入れていきたいことなどありますか?

準天頂衛星
宇宙利用の分野では、準天頂衛星の初号機の開発が佳境に入ってきました。準天頂衛星システムは日本独自の技術でカーナビなどにも使える、高精度の測位情報を提供します。できるだけ早く初号機の打ち上げを行い、技術実証したいと思います。地球観測衛星では、今年打ち上げ予定の「いぶき」以降も、地球規模で水循環や気候変動を観測する「GCOM」や降雨観測を行う「GPM」、雲や大気中の微粒子を観測する「EarthCARE」の開発を行っています。着実に開発を進め、地球の環境対策に貢献したいと思います。
また、将来に向けて、超低高度衛星の検討をしています。これは、高度180kmから200kmくらいの低軌道を飛ぶ衛星で、地球の近くにいるため、地表や気象観測の精度が上がるという利点があります。しかし地球に近いと、わずかながら大気の抵抗があり、衛星は推力を失って落下します。低軌道でも衛星の高度が維持できるような姿勢制御などの検討を行っています。

X線天文衛星「ASTRO-H」
科学衛星の分野では、電波天文衛星「ASTRO-G」の開発が進められています。またX線天文衛星「ASTRO-H」の研究を進めます。X線天文学、電波天文学は日本が得意とするところで、世界からも注目されていますので、研究開発が順調に進むことを期待しています。
惑星探査関係では、金星探査機「PLANET-C」が来年の打ち上げをひかえ、今年は様々な試験を行っていきます。また、2014年に打ち上げ予定のヨーロッパとの共同ミッション、水星探査機「BepiColombo(ベピコロンボ)」の開発も行われています。さらに来年には、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還する予定です。「はやぶさ」は満身創痍の状態ではありますが、地球に帰るべく、宇宙空間で頑張っています。運用に携わっている人たちも全力を尽くしていますので、その努力が報われるよう、「はやぶさ」の動向にも注目しています。