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宇宙技術を世界に広める

Q. 今の職務の内容、特にICGでの活動をお聞かせください。

ナイジェリアにあるリージョナルセンターの学生との記念写真。JAXAのきぼう記念パネルを贈呈(提供:国連宇宙部)
ナイジェリアにあるリージョナルセンターの学生との記念写真。JAXAのきぼう記念パネルを贈呈(提供:国連宇宙部)

国連宇宙部の展覧コーナー。中央にH-IIAロケットのモックアップが見える(提供:国連宇宙部)
国連宇宙部の展覧コーナー。中央にH-IIAロケットのモックアップが見える(提供:国連宇宙部)

私が仕事をしている国連宇宙部宇宙応用課では「宇宙科学技術を使って世界の人々の生活を向上させる、世界平和に貢献する」ということを大きな目標としています。
その中でも大きく3つの仕事があります。

1つ目は教育啓蒙活動です。
これは宇宙の科学技術を若い世代に知ってもらう活動です。
国連宇宙部のRegional Centresがインド、アフリカのモロッコとナイジェリア、そしてメキシコとブラジルにあります。そこで大学院教育レベルの宇宙科学技術の講義を9カ月間行う活動のサポートを行っています。いろいろなカリキュラムがありまして、宇宙科学、衛星通信、衛星気象、リモートセンシングなどの講義を行っています。またGNSSと宇宙法の新しいカリキュラムも作っているところです。

2つ目の活動ですが、宇宙科学技術を知りたいという要望を持っている国でワークショップやセミナーを開催し、世界中から集まった宇宙科学技術の専門家とその国の様々な専門家たちの意見交換を通じて宇宙科学技術への理解を深めてもらうということも行っています。

3つ目は、より掘り下げた活動であるイニシアティブです。これらのイニシアティブを通して、発展途上国の人々にも世界の宇宙科学技術の発展に寄与してもらうという側面もあります。イニシアティブには3つの活動Basic Space Science Initiative(BSSI)、Basic Space Technology Initiative(BSTI)、Human Space Technology Initiative(HSTI)があります。

  • Basic Space Science Initiative: BSSI
    2007年から2009年にかけて、国際太陽観測年(IHY)の活動を行いました。この期間に14種類の異なった観測機器を世界の約1000箇所に設置しました。今年からは国際宇宙気象イニシアティブを始めました。ここでは発展途上国の人々にも協力をしていただいて、太陽光などの影響を受ける電離層の状況を常時観測できる全世界的観測網を作っています。
  • Basic Space Technology Initiative: BSTI
    十分な技術を持っているが人工衛星を作った事がない、という発展途上国が小さな人工衛星を作りたいと要望してきた時に、宇宙技術の提供などを行うことで支援しています。また小さな人工衛星を開発している世界の大学や研究所や会社のディレクトリ作りも始めました。
  • Human Space Technology Initiative: HSTI
    これは、私が国際宇宙ステーションの利用を広めたいという思いを持って国連に入った時に立ち上げたプロジェクトです。主に国際宇宙ステーション活動を世界に広める活動を行う予定です。宇宙ステーションを使って新しい科学技術の発展に寄与できたらと思います。

この他にも、ICG(衛星航法システム(GNSS)に関する国際委員会)の活動も行っています。GNSS(全地球測位観測衛星システム)は、いまや社会生活に欠かせない基盤インフラですが、GNSS応用技術は世界の持続的な発展に大きく寄与することが期待されています。今後世界は、アメリカのGPSだけでなくロシアのGLONASSやヨーロッパのGALILEO、中国のCOMPASS、日本の準天頂衛星システムなど、複数のGNSSが運用され、その応用利用技術はさらに高度化して行くでしょう。国連宇宙部が事務局として世界のGNSSプロバイダである国々やこれからプロバイダになろうとしている国々に話し合ってもらって衛星測位システムの信号仕様やフォーマットの共通化を進めてもらう、という仕事を行っています。世界の人々がどのGNSSシステムも安く自由に使えるようになること目指しています。

Q. 宇宙飛行士としての使命・生きがいと、国連職員としての使命・生きがいは何でしょうか?また、日本そして世界の人々に今アピールしたいことがありましたらお聞かせください。

宇宙飛行士としての生きがいは、宇宙開発の最前線で働いていること、そして何よりも宇宙へ行けるということでした。自分が今まで知らなかった所に行って新しいことを知る、わくわくすることができたことも生きがいでした。国連職員となってからは、個人の生きがいよりも人類全体を考えることが生きがいと変わってきました。世界中の人々が宇宙に行けるように、そのためには何をすれば良いか考え、そのような夢に向かって努力することが生きがいです。 もちろん地球は地球でとてもすばらしく大切にしなければならいのですが、いつか人間は地球に頼らず、地球を巣立って宇宙に進出していく未来が来るのだと私は信じていますので、今の私の仕事はそのための準備を行っていると思います。

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