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ブルース・マレー博士 インタビューパート1 JAXAのXに期待
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Q.なぜ、惑星探査が必要なのでしょう?

 なぜ、惑星探査が必要かということは、15世紀の大航海時代を思い出してください。人々がヨーロッパやアジアの限られた部分に住んでいた時、ある人が「他の場所を見に行きたい」と言ったのですが、その時も同じ話が出ました。「なぜ、他の場所を見たいのか? われわれはすでに知るべき事の全てを知っているのだから」と。でも、それは事実ではありませんでしたね。北米や南米を発見し、また、オーストラリアやアジアの奥地を探検するようになった時、世界が変わり、知識が変わったのです。
 熱帯雨林や極地は、家や分譲地を作るのに適した場所ではありませが、そこから得られる知識がとても大切です。例えば、気候の知識。つまり気候の歴史についての知識が非常に大切なのです。また、資源を理解することも大切です。ですから、他の惑星に行く時も、同じ事が言えると思います。最初は月で、次は火星ですが、新たな発見が今までの世界観、宇宙観を変え、われわれの知識を進化させていくのです。


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Q.惑星探査は今後20年でどうなりますか?

 エクスプロレーション(探査)の将来について考えようとすれば、根本的に、論理的な矛盾があります。何を見つけ出すかということが分かっていれば、それは、エクスプロレーションではないですからね。このことは、われわれの今までの経験が何度も物語ってくれています。ですから、起こりうるものについて話す事はできますが、それは、予見できない最も大切な何かを見失うことになるかも知れません。
 あえて起こりうる可能性が高いという意味では、「火星」の場合、「利用できる水があるのか?」「水はかつて存在していたのか?」ということについてはいずれ分かると思います。現在火星に微生物の生命が存在する、もしくは存在していたかもしれないといった学説を検証することが可能になるでしょう。しかしこれは、火星の地表と大気中に限って探査することができるのであって、地中深くの状態については、あまり知ることはできないと思います。私たちにとって、火星に現在、または過去に生命が存在したかということはとても大切な事です。
 今までこの宇宙の他の天体から、生命らしきサンプルは全く発見されていません。だからこそ、「生命は地球だけのものなのか?」「宇宙には私たちだけしかいないのか?」「神がなさった最善のことは、地球を創造したことだけなのか?」「生命は星や惑星と非常に共通した要素をもつのか?」といったような疑問を解く鍵を見つけるためにも、火星に生命があるかないかについて何か良い答えを得ようとする努力はとても大切だと思います。

 20年後までに考えられるもう1つのことは、土星や木星について重要なことを発見するということです。2004年は、「カッシーニ」探査機が土星に到着します。そして、土星のまわりを周り、さまざまな観測機器を使って調査するほか、土星の衛星「タイタン」に降下する探査装置もあります。今までにない、画期的な発見があるに違いないと期待しています。さらに、海王星や天王星、冥王星など外惑星に対するミッションがもっと増えるでしょう。また、小惑星、特に地球に近い小惑星にもさまざまなミッションが行われます。

 そして日本は現在、「はやぶさ」という、小惑星に着陸を試みてサンプルを回収して地球に持ち帰るというとても大切なミッションを行っています。これは非常に難しいミッションです。日本は、これまで他の国がやったことのないことを試みようとしています。それはリスクを伴いますが、とても重要なことです。小惑星のように小さな、これまであまり脚光を浴びない天体についても、もっと詳しい情報を得ることが大切だと思います。それらは地球に衝突してくるような軌道にあるかもしれないのですから。また、私たちが深く理解しなければならない、水星などの「近所の惑星」もあります。それらはどこから来たのか? どのようにして今ある場所に辿り着いたのか? 軌道についてももっと理解する必要があります。今後の20年間は、ますます惑星探査が活発になるものと期待しています。


[ インタビュー収録:2003.10.1 ]

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