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宇宙をドラマ的に伝えてほしい

Q. JAXAではさまざまな地球観測衛星を打ち上げています。環境問題の解決に向けて、宇宙をどのように利用してほしいと思われますか?

陸域観測技術衛星「だいち」
陸域観測技術衛星「だいち」

宇宙に太陽光パネルを浮かせて代替エネルギーを作るといった技術的な利用もあると思いますが、私は、宇宙開発を通して、皆の考えや感情、感覚といった内面を変えていくというのも大事だと思います。例えば、宇宙というのはこんなに大きくて、偶然が積み重なって出来ているものなんだということを伝えたり、私たちは大きな宇宙の流れの中でささやかに生かせてもらっているというのを伝える。あるいは「はやぶさ」の帰還はどれほど難しかったかを伝える。そういうことにより皆の意識が変わっていくと思います。
さらに、宇宙という外の世界から、私たちを客観的に見るということも大切だと思います。自分だけの狭い視点で見ていると、変化や間違いに気づかないことがありますからね。『イシュマエル』(ダニエル・クイン著)という環境問題の原点となるような本がありますが、この内容は、ゴリラと人間が対話をし、ゴリラの視点から地球の環境変化を見るというものです。その中で、ゴリラが、「人間だけが地球の食物連鎖の流れから外れた。また津波に対して堤防を作るというように、自分を守る技術で、ともかく死ななくなった」と言うんですね。そして、それっていいのかい?と人間に問いかけます。そのような視点が、宇宙からあればいいのかなという気がします。

Q. JAXAにどのようなことを期待しますか?

私は種子島宇宙センターを見学したことがありますが、こんなスゴイ施設があるのかと驚きました。また、陸域観測技術衛星「だいち」が撮った地球の画像を見て素晴らしいと思いました。JAXAには、このようなコンテンツが沢山あると思いますが、それらを映像によってうまく見せる工夫をしてほしいと思います。科学ばかりではなく、ドラマ的に伝えてほしいんです。多くの苦難を乗り越えて頑張ったというものではなく、宇宙の中で人間が生きているということを感じさせるような情緒あるものがいいですね。音楽をつけてもいいですし、詩的な映像をぜひ作ってほしいと思います。

環境教育の良いシステムを作りたい

Q. 今後の環境活動についての展望をお聞かせください。

日本サッカー協会の環境プロジェクトをある程度軌道に乗せることと、スポーツや野外活動を通じて人間に生きる力をつける、環境教育を行うことです。そのほか、学生たちの環境活動を手助けしたいと思います。例えば、首都圏の学生や社会人が中心となって、スポーツを楽しむことで社会問題の解決につなげる「グローブプロジェクト」というのがあります。フットサル大会の収益金でカンボジアの地雷を除去するなど、素晴らしい活動をしています。このような若者の環境活動をバックアップしていければと思っています。
ただ、私の原点はサッカーです。サッカーでの実績があったからこそ、私の環境への活動が認められていますので、サッカーを置いて、全面的に環境活動を行うことはないと思います。できれば、活動の半分くらいは環境に関わっていたいという気持ちでいます。 Q. 本業のサッカーでは、今後、どのような活動をされるのでしょうか? サッカーの方はまだどうなるか分かりません。ワールドカップ後に、Jリーグの3クラブと中東から代表監督のオファーをいただきましたが、お断りしました。映画「カサブランカ」の中で「昨日?そんな昔のことは忘れたしまった。明日?そんな先のことは分からない」という台詞がありますが、それと同じで、この先どうなるか分からないんですよ。1つ言えるのは、今まで通り、安定した場所にとどまる生活はしないと思います。次のステージへと進み、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。

Q. 今の目標は何でしょうか?

任意団体にするのか社団法人にするのか、どういう形になるか分かりませんが、今年の春頃までに環境人間教育を行うための団体を立ち上げるのが、大きな目標です。そして1年間、活動実績を残して、どういう方向へ進むのがよいかを見極めたいと思います。教育というのは結果が出るまでに時間がかかりますから、安易なことは出来ません。だからこそじっくり考えて、良いシステムを作っていきたいと思っています。

夢や目標をあきらめないで

Q. 最後に子どもたちへのメッセージをお願いします。

どんな小さいことでもよいので、夢や目標を持つことが大事だと思います。例えばサッカーが上手くなるためにはどうすればいいかと聞かれたとき、私は3つのことを言います。1つ目は、サッカーを好きになること。2つ目は、夢や目標を持つこと。3つ目は、コーチに言われたことだけではなく自分で考えること。その中で私が最も大事だと思うのは、やはり、夢や目標を持ってチャレンジすることです。子どもたちの生きる力が落ちているというのも、簡単にあきらめたり逃げたりしても、誰かに助けてもらえるという甘えがあるからだと思いますから、あきらめずに夢や目標を目指してほしいと思います。
たとえ目標が達成できなくても、チャレンジすると必ず得るものがあるんですよ。私も、ワールドカップ南アフリカ大会でベスト4に入るという目標は達成できませんでしたが、夢は叶いました。「こんなチームを作ってみたい」「こんな闘いをさせてみたい」という思いを、代表チームが叶えてくれたのです。
夢や目標に向かって何かをやろうとしたら、「そんなことは無理に決まっている」「そんなことやってどうすんだよ」と耳元で囁く人が必ずいます。そういう人をドリームキラーと言いますが、そんなのに絶対負けないで頑張ってほしいです。目標を持ち、それに向かって踏み出さない限り、何も起らないですからね。ぜひ、夢を作る人になってもらいたいと思います。

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