スペース・アドベンチャーズ社とアルマジロ・エアロスペース社が開発中の宇宙船(提供:Armadillo Aerospace)
これまでは実現が難しかった商業宇宙飛行はまもなく始まると思います。すでに、高度100kmまで一気に上昇して、数分間の無重力体験をして地上に降りてくる弾道飛行に関しては、いくつかの会社がサービスを始めようとしています。私が副会長を務めるスペース・アドベンチャーズ社も、アルマジロ・エアロスペース社とパートナーを組んで宇宙船を開発中で、1年以内に打ち上げ実験をしたいと考えています。また、アメリカのスペースX社は、2010年12月に無人宇宙船「ドラゴン」を打ち上げ、地球の軌道を周回させた後、大気圏に再突入して回収することに成功しています。スペースX社は、スペースシャトル退役後、ISSへの物資輸送を担当する民間初の宇宙船として、NASAと契約もしています。
今年はガガーリンの宇宙初飛行から50周年を迎えます。人類が宇宙という壮大なフロンティアへの第一歩を踏み出してから半世紀が経つのです。クリストファー・コロンブスによる航海以来、多くの商船や個人の船が海を渡り始めるまで50年かかりましたが、宇宙の分野でも同じように、初飛行から半世紀が経つ今、ようやく宇宙で商業活動が行われるようになりました。宇宙が政府機関のみの活動場所で宇宙飛行が稀であった時代から、国や民間企業、そして個人が宇宙へと頻繁に行ける、そんな時代へと移行しつつあるのです。そういう意味で、今はとても面白い時代だと思います。
現在、商業宇宙船を開発している企業の顧客は、ほとんどが国の宇宙機関です。そのため、企業は国の予算や政策によって大きな影響を受けることがあり、また予算も限られています。とはいえ民間に有人宇宙飛行を任せることは、政府機関にとってもとても有効だと思います。なぜなら1桁以上のコスト削減ができ、それによって浮いたお金を国家主導のさらに高度な宇宙活動や深宇宙探査の費用に使うことができるからです。
しかし、今後民間宇宙企業を活性化するためには、政府機関の宇宙計画以外にも民間の利用があるかどうかが課題となってきます。何百人、何千人という一般の人が宇宙へ飛び立つようになれること、これこそが本当に求められていることだと思います。今後5年くらい経てば、民間宇宙旅行の実現性がもっと明確に見えてくると私は期待しています。
国際宇宙ステーションにて(提供:NASA/Richard Garriott)
人生観がとても変わりました。宇宙へ行く前から自分のことを環境保護主義者だと言っていましたし、私のほとんどの慈善事業も環境保護に関するものです。しかし、私自身のライフスタイルと私がそこで主張することは一致していませんでした。例えば、自宅ではかなり大量の電気を浪費していましたし、とても燃費の悪い車にも乗っていました。リサイクルもゴミを減らす努力もしていませんでした。でも宇宙へ行ってからは、環境に対する責任や、私個人の生活だけでなく私が投資者やビジネスマンとして関わる仕事や活動において自分は影響を与える側の人間であるということを、強く感じるようになりました。自分のためだけでなく、人類全体にとってとても大切だと思えることを支援するようなったと思います。
もちろんです。でも、宇宙へ行くために使えるだけのお金はすべて使い果たしてしまったので、再び地球軌道へ行くには、費用が劇的に下がらない限り無理だと思います。ただ、弾道飛行によって準軌道へ行くチャンスはあると思います。この飛行では数分間の宇宙を体験できますが、これを実現するために、私たちスペース・アドベンチャーズ社も宇宙船を開発しています。
宇宙船が開発できれば、多くの乗客をロケットで宇宙へ連れて行って戻ってくるだけでなく、スペースダイビングのような珍しい体験も可能になると考えています。これは、宇宙服とパラシュートを着用して、ロケットで宇宙へ行き、ロケットから外へ出て地球大気圏へ再突入するというものです。私はぜひこのスペースダイビングにも挑戦したいと思っています。
もちろんです。人類の1パーセントあるいは2パーセントがもし私のように宇宙へ行くことができたら、きっと世界はより良い環境になると思います。それに、宇宙へ行く機会を与えられた人は、その人にとっても、また世界にとっても良い方向へ変化すると思います。
私個人の目標とビジネスの目標と2つあります。私個人の目標は、先ほどお話したスペースダイビングを行うことです。それを実現するために、一度に2人乗せて宇宙を往復できるロケットの開発に取り組んでいます。また、高度100kmから地球大気圏へ安全に再突入できるための宇宙服の材料を開発するための出資も行っています。
ビジネス面での目標は、宇宙飛行の価格を下げることです。現在、ソユーズは1人当たり5000万ドル(約40億円)で、スペースシャトルは数億ドルです。私たちはこの価格を、100万〜500万ドル(約8000万〜4億円)に下げることができると信じています。宇宙に行くための費用が下がらなければ、本当の意味での宇宙ビジネスは発展しません。数年後に宇宙旅行ができるようになっても、今の値段では一握りの人しか行くことができません。しかし、現在の飛行機並みに宇宙に行く費用が安くなれば、さまざまな人が宇宙に行って、いろんなビジネスが始まると思います。そうなれば宇宙が仕事場になって、そこで生活費を稼ぐような人も誕生するでしょう。私は、早くそのような時代が訪れることを夢見て、これからも低価格で宇宙へ行ける宇宙船の開発に取り組んで行きたいと思います。