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JAXAの宇宙教育活動〜心の教育を子どもたちへ〜 科学への夢・興味を持ち続けてもらうために ディスカバリーキッズ科学実験館〜コズミックカレッジ〜 企画担当 大塚浩一

「宇宙開発への夢」「宇宙と地球の環境」をテーマに

Q. ディスカバリーチャンネルでは、JAXAの宇宙教育センターと連携してどのような取り組みを行っているのでしょうか?

カサ袋ロケットの製作
カサ袋ロケットの製作


カサ袋ロケットを飛ばす子供たち
カサ袋ロケットを飛ばす子供たち

昨年からJAXAと共催で「ディスカバリーキッズ科学実験館〜コズミックカレッジ〜」を開催しています。対象は小学3〜6年生までのお子様とその保護者で、宇宙や科学に関する映像や実験などを通じて、親子に科学の楽しさを体験していただくイベントです。昨年は全国7大都市で開催し、約1000組2000名の親子が参加しました。
昨年行ったイベントのテーマは「宇宙開発への夢」と「宇宙と地球の環境」で、内容が大きく3つに分かれています。1つ目は、宇宙へ行く手段であるロケット。2つ目は、国際宇宙ステーションでの長期滞在の先にある月面基地など、月への挑戦。3つ目は、地球の環境です。
例えば、ロケットに関してはまず、アポロ計画、東大のペンシルロケット開発から、昨年の宇宙ステーション補給機(HTV)を搭載したH-IIBロケット試験機打ち上げ成功までの歴史を映像で見てもらって振り返ります。その後で実際にカサ袋を使ってロケットを作ってもらいます。雨の日にデパートの入り口などに置いてある、濡れた傘を入れるビニールのカサ袋がありますが、まずこれを膨らませます。それに尾翼をくっつけてロケットを完成し、15メートル先に用意した太陽系の惑星の的を目がけて飛ばしてもらうという実験を、親子で協力しながらやっていただきます。そして、その後に、JAXAの先生がロケットエンジンの原理をイラストで説明して、今度は、酸素と水素を混ぜた燃焼実験、さらにはペットボトルロケットの飛行実験を実際に行います。このように、映像と実験と講義が一体となったプログラムです。また、子どもが楽しく参加できるように、クイズ形式で進めることもあります。
飽きっぽい子どもを対象に、2時間という長時間の科学イベントを企画するのは、ある意味、とてもチャレンジングなことではありましたが、結果的には大変評判が良く、定員の2倍以上の応募があった都市もありました。JAXAのボランティア・スタッフの協力や教材開発の知識、そして、私たちの映像制作やイベント運営のノウハウが一緒になったからこそ成功したのだと思います。また、会場や研究者の方による講義や実験を提供してくださった大学などの貢献も大きいと思います。昨年は初めての試みということもあり全国7大都市での開催でしたが、2010年以降はぜひ47都道府県にイベントを広げていき、さらに多くの方に参加していただきたいと思います。

JAXAとの連携で科学の現場感を伝える

Q. コズミックカレッジを行おうと思ったきっかけは何でしょうか?

科学実験に夢中な子ども
科学実験に夢中な子ども

ディスカバリーチャンネルでは、科学に関するドキュメンタリー番組を数多く放送していますので、企業として存続していくためには、継続して科学のフアンを増やさなければなりません。また有料チャンネルということもあり、子どもだけでなく、ご両親にも科学に興味を持っていただくことが大事です。そこで、2006年から、親子で体験する科学実験イベントを行い、みなさまからもご好評をいただきました。しかし実験だけですと、「科学って面白いね」というところで終わってしまうんです。私たちは、面白いと思うだけでなく、科学に対する具体的な夢や理解を深めてもらいたいと思いました。また、メッセージ性や、現在科学の現場で何が起きているかという、タイムリー性も重視したいと思いました。
一方で、昨年は、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で宇宙を観察してから400年目の節目を記念した、「世界天文年」ということもあり、宇宙に注目が集まる年でした。そのため、宇宙をテーマに新しい科学イベントを行いたいと考えたのです。宇宙というと、アメリカのNASAを思い浮かべる方が多いかと思いますが、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟をはじめ、日本の宇宙技術は世界的にも評価されています。ところが、残念なことに、そのことを知らない方が結構多いのです。みなさんに宇宙をより身近に感じてもらうためには、日本が何をやっていて、今どこまで進んでいるかを知ってもらうことが大切です。そのため日本の宇宙活動を担うJAXAと共同でプログラムをつくることに意義があると思いました。

Q. 民間の企業が社会教育を支援する意義は何だと思われますか?

ワークショップ形式で科学を楽しむ参加者
ワークショップ形式で科学を楽しむ参加者

先ほど申し上げたように、科学に興味を持ってもらうことは、科学番組を提供する私たちの発展にもつながると考えています。企業イメージを良くするために、自分たちの事業とはまったく異なる形で社会貢献をする企業もありますが、私たちの場合は利害が一致していますので、ある意味、コズミックカレッジのような形で社会貢献することは自然の流れという感じがします。
また、最近の環境問題を考えるときに、例えば、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」などが地球の温暖化予測の精度向上に役立つというように、科学技術の役割がとても重要になっています。これからは科学技術こそが地球を、そして人間を救えると言えるかもしれません。ですから、まず大人が科学の重要性を理解しなければならないし、次に子どもたちがそれを理解できる環境をつくる必要があると思います。
そして、科学への関心が一過性のもので終わらないよう、継続して科学に興味を持ってもらえる環境をつくらなければなりません。しかし、それを学校の先生だけに求めることはできないと思います。なぜなら、学校の先生はとても忙しく、国が決めたカリキュラムを終わらせなければならないからです。例えば、小学校の理科の時間で星を教えて、子どもが宇宙に興味を持ったとしても、子どもの宇宙への好奇心にとことん付き合う暇はなく、次々とたくさんのことを教えなければならないといった具合です。学校の授業だけで子どもが科学に興味を持ち続けるのは難しい状況だと思います。ですから私たちが毎日放送している番組を通じて、家庭で科学の話題で盛り上ったり、今回のような教育・啓蒙活動を通じて興味を持っていただくことが大切だと考えています。それは、科学に関係のある企業が積極的に取り組まなくてはならないことだと思います。

写真提供:2010 Discovery Communications Inc.

  
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