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JAXAの宇宙教育活動〜心の教育を子どもたちへ〜 夢をもって学べる環境をつくりたい 千代田区立九段中等教育学校 主任教諭 安川礼子

宇宙からの目で地球環境を考える

Q. 安川先生のご専門は何でしょうか?

JAXA職員が講師を務める総合的な学習の時間
JAXA職員が講師を務める総合的な学習の時間


九段コズミックでカメラを作る様子
九段コズミックでカメラを作る様子

私は理科の教員で、専門は化学です。千代田区立九段中等教育学校は中高一貫ですので、中学生と高校生に理科と化学を教えています。また、総合的な学習の時間、「九段自立プラン」も担当しています。総合的な学習の時間とは、子どもたちが自ら学び、考える力を身につけさせる授業で、学校ごとに独自のプログラムが組まれています。本校の総合的な学習の時間、「九段自立プラン」では、キャリア教育という視点から、「環境」「福祉」「文化」「国際理解」「奉仕」「卒業研究」という6項目の課題を設定し、さまざまな体験や社会とのかかわりを通して、自分の可能性を発見し、将来の生き方を考える資質や能力を育てます。

Q. JAXA宇宙教育センターと、どのような連携をとっているのでしょうか?

「環境」をテーマにする総合的な学習の時間では、宇宙からの視点で地球の環境を学び、さらに、自分たちの学校がある千代田区の環境を考えます。この授業のカリキュラムづくりをする際に、宇宙教育センターの方にご協力いただいています。毎年、12〜13回の授業を行いますが、まず初めに年間計画を一緒に考えて、その後も何度も打ち合わせさせていただきますので、宇宙教育センターの方と一緒に授業を作っているという感じです。
このようなJAXAとの連携は3年程前から行っていますが、JAXAの方に講師に来ていただいたり、施設を見学させていただいたりなど、授業の内容はとても充実しています。実際に宇宙の現場で働く人と接することで、子どもたちは、環境のことだけでなく、日本の宇宙開発や人間の技術開発力の素晴らしさを学んでいます。
また、JAXAと連携をして、主に小学5〜6年生のお子さんを対象に行う体験型の科学教室、「九段コズミック」を開催しています。年に5回、土曜日に行っていますが、毎回たくさんの応募があり、ご好評いただいています。

宇宙は子どものやる気を喚起する

Q. 安川先生が宇宙教育をしたいと思われたきっかけは何でしょうか?

学校がある千代田区の環境を考える授業(支援:三菱地所株式会社)
学校がある千代田区の環境を考える授業(支援:三菱地所株式会社)


提案をまとめた壁新聞
提案をまとめた壁新聞

東京都国分寺市にある「ひかりプラザ」で、宇宙教育を取り入れた実験教室が行われているという話を伺ったのが、最初のきっかけです。それで、自分の学校の生徒にもぜひ体験させてみたいと思い、私からJAXAに連絡させていただきました。その時に、JAXAの方に伺ったのが鹿児島の宇宙教育の例で、完全循環型の生活をするというものでした。例えば、ゴミが出ない料理の作り方を実践する際に、子どもたちが、焼き鳥の串をゴボウにしたらどうかと提案した話を聞いて、とても素晴らしいと思ったのです。
教育で最も大事なのは、子どもたちに夢を持たせてあげること、自分たちにもできるんだという意欲、やる気を持たせてあげることです。「宇宙教育」にはそれができると思いました。宇宙は子どものやる気を喚起すると思います。

Q. この3年間、実際に宇宙教育を取り入れてきて、ご自身の感想、生徒や保護者の反応はいかがでしょうか?

環境問題を実践的に考えた場合、例えば、ゴミをできるだけ少なくするとか、電気を節約するといった提案をする子どもたちが多いと思います。このような身近な取り組みは重要ですが、少し規模が小さい気がします。3年前はこのような身近な提案をする生徒がほとんどでした。しかし、宇宙教育を取り入れ、宇宙での暮らし方や宇宙技術の開発などの話を聞いた生徒は、とても夢のある提案をするようになりました。例えば、中学1年生の生徒が環境を配慮した生活を考えて、生ゴミや人間の排泄物を利用した「食材製造機」を提案するといった感じです。まさに、内容が激変したという感じで、宇宙教育を取り入れる有効性を実感しました。学校の文化祭や環境をテーマにしたイベントなどで、生徒が提案を発表する機会がありますが、「子どもがこのような提案をするなんてスゴイ」と言って、保護者の方はとても驚いていらっしゃいます。
またこれらの提案は、4名1組の班ごとに発表されますが、中学1年生ですと、話し合いをする練習からスタートします。そして、最初はうまく話し合いをすることができなかった生徒が、回を重ねていくうちに、班のみんなの考えをまとめて、疑問などを直接講師の方に質問するようになります。こういった質疑応答も、JAXAとの連携で、授業中にすぐできますので、どんどん質問が出て、とても活気があります。現場の生の情報をすぐに得ることができるというのも、子どもたちに大きな変化を与えていると思います。

写真提供:千代田区立九段中等教育学校

  
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