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JAXAの宇宙教育活動〜心の教育を子どもたちへ〜

気持ちの芽生えを培う宇宙教育

Q. 宇宙教育の魅力は何だと思われますか?

日本初のロケット「ペンシルロケット」の模型を手に持つ生徒
日本初のロケット「ペンシルロケット」の模型を手に持つ生徒


環境展示会「エコプロダクツ」での発表
環境展示会「エコプロダクツ」での発表

子どもたちの多くは、宇宙開発はアメリカやロシアがやっていると思っていたようですが、宇宙を教育に取り入れたことによって、日本もいろいろな宇宙開発をしていること、また、その技術が私たちの生活にどう活用されていくかを学びました。そして、宇宙との距離が近くなり、子どもたちは、自分もロケットを開発できるかもしれないとか、宇宙飛行士になれるかもしれないといった、いろいろな可能性を考えるようになりました。その姿を近くで見ると、宇宙教育を取り入れて本当によかったと思います。
最近は、理科離れと言われていますが、教育現場にいるとそうは感じません。子どもたちは実験が非常に好きですし、基本的に理科がとても好きだと思います。ただ苦手なのは、実験の後のレポート作成です。結果をまとめて、自分で考察して、レポートにするのが苦手な子どもが多いと思いますが、それは昔からみんな苦手だったと思います。そのような、子どもが苦手な部分を相談にのってあげて、その中で自分の考えを構築できるよう導くことが重要だと思います。また、子どもたちが、科学技術など工学系のことにも夢や憧れを持てるような環境を作ることで、将来、自分がその世界で頑張るんだと思うようになるかもしれません。やはり、私たち理科の教師は、将来の科学技術者を自分たちの手で育てなければなりませんので、そういう意味でも、宇宙教育というのは、子どもの心に変化を与えることができる良い教材だと思います。

Q. 宇宙教育を通して、先生が子どもに教えたいことは何ですか?

突き詰めて言うと、やはり、「自分の住んでいる地球を大事にしましょう」ということになると思います。これには、自分の今を大事にしましょう、周りの人や環境も大事にしましょうという意味も含んでいます。宇宙というのは非常に過酷な環境ですが、その中で、地球は偶然に誕生しました。その美しい星を、地球に住む私たちが、もっと大事にしようと思ってほしいのです。子どもたちには、「将来、自分たちが責任をもって生きていかなければならないんだ」という使命感をもって生きていってほしいと思います。
また、宇宙の良いところは、地球を外から見る視点を持てることです。大きなスケールで物を見るというのはとても大切なことで、これができると、人間関係を築く上でも、広い視野と洞察力をもって人と接することができると思います。このような、「気持ちの芽」を育てるという道徳的な面でも、宇宙教育は効果的だと思います。

宇宙教育の輪が全国に広がるために

Q. 今後は宇宙教育をどのように展開していきたいですか?

宇宙教育センターの講師に質問をする生徒
宇宙教育センターの講師に質問をする生徒

本校では3年前から総合的な学習の時間に宇宙教育を取り入れてきました。中学1年生の時から3年間宇宙教育を受けてきた子どもが、この春から高校課程に進みます。高校課程になると、自分でテーマを決めて研究し、卒業の年に論文を提出するという課題が出されます。この研究で、宇宙開発をテーマとして選ぶ子どもがいた場合に、その生徒たちのために新たなアドバイスや研究支援のようなことを、JAXAにお願いできたらいいなと思っています。そうすれば、キャリア教育として中学1年生から学んできたことが、将来の職業につながるかもしれないと期待しています。
子どもたちが将来を決めるきっかけは、日々その瞬間にあります。誰と会い、どんな話をするか、どのような教育を受けるかで子どもたちの将来が変わってしまうのです。ほんの少しのきっかけで子どもの進路は変わります。チャンスを与えられた子どもがその道に進むかどうかは本人の自由ですが、それを与えるかどうかは私たち教員の責任です。やはり、学校の教育というのは人材開発だと思いますので、そのためにも、子どもたちにはできるだけ多くのことを体験させてあげたいと思います。
子どもたちが将来これをやりたい、ああなりたいというように夢を持って、それを実現していく姿を見るのが、私たち教師の夢です。もし、宇宙教育を受けた子どもたちが、将来ロケットを開発するようになったら嬉しいですよね。子どもたちが将来に期待を持ちながら勉強ができ、自分の夢をかなえていけるような環境を作ることができるよう、宇宙教育をはじめとした新たな試みにチャレンジしていければと思います。

Q. 今後、宇宙教育センターに期待することは何でしょうか?

JAXAとの連携校は年々増えているようですが、全国的に見るとまだまだなので、もっと認知度が上がるようになればいいなと思います。そのためにも、どんどん情報発信をしてほしいですし、先生どうしで情報交換できるようなブログのようなものがあったらいいなと思います。
JAXAのホームページにはいろいろな情報が出ていますが、日々の業務に追われると、なかなか頻繁にチェックできません。そのため、後からこんなことがあったんだと分かることが多いですね。また、教材として使える写真や映像がホームページで数多く公開されていますが、ゆっくり選んでいる時間がなく、後からこの素材を使えばよかったと思うこともあります。本当は自分たちで情報を得る努力をしなければならないのは分かっていますが、この題材にはこの教材が使えますとか、こんなイベントがあるといった情報が、ホームページとは別の手段で自動的に届いたら、もっと参加できる機会が増えると思います。また、それらの情報を教師どうしで展開することによって、全国規模で宇宙教育が広がると期待しています。

写真提供:千代田区立九段中等教育学校

安川礼子(やすかわれいこ)

千代田区立九段中等教育学校 主任教諭 
鹿児島大学理学部化学科卒業。大学卒業後に民間企業で化学関連の研究を行う。その後、私立高校の講師を経て、東京都の教員となる。2007年よりコズミックカレッジの講師を務めるほか、国立科学博物館や東京電力主催の面白科学倶楽部などで、小中学生を対象とした実験教室の講師を務める。

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