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日本人初めての宇宙長期滞在を達成して 〜若田宇宙飛行士による国際宇宙ステーション長期滞在〜
大変誇りに思える若田飛行士とのミッション NASA宇宙飛行士 国際宇宙ステーション・コマンダー(第18次長期滞在クルー)マイケル・フィンク(E. Michael Fincke)

国際協力の素晴らしさを実感

Q. 2004年に約6ヵ月間、2008年から2009年にかけて約6ヵ月間、国際宇宙ステーションに滞在されたそうですが、これらのミッションで特に印象に残っていることは何でしょうか?

国際宇宙ステーション(ISS)(提供:NASA)
国際宇宙ステーション(ISS)(提供:NASA)

私は国際宇宙ステーション(ISS)に合計1年間も滞在することができ、本当に運が良かったと思います。しかもISSは、世界中の人達が集まって組み立てられた、人類史上最大の宇宙建造物です。毎日、窓からのぞくと眼下に地球が見えましたが、これはとても素晴らしい体験でした。また、日本人初の長期滞在に挑む若田さんがISSに到着してからは、非常に先端的なことを皆で成し遂げることができ、大変誇りに思っています。若田さんたちと一緒に太陽電池パネルの取り付けを行いましたが、ISSのような素晴らしいものを組み立てるために、「皆が一丸となって一所懸命に取り組んでいるのだ」ということを強く感じました。

Q. ISSコマンダーの役割について教えて下さい。

コマンダー(船長)は、クルーの安全管理責任者です。緊急事態の際には、クルー全員の安全確保が任務となります。それから、可能な限りベストなミッションを遂行するため、クルーと地上が一緒になっていい作業ができるよう手助けします。コマンダーになるためには、宇宙の経験を多く積んでいなければなりません。私はこれまで何度か宇宙ステーションでの滞在を経験した後、今回のミッションでコマンダーになることができました。

Q. ISSに長期滞在するにあたって心がけていること、あるいは重要なことは何だと思いますか?

ISSから見た地球(提供:NASA)
ISSから見た地球(提供:NASA)

スペースシャトルでの2週間の短期ミッションの場合、山のようにある作業をこなすため、毎日かなり必死に働き続けなくてはなりませんが、ISSに数ヵ月滞在するミッションになると、そんなに長い間、休みなしで働き続けていたら効率的な仕事はできません。ですから、長期ミッションにおいて一番大切なことは、無理をせずに、きちんと毎日の任務をこなし、週末にはちゃんと休息を取ることです。そして窓の外に目をやり、地球の眺めを楽しむことです。そのようにリラックスして休んだ後は、仕事の効率も良くなります。
また、家族とのコミュニケーションもとても大切です。私は毎日、アメリカ・テキサス州にいる家族と話をしていました。素晴らしい家族をお持ちの若田さんも、ご家族と連絡をとっていましたね。短期ミッションでは忙しすぎてあまり時間がとれませんが、長期ミッションでは家族とのコミュニケーションがとても大切だと思います。

Q. これまでどのような宇宙実験に参加されてきましたか?それらは地上での生活にどう貢献していると思いますか?

欧州実験棟「コロンバス」で作業するフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)
欧州実験棟「コロンバス」で作業するフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)

ISSの素晴らしいところは、アメリカ人でありながら、日本を含めいろいろな国の実験に参加できることです。例えば、東京大学との重要な研究で、無重力環境における細胞と遺伝子の変化に関するものがありますし、アメリカの実験では、火を使った火炎実験を行いました。また、人体における生理学的実験もたくさん行いました。今回のミッションのクルーはとても作業効率がよく、若田さんの活躍もあって私たち第18次長期滞在クルーは、当初の予定より2倍の科学実験を行うことができました。
それらの実験は、私たちの生活にすぐ貢献できるものもあれば、貢献できるまで長い時間を要するものもあります。例えば、明日すぐには役立たない発見でも、10年後に、ほかの発見と合わさることで大発見につながるかもしれません。無重力の宇宙環境を学ぶことで、地球でみられる現象をより理解することができます。その結果、テクノロジーはますます発展し、地球の私たちの生活がより良いものとなっていくと思います。

とても快適な「きぼう」日本実験棟

Q. 若田宇宙飛行士が搭乗したSTS-119の打ち上げは1ヵ月遅れました。ISSで到着を待っている間の心境はいかがでしたか?

私たちは、若田さんの到着をとても楽しみにしていました。また、到着が遅れたことにより、2008年11月からISSに滞在していたサンディ・マグナス宇宙飛行士の地球帰還も1ヵ月延びてしまいました。若田さんに早くお会いしたかったですし、マグナスさんも帰還しなくてはいけない時期になっていましたから、ちょっとがっかりましたね。とはいっても、諸事情により、スペースシャトルの打ち上げが予定より遅れることがあるのは皆よく理解していますから、辛抱強く到着を待っていました。そんな中、ようやく若田さんが乗ったSTS-119が到着したのです。そして私は、彼が到着してから約1ヵ月後に、ロシアのソユーズ宇宙船で帰還しました。

Q. ISSで若田宇宙飛行士を迎えたとき、どんなお気持ちでしたか?

ISSにて、若田宇宙飛行士とフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)
ISSにて、若田宇宙飛行士とフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)

若田さんをISSで迎えたときは、とても嬉しかったです。私がまだ宇宙飛行士になる前のアメリカ空軍時代にNASAを訪れた際、若田さんと会って名刺をいただきました。17年ほど前のことですからずいぶん昔の話ですが、私はその名刺をいまでも持っていますよ。その後1996年に私は宇宙飛行士候補者に選定されました。若田さんは本当に素晴らしい宇宙飛行士で、先輩として大変尊敬していました。私と若田さんは以前からの知り合いということもあり、彼と一緒にISSに滞在できることが分かったときは本当に嬉しかったです。宇宙での1ヵ月は長いですから、やはり気心知れた仲間と一緒だと安心します。

Q. ISS長期滞在の先輩として、若田宇宙飛行士の宇宙での活動をどうご覧になりましたか?

若田さんは、物事に対する態度や考え方が大変素晴らしい人です。真のヒーローだと思います。仕事にも本当に一所懸命とり組みます。時々ISSで若田さんと一緒に過ごす時間があり、食事をしながらその日の出来事について話すこともありましたが、若田さんは倫理観を持って仕事をし、能率良く働いていると思いました。とても頭脳明晰な人だと思います。若田さんは宇宙ステーションで本当に活躍してくれました。

Q. 「きぼう」日本実験棟についてはどのような印象をお持ちですか?

「きぼう」のエアロック内で作業するフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)
「きぼう」のエアロック内で作業するフィンク宇宙飛行士(提供:NASA)

とても素晴らしいと思います。「きぼう」はISSの中で最も大きいと同時に、一番静かなモジュールです。「きぼう」の中での仕事や暮らしは、まるで夢の中にでもいるような心地よさがありました。私はミッション中、毎日「きぼう」にいて、そこでの実験やスタッフのケアに最善を尽くしました。それが ISSコマンダーとしての私の任務だったのですが、「きぼう」の中で働けることは喜びでもありました。

  
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