赤外線天文衛星「あかり」がとらえた1999JU3(画面中央の黄色の丸枠内)
1999JU3は、C型の小惑星だからです。小惑星はスペクトルの特徴によっていくつかの型に分類されると言いましたが、最も多いのがC型とS型です。C型は炭素系の物質を主成分とするもので、小惑星全体の約75%を占めるといわれています。一方、S型はケイ素を主成分としていて、全体の2割くらいを占めるといわれ、「はやぶさ」が行ったイトカワはこのS型です。この2つの型をきちんと押さえておかないと、小惑星全体のことを理解できないのです。
また、S型の小惑星は火星と木星の間の小惑星帯の内側に多く、地球に近づくものもいくつかあるのに対して、C型は小惑星帯の外側にあり、地球に接近するような軌道を持つ小惑星はあまりありません。ところが、1999JU3は、例外的に地球の軌道に接近するのです。その軌道は、「はやぶさ2」のような小さな探査機でも往復できるものですので、この小惑星が選ばれました。
もともと工学試験が目的の「はやぶさ」は、技術を確立するのが第一の目的でした。しかし「はやぶさ2」では、技術だけでなく科学面にも重点を置いています。そのため、どの小惑星に行くかがとても重要です。前回はS型の小惑星に行ったので、次はC型に行って、異なる種類の小惑星を探査することにしました。これまで、地上から1999JU3の観測をして準備を進めてきましたが、早く、この小惑星を間近から見てみたいです。
小惑星探査機「はやぶさ2」とミネルバ(提供:池下章裕)
「はやぶさ」はもともと工学試験のための探査機で、とてもチャレンジングなミッションでした。成功したものと、失敗したものがありますが、基本的には「はやぶさ」で試みたさまざまな技術を「はやぶさ2」に引き継ぎます。
まずは、イオンエンジンです。「はやぶさ」のイオンエンジンは長期間使っているうちに劣化のため調子がわるくなってしまったものの、世界初の惑星間往復飛行を成功させました。イオンエンジンの長寿命化を図って、電気推進の技術をより向上させたいと思います。
次に、小惑星の表面に着陸して、サンプルを採取して上昇するタッチダウンのときの航法誘導技術です。「はやぶさ」で燃料漏れが起きたのは、タッチダウンがうまくいかなかったことに起因していると考えられますので、今度は不時着を絶対に避けなければなりません。そのために、小惑星近傍での運用方法や航法誘導のやり方を工夫します。
そして、「ミネルバ」の再挑戦です。「ミネルバ」は、日本で初めての惑星探査ローバーですが、残念ながら、「はやぶさ」の際はイトカワへの着地に失敗してしまいました。今度こそ成功させたいと思います。
そのほか、姿勢制御やアンテナ、サンプル採取方法などにも改良を加える予定ですが、ほとんどの機能は「はやぶさ」と基本的に同じです。「はやぶさ」で獲得した技術を成熟したものに仕上げ、惑星間往復ミッションを確実に行うことが、「はやぶさ2」の目標です。