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オーストラリアのノウハウを使って山火事情報を提供  オーストラリア連邦科学・産業研究機構(CSIRO)  地球観測センター 宇宙科学・応用室長  アレキサンダー・ヘルド(Dr. Alexander Held)
アジア太平洋地域で深刻な被害をもたらしている自然災害と言えば、暴風雨、地震、津波を含む洪水の順で、次に来るのが山火事と旱魃(かんばつ)だと思います。特に乾季に発生する山火事は大気汚染という点でも、とても深刻な問題を引き起こしています。人口がわずか2000万人のオーストラリアでさえ、山火事による損害は、毎年7700万ドル規模と推定されています。ですからアジア太平洋地域など、もっと広い範囲を考えてみれば、山火事による被害がどれだけ深刻なものか想像できるはずです。

「センチネル・アジア」は近い将来、アジア太平洋地域に災害情報を配信する地域全体のコミュニティ・システムになっていくと思います。このプロジェクトにはとても大きな潜在的可能性が秘められています。山火事だけでなく、衛星によって観測出来る多様な災害情報を発信出来るでしょう。宇宙技術がどれほど貴重で有用なものか、広く人々に知ってもらう上でもすばらしいツールだと言えます。さらに全地球観測システム(GEOSS)計画でも、グローバルな観測システムの一部として大いに期待が持てます。ですから「センチネル・アジア」が、アジア太平洋地域で順調に機能していくことはもちろんですが、グローバルなレベルで実現できるシステムのいい事例となることも、きわめて重要です。

オーストラリアの山火事監視システムも「センチネル」と名づけられています。現在、NASAのTERAとAQUA、2機の衛星を利用しています。いずれもMODISと言う温度を観測できるセンサーが搭載されています。さらに、NOAA(米国立海洋大気庁)の衛星も利用しています。それには、AVHRRという温度測定センサーが搭載されています。これらの温度センサーを使って衛星から山火事を検知し、Webベースの地図生成システムに情報が重ね合わさって配信されていますこれらの処理はすべて自動化されており、迅速に情報提供することが可能です。

オーストラリアの観点から言えば、現行のわが国の山火事監視システム(センチネル・シムテム)が、「センチネル・アジア」の中で中核となるデータ処理機能を提供していければと思います。そしてやがてはもっと多くの情報やサービスを提供したいと思います。つまり山火事だけでなく、洪水や旱魃、その他の災害の監視などです。それらはオーストラリアだけでなく、地域全体にとって重要なものになります。

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