あかつき特設サイト

特集

プロフェッショナル暁

あかつきの設計・開発から打ち上げを経てその後の運用まで、あかつきに携わるスタッフのコラムをお届けします。
今村 剛 / 担当:プロジェクトサイエンティスト・電波掩蔽(RS)
「あかつき」は、カメラだらけの風変わりな探査機です。ミッションを提案した10年前、気象学のために最適化したすばらしいミッションができたと自信を持つ一方で、ここまで思いきってよかったのかしらと少し自問する、緊張の船出でした。そして今、このオンリーワンゆえに「あかつき」の狙いは10年を経ても少しも古びず、してやったりの気分です。
私は「のぞみ」「かぐや」に続いて「あかつき」でも電波掩蔽(えんぺい)を担当しています。探査機と地上局を結ぶ電波で大気を縦に切り、大気の上下方向の構造を調べます。地上局で受信する電波が、探査機が惑星の向こう側に隠れると途切れ、探査機が現れると復活する。日食のようなダイナミックな天文現象に立ち会っているようで、臨場感にしびれます。
種子島に運び込まれた「あかつき」を眺めていたら、背後に金星が、そのはるか向こうに地球が見えて、「あかつき」が体験するはずの想像を絶する孤独に慄然としました。すごいことをしようとしているのだなと改めて感じました。
たくさんの関係者の、支える人たちの、祈りが届きますように。

[2010年5月17日 更新]

阿部 琢美 / 担当:予算管理・庶務担当
1998年に金星探査計画の議論を開始してから12年の歳月が流れました。ミッションの科学目的検討から提案書作成、プロジェクトの承認、各種確認会・レビュー会などなど数多くのイベントを乗り越え、打ち上げを目前に控えた今日を迎えていることに感無量の思いです。
プロジェクトでは予算管理や契約調整、庶務を担当しています。ミッションの成功という最大目標を目指して「あかつき」チームの一員としてプロジェクトに携わってきました。
金星探査機「あかつき」は非常に多くの方々のご支援とご協力により歩んできました。探査機打ち上げから金星周回軌道投入まで、今後も無事に進んでくれる事を祈り、金星から送られてくる未知のデータに大きな期待を寄せています。
プロジェクトチームの、宇宙ファンの皆さんの、その他大勢の人々の夢と希望をのせた「あかつき」が無事金星に到着する日を心待ちにしています。

[2010年5月10日 更新]

奥泉 信克 / 担当:構造系
「あかつき」の構造系を担当し、探査機の主構造と機構系の開発や、ロケットとの機械的なインタフェースの調整などを行ってきました。「あかつき」はJAXA宇宙科学研究所として、初めてH-IIAロケットで打ち上げる惑星探査機です。当初はM-Vロケットで打ち上げる計画だったため、「あかつき」はH-IIAに搭載するペイロードとしてはこれまでになく小型軽量です。そのため、打ち上げの際に探査機に作用する振動環境がこれまでとは違うことがわかりました。対策についてロケット側と協議を重ね、「IKAROS」などを搭載してペイロード全体の重量を増加させることなどにより振動環境を改善していただき、構造設計や振動試験にも万全を期しました。私は並行して「IKAROS」の構造開発にも携わったため、ハードな毎日を過ごすことになりましたが、メーカー、大学およびJAXAの優秀な関係者の御尽力により、開発を完了することができ、大変感謝しています。現在種子島宇宙センターで、「あかつき」がロケットに搭載される様子を見守っています。「あかつき」が打ち上げに耐えてロケットから分離し、太陽電池パドルが展開すれば、構造系としてはひと安心です。その後の航海の無事と探査の成功を願っています。

[2010年5月10日 更新]

大月 祥子 / 担当:1μmカメラ(IR1)・プロジェクトサイト
1μmカメラ(IR1)チームの一員であると同時に、プロジェクトサイト(http://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/)の管理・更新も担当しています。
2001年に金星探査計画PLANET-Cを知り、IR1カメラ開発を担当していた研究室に飛び込みました。学生時代は国内外の大型望遠鏡を使った金星大気地上観測をし、「あかつき」より一足早く赤外線でみた金星を堪能してしまいました。地上から肉眼で見るとただ明るく輝いているようにしか見えませんが、高度4200mの山の上から大型望遠鏡と赤外線観測器を使って金星を観るとそこにはダイナミックな世界が広がっています。遥か遠く離れた地球からもその激しい大気の動きが感じられます。初めは「タイミング良く探査計画があったから」選んだ金星でしたが、いつの間にかVenus=金星に魅せられて研究者の道を選び、2008年にプロジェクト研究員としてJAXAに来てからはIR1の性能評価試験などをしてきました。
来たばかりの頃は機器開発や探査機本体の試験について全く分からず、勉強を兼ねてプロジェクトサイトの管理・更新をすることになりました。他のJAXAのサイトに比べて手作り感があふれているのはゼロからタグ打ちで作ってしまったからです…。見かけはさておき、このプロジェクトサイトの売りは歴史の長さにあります。2003年にプロジェクトサイエンティストの今村先生によって開設され、以来7年にわたって「あかつき」(PLANET-C)とともに歩んで来ました。歴史の長さゆえ、記述の古い部分も残ってしまっているかも知れませんが、そこも含めて楽しんでいただければ幸いです。特に2004年から続くプロジェクトの進捗情報(2008年のリニューアル時に「PLANET-Cニュース」と題しました)ではプロジェクトの歩みを感じていただけると思います。「あかつき」は2010年末に金星に到着し、そこから2年間の観測を行います。正規のミッション期間が終わる頃には2012年末。プロジェクトサイト10周年も夢ではありません。金星での楽しい結果でPLANET-Cニュースを埋められるよう、これからも頑張ります!

[2010年5月10日 更新]

戸田 知朗 / 担当:通信システム開発責任者
就職して時を置かず、科学探査を目的とする宇宙機の通信技術開発の全ての責任を負う立場となりました。10年前のことです。「はやぶさ」の次に続く深宇宙探査機のために、臼田64m局の能力を最大限引き出すよう新しい搭載用通信機が求められていました。その通信機が「あかつき」に搭載されて今飛び立とうとしています。当時より宇宙開発は、手元の開発成果が実際に宇宙へ飛び立つまで最低10年を要す世界と言われていました。1日を争う研究競争の世界も知ってきた私には、何とも気の長いセピア色の話に思われましたが、現実に諸般の事情が折り重なって10年という時間がやはり必要でした。宇宙開発とはコンポーネント開発の側面を切り取っても、技術論だけで決して割り切れず、政治や経済そして世相も巻き込んで、未来予測は複雑系そのものでした。けれども、地上の植物同様、私が「あかつき」の窓から蒔いた通信技術開発の種は芽吹き、今、搭載品から地上局システムまで、着実に人とモノにその根の広がりを見せています。もうじき、「あかつき」にその最初の花が開きます。

[2010年5月6日 更新]

成田 伸一郎 / 担当:姿勢軌道制御系(AOCS)
「あかつき」は、打ち上げ後間もなくH-IIAロケット2段エンジンによって地球の重力圏を脱出し、金星へと向かう惑星間軌道に投入されます。私を含め姿勢軌道制御系のスタッフは「あかつき」を金星まで無事に送り届けるための準備を進めています。
「あかつき」は地球から足早に離れ行く惑星間軌道上で、長野県臼田にあるアンテナからの通信確保、太陽電池による発電、そのために必要な姿勢制御…、とさまざまな機器操作、動作確認を行います。この初期確認を経てようやく金星への安定した航路を取れます。金星への旅路は約半年ほどかかり、最初は夜間運用ですが金星到達時は昼間運用となります。姿勢制御系のスタッフにとって、昼夜逆転を通した闘いの運用期間です。金星到達時にはメインエンジンを噴射してブレーキをかけ、金星周回軌道へと投入します。
地球脱出後の「あかつき」の前には金星に向かう壮大な航路が拓かれています。現在、綿密な運用計画を立てていますが。予想外のトラブルによりその航路は大変に険しいものとなるかもしれません。「あかつき」の金星一人旅と、それを支える姿勢軌道制御系のスタッフにエールを送っていただけたら幸いです。

[2010年4月26日 更新]

上野 宗孝 / 担当:ミッション系総括
それは2000年10月26日のことでした。とある研究会で検出器の発表講演を終えると、怪しい人が近づいて来られ…PLANET-C というミッションを始めるのにあたり、その赤外線カメラに使用する検出器のことで協力をして欲しいという内容のお話をされました。これが「あかつき」の仕事に加わる発端であるとともに、プロマネとの長い付き合いの始まりでもありました。その時には深くも考えずに、うかうかと陰謀に引っかかり、気がつくとミッション系の総括として搭載観測装置のほとんどの開発に参加するとともに、最終的にはその範囲を超えた仕事も引き受けることとなりました。
さて検出器の開発では、IR1とIR2両方のカメラに用いるセンサーデバイスを三菱電機・先端技術総合研究所との協力で進めることができ、その結果デバイスの中身までを含めてブラックボックスの無いカメラを誕生させることができました。実はこれまであまり強調してきていませんが、「あかつき」に搭載されるカメラは、ほとんどが国産の技術の結晶で成り立っています。特にIR2カメラにはJAXAと住友重機械工業で開発を進めている機械式冷凍機を用いた冷却システムが、ミッション機器の制御計算機にはJAXAが主導して開発を進めている高速MPUやメモリー等の最先端の宇宙デバイスが使用されています。これらの点は、このプロジェクトがそして日本が世界に対して誇って良い事実です。
いよいよ打ち上げが近づきましたが、「あかつき」は金星への航海中にIR2カメラの性能を活用して惑星間に存在する固体微粒子(惑星間塵)の散乱光である黄道光の観測を行います。「あかつき」は金星に近づくとともに太陽までの距離が変化しますので、惑星間塵の太陽系内での分布を調べる絶好のチャンスを与えてくれるのです。このデータは「あかつき」が最初に我々にもたらす科学データであるとともに、私の専門分野の一つでもあります。金星の観測に先駆けて、まさに抜け駆けの観測結果に請うご期待!

[2010年4月26日 更新]

山崎 敦 / 担当:紫外イメージャ(UVI)
開発担当は紫外イメージャ(UVI)です。お肌の天敵、紫外線。殺菌消毒、紫外線。そんな紫外線ですが、金星の雲の形状を映し出すにはもってこいです。金星の雲は、その上層部で太陽紫外線を散乱します。しかも、よく吸収するので、明るさに濃淡がはっきりと反映されます。明るく、コントラストが高い特徴を生かし映像化することで、金星雲の動きを追跡することができるのです。
開発でもっとも苦労したのは、いかに紫外線を好きになる自分を作ることだったかもしれません。衛星搭載前の地上試験は、暗室で太陽に匹敵する強さの紫外線をUVIに導入しました。当然のことながらUV用保護めがねを掛けて試験しましたが、あまりにも明るい紫外光源に、暗さに慣れた眼にはぴかぴかします。でもそんな試験にも慣れてしまい、「好きな色はUVです」なんていえる日が来そうな気がしています。
この間、自分が「あかつき」に搭載されて金星の周りを飛んで目視で雲の観測している夢をみました。雲がものすごい速度で移動していたので、目が回ってちょっぴり気持ち悪くなって目が覚めました。雲の観測が成功するところだけ、正夢になりますように。

[2010年4月21日 更新]

鈴木 睦 / 担当:ファンクションマネージャ/ミッション機器制御計算機・データレコーダ開発とりまとめ
1998年にEORC(地球観測研究センター)に移り、大気組成の観測的研究とそのための装置開発・提案活動を主に行ってきました。PLANET-C(あかつき)ではミッション機器を制御する計算機(DE: Digital Electronics)とデータレコーダ(DR)の開発や、更にミッション機器開発に対し助言を行ってきていました。2006年5月からはPLANET-C(あかつき)が本務となりました(個人研究として「きぼう」日本実験棟のSMILESからの成層圏・中間圏大気の観測などを、活発に続けさせていただいています)。
DE/DRは、使用するCPU、各種メモリーチップの新規採用、使用する計算機言語の高級言語化、TRON系ソフト開発環境の採用、機器制御の思想を大きく変化させる、画像圧縮アルゴリズムを新規開発する等を行い、最終的に一般にはSpaceCubeとして知られる次世代汎用衛星搭載計算機への中間世代としての非常に興味深い研究と開発ができたと考えます。
またデータレコーダ部は、火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」世代までの外部インタフェース仕様を保持しつつTRON系OSのアプリケーションソフトとして、完全な新規開発を行いました。これを基に、他計算機への移植・FPGA化など、科学衛星用データレコーダの多様な展開が今後可能になるはずです。
これらの開発では、様々なバグ・仕様定義の不完全さとの遭遇を続けてきましたが、担当メーカー・機器チームの皆様の努力の結果、なんとか金星での観測ミッション遂行に耐えるものができたと考えています。

[2010年4月12日 更新]

岩上 直幹 / 担当:東京大学1μmカメラ(IR1)責任者
今日は4月7日(執筆時)。5月18日の「あかつき」打ち上げまで、あと40日あまりとなった。1999年夏の計画立ち上げ以来、11年の人生をつぎ込んできたカメラ達が金星へ飛んでゆくというのは、「期待がいっぱい」というか、「不安がいっぱい」というか、むしろ「さみしい」というか、「データが取れ始めると、てんてこ舞いだろうな」とか、気分が多様に交錯している。しかし、打ち上げよりはるかに怖いのが12月の軌道投入。今年の正月には、あちこちの神社・仏閣で賽銭を入れてきてしまった。

[2010年4月12日 更新]

中塚 潤一 / 担当:推進系
「あかつき」の推進系を担当しています。推進系は「あかつき」を金星まで送り届ける役割を担っています。そのために、主に姿勢を制御する推進系(RCS:Reaction Control System)と、金星軌道に投入するための軌道変換エンジン(OME:Orbit Maneuvering Engine)の2種類の推進系が搭載されています。特にOMEは国産技術とこれからの将来性に期待して新規開発を行った、世界初のセラミックス製燃焼器を採用しています。
何も分からないまま宇宙分野に飛び込んで、いきなりPLANET-C(あかつき)の推進系担当に…。数多くのミスをして、時に励まされ、たくさん怒られながらもやっとここまでたどり着きました。一から作り始める段階からプロジェクトに関われて、少なからず「あかつき」が自分自身を成長させてくれたことと感謝しています。
そして、このプロジェクトに関わって数多くのプロフェッショナルの仕事を目のあたりにしました。JAXAのプロはもちろんのこと、何よりも推進系メーカの方のプロの技術力があってこそ「あかつき」を作り上げることができました。
「あかつき」の半分(推進薬込み)の重さを占める推進系。これまではトラブルも多く、文字通りお荷物サブシステムでしたが、自信を持って送り出せるまでになりました。金星の素晴らしいデータを取得するためにも、頑張って皆さんを快適に金星までお連れいたします。

[2010年4月5日 更新]

福原 哲哉 / 担当:中間赤外カメラ(LIR)
中間赤外カメラ(LIR)は、金星の雲の温度を画像化します。2009年に新型インフルエンザが流行した時、国際空港の到着ゲートにはサーモグラフィが設置されましたが、これを宇宙用に仕立てたものがLIRです。長い時間と多大な労力を費やして試験と改善を繰り返したおかげで、最高のパフォーマンスを引き出せるようになりました。LIRは金星の昼側と夜側を同時に映し出すことができるので、国内外の研究者からの注目を集めています。まるで我が子のように手塩にかけてきたLIRが、これまで誰も見たことがない感動の画像を地球に送り届けてくれる日を心待ちにしています。

[2010年4月5日 更新]

林山 朋子 / 担当:通信・地上系担当
「あかつき」搭載通信機器と地上システムを担当しています。
「あかつき」に搭載される通信機器は、金星−地球間の超遠距離通信と金星周辺の厳しい熱環境に耐えることが要求され、多くのものが新規開発品となりました。搭載通信機器は通信系スペックが満足されることはもちろん、宇宙環境に適合する信頼性も兼ね備えなければなりません。「あかつき」に搭載されている通信機器はJAXA及びメーカーで協力し完成させた賜物です。
一方、搭載機器が優れていても、その宇宙からのデータを地上で受信できなければ意味がありません。地上系では「あかつき」通信・データ伝送系部分を模擬したPLANET-Cシミュレーターを各地(臼田、内之浦、アメリカ)へ持ち込み衛星運用局への適合性を確認しました。その後は、衛星運用局(臼田局、内之浦局、DSN局)から相模原の衛星管制室にデータが届くよう、度重なるデータ伝送試験を実施しています。運用の為の試験は現在も続いていますが、今までの試験は無事終了し、万全の準備が整いつつあります。
衛星からの最初の信号を受信する時を楽しみにしています。

[2010年3月29日 更新]

大島 武 / 担当:(システムインテグレータ担当)NECプロジェクトマネージャ
【あかつきで開く未来 −次の世代へ−】
私が金星を初めて望遠鏡で見たのは中学生の時です。「たけし、あれを見てみろ。」そう父に言われて、口径5cmの屈折望遠鏡を向けたのは、暁の空に輝く、明けの明星でした。ひどいシーイングと色収差の中で、ぎらぎらと三日月状にまばゆい光を放つ金星は、その時の空気の冷たさと共に私の心の奥底にずっと残っています。
あれから32年…。今は、システムインテグレータであるNECの、プロジェクトマネージャ兼システムマネージャとして、「あかつき」の開発に、マネジメント面でも技術面でも責任を負っています。機器の進捗に合わせてシステム試験スケジュールを調整したり、問題が生じた時の対策について技術者達ととことんまで議論したりと、ハードながら刺激的な日々を送ってきました。この仕事を通じて優秀な部下も育ち、それぞれのサブシステムの技術者達も、日本初の金星探査機「あかつき」の活躍を心から待ち望んでいます。打ち上げまでもう少しです。気を抜かず最後の準備を入念に行っていきたいと思います。
写真は、娘の瑠唯(るい)、息子の璃來(りく)と共に撮ったものです(頭上に輝くのは、我が家のシンボル星型ペンダントです)。種子島での射場作業中は、なかなか子供達に会うことができませんが、父の後ろ姿から何かを感じ、宇宙科学や宇宙工学への興味を持ってもらえたら、といつも考えています。
「あかつき」が解き明かす金星の姿は、もしかしたら地球の未来かもしれません。金星と地球は大きさがほぼ同じですし、太陽は徐々に光度を増し、いつかは膨張を始める定めなのですから…。「あかつき」を開発し、「あかつき」で金星の謎にせまることが、いろいろな意味で次の世代のためになっていけば良いと思います。

[2010年3月29日 更新]

佐藤 毅彦 / 担当:IR2カメラ(2μmカメラ)開発責任者
10年前中村先生から突然お誘いがあり、「一本釣り」でプロジェクトに参加し始めました。衛星搭載品開発は初めての私が主力カメラIR2を任され、長い道のりをしかし振り返ってみるとアッという間に過ごしてきました。
CCDを-210度付近まで冷やすIR2は熱的にも機械的にも気を使う部分が多く、冷却時にCCDと基板の収縮差が原因でCCDのピンが折れる事故が発生したときには、目の前が真っ暗になりました。研究者とメーカーが知恵と気力(体力)、チームワークで困難を乗り切り完成させたIR2カメラ。それが金星から素晴らしいデータを届けてくれる瞬間を、ワクワクしながら待っています。

[2010年3月23日 更新]

大西 晃 / 担当:熱設計
「あかつき」(PLANET-C)の熱設計のポイントは、太陽光エネルギーが地球近傍の約2倍になること、金星の熱環境に晒されること等に対処することは言うまでもありません。
特に注意を要したことは探査機の外部に搭載されるセンサ、アンテナ、太陽電池パドル等と比較的熱容量の小さい機器類の熱設計でした。それは地球近傍において低温になり、反して金星周回では高温になるため、いかに機器類を要求された温度範囲内に収める熱設計を構築するかにありました。「はやぶさ」以来の惑星探査機です。熱設計の重要性を感じています。

[2010年3月15日 更新]