H-IIBロケット概要

将来の宇宙ミッションへの扉を開く

日本はこれまで、さまざまな研究と実験を重ねながら、独自の技術でロケットを開発してきました。なかでもH-IIAロケットは、信頼性の高い大型主力ロケットとして、各種の人工衛星を打ち上げるミッションを支えてきました。このH-IIAロケットの打ち上げ能力を高め、国際宇宙ステーション(ISS)や月面への物資輸送など、将来のミッションへの可能性を開く新しいロケットが、H-IIBロケットです。
H-IIBロケットの主要な目的は二つあります。一つは、ISSに宇宙飛行士の生活に必要な物資、ISS内の定期交換機器、実験装置・実験用サンプルなどの研究用資材を運ぶ、HTV(宇宙ステーション補給機)を打ち上げることです。もう一つの目的は、H-IIAロケットとH-IIBロケットを併せて運用することにより幅広い打ち上げニーズに対応することです。また、高い打ち上げ能力を活かして複数の衛星を同時に打ち上げることでコストの削減を図り、わが国の宇宙産業の活性化に貢献します。

特長その1.日本初!ロケットエンジンのクラスタ化

クラスタ化は、エンジンを複数束ねることによって推力を増強する方式です。H-IIBロケットは、H-IIAでは1基だった第1段液体ロケットエンジン(LE-7A)を2基搭載します。また、第1段タンクの直径を従来の4mから5.2mに拡大し、全長を1m伸長することにより推進薬を約1.7倍搭載します。このように、いくつかのエンジンを束ねる(クラスタ化)方法は、すでに性能の確定しているエンジンを使用できるため、短期間かつ低コストで開発を進められるという長所があります。

特長その2.固体ロケットブースター(SRB-A)を4本装備

H-IIBロケットは、H-IIA標準型で2本だった固体ロケットブースター(SRB-A)を4本装備します。2006年にSRB-Aを4本装備したH-IIAロケット11号機(H2A204型)の打ち上げに成功しており、これまでに実績のある技術を有効に活用して、性能の向上を図っています。

特長その3.低コスト、低リスク、短期間での開発

H-IIBロケットは、HTVの打ち上げ時には、HTV専用のフェアリングを用いますが、それ以外の搭載機器や地上設備については、これまで運用実績のあるH-IIAロケットと極力同一の仕様・構成を踏襲し、信頼性の維持・向上と開発リスクおよびコストの低減を図ります。また、発射設備をH-IIAと共有し、同じ種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げられます。



H-IIBロケット 主要諸元

全長(m)
全長(m) 56.6m
全備質量(t) 531t(人工衛星の質量は含まず)
誘導方式 慣性誘導方式

各段

第1段 固体ロケット
ブースタ
第2段 衛星
フェアリング
全長(m) 38 15 11 15
外径(m) 5.2 2.5 4.0 5.1
質量(t) 202 306(4本分) 20 3.2
推進薬質量(t) 177.8 263.8(4本分) 16.6
推力*1(kN) 2,196 9,220 137
燃焼時間(s) 352 114 499
推進薬種類 液体水素/
液体酸素
ポリブタジェン系
コンポジット
固体推進薬
液体水素/
液体酸素
推進薬供給方式 ターボポンプ ターボポンプ
比推力*1(s) 440 283.6 448
姿勢制御方式 ジンバル 可動ノズル ジンバル
ガスジェット装置
主要搭載電子装置 誘導制御系機器 誘導制御系機器
レーダトランスポンダ
テレメータ送信機
指令破壊装置

*1:真空中 固体ロケットブースタは最大推力で規定


H-IIBロケット 最大打ち上げ能力

代表的軌道軌道高度例打ち上げ能力
静止軌道
(静止トランスファ軌道)
約36,000km 約8t
HTV軌道
(軌道傾斜角 51.6度)
約350km-460km 約16.5t


キーワード:H-IIAロケット

日本の主力大型ロケットとして活躍するH-IIAロケットは、日本初の純国産大型ロケットH-IIロケットで培われた技術をもとに、高い信頼性を確保しつつ、低コストで対応するために開発されました。
H-IIAロケット標準型(H2A202型)に固体補助ロケット(SSB)や固体ロケットブースター(SRB-A)を組み合わせることで打ち上げ能力を調整し、重量の異なる衛星にあわせた柔軟な運用が可能です。

H-IIAロケットラインアップ
 
型式 H2A202 H2A2022 H2A2024 H2A204
打ち上げ能力
(GTO換算)
約3.8トン 約4.2トン 約4.7トン 約5.8トン