H-IIBロケットの役割について
H-IIBロケットは、H-IIAロケットで培った技術を最大限活用し、低コスト、低リスク、短期間での開発に成功した世界最高水準の打ち上げ能力を持つ日本の大型ロケットです。
H-IIBロケット3号機は「こうのとり」3号機(HTV3)を所定の軌道に投入することを目的に、2012年7月21日(土)に打ち上げられます。
2009年9月11日のH-IIBロケット試験機の打ち上げでは、日本の主力ロケットの初号機としては初めて予定の日時に遅れることなく、HTV技術実証機を所定の軌道に投入することに成功し、NASAをはじめ世界の賞賛を受け、国際貢献度を高く評価されています。
スペースシャトルの退役後は、このH-IIBロケットによる「こうのとり」の打ち上げが国際宇宙ステーションへの大型カーゴ物資輸送としては唯一の手段となることから、H-IIBロケット3号機は、大きな期待を背負って、打ち上げに臨みます。
ロケットの形状
アビオニクス再開発機器

H-IIBロケット3号機に新たに搭載される新型の誘導制御計算機(GCC)と慣性センサユニット(IMU)は、計算機ボードを共通の仕様にすることにより、効率的に再開発を行いました。
基幹部品である中央演算処理装置(MPU)には、JAXAが開発し設計技術を保有している宇宙機用MPUを採用することで、市場の部品供給途絶(枯渇)の影響で大規模再開発が必要になる懸念をなくしました。 写真:新型の誘導制御計算機(GCC)外観
他にも、H-IIBロケット3号機にはJAXA情報・計算工学センター(JEDIセンター)が開発した、高信頼性のリアルタイムOS(RTOS: Real Time Operating System)を初搭載します。RTOSは、新型の誘導制御計算機(GCC)と慣性センサユニット(IMU)等で宇宙用のマイクロプロセッサHR5000の上で動作するOSです。
このRTOSは、一つのソフトウェアに障害があっても、他のソフトウェアに影響が波及しないようにする仕組みを持ち、宇宙機システム全体の信頼性向上に寄与できる機能を有しています。
第2段制御落下実験
JAXAでは、ミッション終了後の第2段機体をより安全に処置するための技術開発に取り組んでおり、今回のH-IIBロケット3号機の打ち上げにおいて、以下の第2段機体の制御落下実験を実施致します。
こうのとり3号機を分離した後、機体(H-IIBロケット3号機の第2段部分)の状態を確認し、まずガスジェット装置の噴射により機体を進行方向から逆向きに反転させます。機体が地球を1周回して種子島局可視域に戻ってきた際に、再度、機体の健全性と落下推定点を確認し、制御落下マヌーバ(減速のための逆噴射)の禁止を解除する許可コマンドを送信します。その後、制御落下マヌーバが実施され、機体を南太平洋に落下させる計画です。
軌道離脱のための逆噴射は、第2段のLE-5Bエンジンのアイドルモード燃焼(ターボポンプを回転させず、ガス押しで推進薬を供給する方式)により実施します。
こうのとり(HTV)のミッションが低軌道であり、主ミッションに影響を与えずに実施可能であることから、2号機に続き、今後の定期的な打ち上げ機会を利用して制御落下に関する技術を継続的に蓄積していく予定です。