追記記述を下線部で示す。
NASAはこれまでコロンビア事故調査委員会(CAIB)報告書を受け入れてきており、そして今後もその勧告に従っていく。NASAは、組織文化と業務の進め方の根本的な再評価を行わなければならないことを認識している。これを実行するため、NASAは、宇宙飛行計画の一層の改善を図るCAIB勧告を超えた更なる方策(action)を明確にすべく、NASA全体に亘り徹底的な努力を開始した。このようにして、NASAは安全な飛行再開に向けて前進する。
この実施中の努力の成果は、CAIB勧告に基づき且つそれを補足する、NASA内部で立案された一連の方策である。これらの方策はまた、CAIB報告書に書かれた重要な(key)気付き事項(observations) の幾つかに対し取り組むものである。NASAは、飛行再開作業を進めつつ、その他の気付き事項についても評価し、取り組み、報告していくこととする。CAIB報告書第1分冊(Volume I)に示されたCAIBの気付き事項のリストは、以下に含まれている。
以下に示された方策に加えて、計画を改善する最初の一歩として、NASAは、増強された独立評価能力を提供するためラングレー研究センターにNASA技術・安全センター(NESC:NASA Engineering and Safety Center)を設立した。NESCは、専門家と最先端の手法に支えられた、独立した詳細な技術的評価の管理を実施する中心に位置づけられる。
NESCは、問題の解決策を認証する試験を実施し、コンピュータモデルを実証し、傾向分析を独立して実施する。NESCについては、CAIBの勧告7.5-1へのNASAの対応の中で明確にされている。
NASAは、ケネディ宇宙センターのシャトル作業部門(Shuttle Processing Directorate)とミシュー組立施設(訳者注:ルイジアナ州)の外部燃料タンクプロジェクトに対する、スペースシャトル・プログラムのGMIP(項目)の検証手順の有効性を評価するため、NASA、産業界、国防総省(DOD)、連邦航空局(FAA)からの代表を含む専門家グループを設立した。
NASAは今後、シャトルの再突入から着陸までの間に上空を飛行することにより引き起こされるリスクを評価する。地上の人、物、飛行士、シャトル機体に対するリスクを管理(manage)するために、地上軌跡や着陸地点の変更のような統制手段(controls)を考慮する。
NASAは、損傷を受けたシャトルが修理されるまでの間、或いは飛行士が安全に地球に帰還するまでの間、シャトル飛行士をISS上に留めるため緊急時に行使する、ISS緊急シャトル飛行士支援策(concept)を開発してきている。NASAの予備的な実現性検討では、次のシャトルミッションに対して、万が一必要な場合にはシャトルのクルーはISS上で、86日間以上(これは別のシャトルでクルーを救出するのに十分な期間)留まることが可能という結果が示されている。
障害の解析は、危険の潜在的原因と決め、更に、確認された問題に対する推奨解を決定することである。受け入れ可能なリスク障害として承認されるのは、取り得る全てのリスク軽減努力が実行された後でさえも残る既知のリスクについてである。受け入れ可能なリスク障害として承認されるのは、起こりうる結果と発生の可能性が耐えられるものであるという判断に基づいている。
シャトル・プログラムにおける全てプロジェクトは、各々の受け入れ可能なリスク障害分析報告書(hazard report)及びSTS-107(訳者注:コロンビア号)事故調査で指摘のあった追加の障害分析報告書について評価を行っている。
NASAは、打上げ時に重大な破片となる可能性のある発生源を解析し、特徴づけ、軽減するための包括的な努力を既に開始している。シャトルに重大な損傷を与えるような大きさの、打上げ時に生ずる破片全てを排除することが、NASAの優先事項である。
スペースシャトル・プログラムの要求に対するウェーバ (特認)、デビエーション(逸脱)、除外事項には必ず潜在的リスクが伴うので、スペースシャトル・プログラムでは、それらすべてが適切なものであるかを審査する。更に、(訳者注:スペースシャトル・プログラムの)各プロジェクト及び要素は、結果としてシャトル上昇中の破片を生ずる重要品目リストのウェーバ (特認)を、 詳細に識別し、審査する。
NASA事故調査チームの全ての技術ワーキンググループは、自分達の発見・気付き事項・勧告を、プログラム要求管理会議 (PRCB) に発表する義務を負う。各プロジェクト及びエレメントにおいては、飛行再開への処置事項がどれであるかを決定するために、プロジェクト内に勧告を提示する。各プロジェクト及びエレメントにおいては、スペースシャトル・プログラム (SSP) や NASA 組織としての実施が必要な処置を、SSP PRCB (会議) に委ねることとする。
飛行準備完了認証 (CoFR) は、NASAとして(訳者注:各シャトルミッションが)プログラム要件に準拠していることを確認し、打上げ準備が完了していることを判断するために行うプロセスである。CoFRプロセスにおいては、複数の審査会が段階的に上位の管理レベルで実施されていき、飛行準備審査会 (FRR) で完結する。CoFRに署名する組織や、CoFRの構成内容を説明或いは(訳者注:その資料を)準備する組織については、CoFRプロセスの徹底的な審査を実施するために、プログラム要求管理会議(PRCB)から要措置事項(action)が指示されている。
飛行再開への準備において、NASAは、シャトルの故障モード影響解析 (FMEA)及び重要品目リスト (CIL) のプロセスの有効性についての評価計画を策定している。この再調査により、スペースシャトル・プログラム (SSP) のCILに関連する文書化された管理が検証される。SSPは、FMEAとCILの重要度(criticality)と、シャトルのリスクに対する全体的な寄与に基づいて、再検証が必要な FMEA と CIL を特定する。 NASAは、また、FMEA及びCILの文書化および管理に影響を与えるSTS-107(コロンビア号事故)調査(委員会)の確認事項(findings)と気付き事項(observations)を評価する。
NASAは、コロンビア号事故からの教訓を再調査し、プログラムレベルの緊急行動計画を、これら教訓を反映して更新する。(さらに)NASAは、宇宙飛行運用のためのNASA本部の全社緊急行動計画を再確認し、更新する。
NASAは、OV-103のボディフラップ・アクチュエータから腐食が見つかった点を受け、機体全機のラダー スピード ブレーキ・アクチュエータの正確な状況を確認するために、検査プログラムを開始した。
シャトル打上げ時に剥離する可能性のある破片を識別できるようにするため、空軍東部射点と協力して、NASAはシャトル打上げ時のレーダ設備の改善を検討する。
NASAがコロンビア号事故前に発生した機体のいくつかのハードウエア故障の調査を受けて、全てのスペースシャトル・プロジェクト(SSP)とエレメントは、2002年12月に担当するハードウエアの認定と検証(verification)要求を発行するようアクションが設定され、プロセス作業と運用の状況が、オリジナルのハードウエア認証と一致することを検証することになった。
NASAは、軌道上での検査、修理に必要なクリティカルな損傷サイズの基準(クライテリア)の決定を行う実質的な作業に乗り出した。NASAは、破片衝突による損傷を予測する精密なモデルを開発中であり、包括的な耐損傷許容試験計画を作成している。またNASAは、損傷が生存可能なものなのか、あるいは損傷が安全な再突入前のためには修理が必要かを判断するための、より成熟したモデルを開発している。
NASAは、問題の追跡、飛行中の異常(IFA)の処置、異常解決プロセスの変更、に関する識別・実施の改善を開始した。1チームがSSP及び内部文書をレビューすると共に、過去3回のシャトルミッションの性能の監査とプロセスをレビューした。彼らは問題報告及び修正処置システム(PRACA)の要求の明確化が必要であると結論付けると共に、これらの要求の実施も改善が必要であると結論付けた。定義の誤った解釈、問題の誤った識別結果、追跡及び報告要求の不整合を含む問題がこのチームによって識別された。
CAIB報告書の第10章に記載された気付き事項は、CAIB勧告から発展し、公共の安全、クルーの脱出、機体の老朽化と維持、品質保証、試験装置、そしてNASAマネージャに対するロバストな訓練プログラムの必要性などのクリティカルな分野にまで及んでいる。NASAはこれらの気付き事項の調査に全力を傾け、適切な是正措置の決定において、既に重要な前進をしている。実施計画の今後のバージョンは多様な情報源からの追加の助言を含むまでに拡張される。このことは飛行再開を越えて、我々が有人飛行の限界を拡充し続けるという挑戦を実現することを保証する、我々の文化とプログラムの持続可能な改善を制度化することを保証している。
リスク許容に関する方針を含めた、公共の安全についてのNASAのドラフト文書は完成に近づいている。NASA安全及びミッション保証(SMA)ディレクターたちは、2003年10月に最終ドラフトを検討する。その検討が完了した後、文書はNASAオンライン指令情報システム(Online Directives Information System)を用いて、NASAの正式な承認プロセスを通じ、審査される。
気付き事項O10.1-1、O10.1-2、O10.1-3は、部分的に(前述の)SSP-2で取り組まれている。スペースシャトル・プログラムでは、突入飛行経路の下にある全ての人や物への相対危険度を評価する。この検討には、あらゆる軌道傾斜角から3箇所の主要着陸地各々に至る、シャトル全ての着陸機会が含まれる。
クルー生存ワーキンググループ(CSWG:Crew Survival Working group)と呼ばれる、NASAのジョンソン宇宙センターの、多くの専門分野にわたるチームは、チャレンジャー号とコロンビア号の事故から得た知識を盛り込んで、報告書を発展させている。CSWGは飛行クルー運用(FCOD)、工学技術及び宇宙と生命科学管理部門からの参画を得ている。CSWG報告書は、将来の有人宇宙船における、クルーの生存率を向上させるための勧告を提示する。NASAはまた、宇宙機のhuman rating requirements を体系化する方針文書も策定した。
気付き事項O10.4-1は、SSP-1で取り組まれている。NASAは、各シャトルミッションの前に重要な機能の検証を保証する際に政府の必須検査項目 (GMIP) 基準の有効性を確認するため、品質計画及び要求書 (QPRD) の評価を、スペースシャトル・プログラム (SSP) とは独立に、委嘱する。その評価によって、既存の GMIP 基準がQPRD の基準を満たすかどうかの適正さを判断する。GMIP の基準が安全な飛行運用を有効に保証していることを検証するために、NASAは今後長期間に亘り、地上作業や飛行経験に対する QPRD の検査基準の有効性を定期的に見直していく。
NASAはDefense Contract Management Agencyに匹敵する訓練プログラムを、既存の訓練プログラムの可能な部分を使って改善することによって、基礎的な品質保証の精神において観察された欠陥を改善する。
NASAはDefense Contract Management Agencyに匹敵する訓練プログラムを、既存の訓練プログラムの可能な部分を使って改善することによって、基礎的な品質保証の精神において観察された欠陥を改善する。
NASAは、産業界の専門家たちのチームとともに、USA社のKSCオペレーションにおけるISO9000/9001の適用性を評価する。この評価は、契約業者の査察や評価における、標準あるいは変更の将来の活用に対する勧告につながる。
NASAは、STS-114の機体作業工程向上のロールインから機体整備棟(OPF)の飛行エレメントのシステム統一試験(system integration test)を通じた期間における、作業文書のレビューと体系的な解析を実施した。STS-114の体系的解析は、STS-107/109審査に記載された技術的気付き事項に合致した、6つの是正措置勧告につながる。チームは根本的原因と長期の是正措置を判定するために結成された。これらの勧告は、是正措置の実施と効率を追跡調査するための是正措置要求を課された。
工学技術およびSMA組織は、彼らの査定計画を評価し改訂している。地上運用動作手順(Ground Operations Operating Procedures)に対して要求された変更は特定され、政府機関検査要求と支援データベースのQPRD変更プロセスの開発は完了間近である。これに加えて、NASAはウェブベースの記録(log)の立ち上げと政府検査要求のQPRD変更プロセスを使って、工学技術とSMA組織間の意思疎通を改善する。
CAIBはNASAの文書化、とそれが実行した作業の統計的サンプリングをどう処理するかについての改善の必要性を述べた。NASAは、気付き事項で触れられたプロセスを調査するためにプロセス審査チーム(Processing Review Team)を設置し、12月には勧告を受けることを期待している。
機体改修期間(OMDP)計画の開始時において知られている改修の実施のための承認を追求する訓練は、OV-105の第2回目のOMDPによって再構築され、2003年12月に開始することが最近になって承認された。2003年6月の改修場所要求審査(Modification Site Requirements Review)では、PRCBがこのOMDPの実施に要求されたすべての改修を包括することを承認した。
必要とされるクリティカルな技術集合に的をしぼった追加の職員雇用はNASAシャトルプロセッシング管理部門(Shuttle Processing Directorate)とNASAオービタ・プロジェクトオフィスで調整されている。
NASAは、統合されたシャトル寿命延長(Shuttle Service Life Extension)活動の一部として、老朽化した機体の多数の評価活動を開始した。各スペースシャトルの要素組織は、SSP運用が2020年およびそれ以降まで依然として安全であり、価値あることを明らかにするために適切な機体評価を行う。NASAは、航空業界及び軍事部門から広く、政府と産業界の老朽システムの専門家の参加の依頼も続けている。特に、NASAは、米国空軍と老朽化した機体の評価計画の作成について作業を続けていく予定である。
NASAは、スペースシャトルの運用は依然安全であり、シャトルの運用寿命を通して価値あるものであることを明らかにするために多数の評価を開始した。NASAは機体の保全要求および仕様書(Orbiter Maintenance Requirements and Specifications Document)で規定されている3年または8回の飛行を(より高いレベルの自信を保つために)維持することを決定した。
オービタ・プロジェクトオフィスは、腐食の問題を検査、評価するためにいくつかの勧告を作成した。この実施計画(Implementation plan)の次の改訂で、SSPからの承認を得た具体的な活動の詳細を明らかにする予定である。
オービタ・プロジェクトオフィスは、O10.8-1〜O10.8-4で提起された材料とコンポーネントで生じた問題を再評価するためにいくつかの勧告を作成した。この実施計画(Implementation plan)の次の改訂で、SSPからの承認を得た具体的な活動の詳細を明らかにする予定である。
NASAは、このシステムの再設計に関する5つのオプションを評価し、暫定的に1つのコンフィギュレーションを選択した。この案は、STS-112でHold-Down Postケーブルシステムに異常を生じさせた主原因と見られるT-0アンビリカルに直接冗長性機能を与えるものである。この再設計オプションのさらなる評価が進行中である。クロスストラップ・ケーブルは、Hold-Down Postの双方の火工品システムをインヒビットさせる故障の懸念があるため、推薦されなかった。NASA本部が後援した独立評価チームが、STS-112のT-0アンビリカルの電気/通信インタフェースの異常と一般的なレビュー(anomaly and generically review)を行うために設立された。
SRBプロジェクトオフィスは、取付リングの検査、評価、必要に応じて行う交換に関するいくつかの勧告を作成した。この実施計画(Implementation plan)の次の改訂で、SSPからの承認を得た具体的な活動の詳細を明らかにする予定である。
NASAは全てのクリティカルなプログラム機器の評価を開始した。NASAは、そのような機器の評価を状態(health)評価プロセスと年に一度の維持レビュー(supportability review)を通じて続ける予定である。これらの評価は、2020年までシャトル艦隊の維持にはどこを改良(upgrade)すべきかを決定するのに役立てられる。識別された改良箇所は、シャトル寿命延長プロセス(Service Life Extension process)に送られ、具体的なプロジェクトの予算の確保を行う。
NASAの人材リソース室(Office of Human Resources)は、NASA全体のリーダーシップと管理(マネージメント)を開発訓練するためのNASAのチームを設立する予定である。このチームは、NASAのリーダー、NASAとセンターの訓練と開発を行うスタッフ、ラインのマネージャ、教育界からのメンバから構成される予定である。NASAは、他の政府機関、主要企業、大学のリーダーシップとマネージメントを開発するプログラムの基準(ベンチマーク)となるであろう。人材リソース室は、アメリカ訓練開発協会(American Society of Training and Development)やアメリカ生産性および品質センター(American Productivity and Quality Center)の様な組織からも所見を得るであろう。