プレスリリース

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月周回衛星「かぐや(SELENE)」のハイビジョンカメラ(HDTV)による
「地球の出」撮影の成功について

平成19年11月13日

宇宙航空研究開発機構
日本放送協会

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)および日本放送協会(NHK)は、平成19年10月18日(日本時間、以下同様)に高度約100kmの月周回観測軌道に投入した月周回衛星「かぐや(SELENE)」からハイビジョンカメラ(HDTV)による「地球の出」(注)の動画撮影に世界で初めて成功しました。

 月面越しに地球が昇っていく「地球の出」は、アポロ計画で初めて撮影されました。暗黒の宇宙空間にただひとつ浮かぶ青い地球が印象的なこの画像のハイビジョン撮影に、今回、「かぐや(SELENE)」が世界で初めて成功しました。また、この画像は約38万km隔てた遠い宇宙から地球をハイビジョン撮影したもので、これも世界で初めてです。

 撮影は、「かぐや(SELENE)」に搭載されたNHK開発の宇宙仕様のハイビジョンカメラ(HDTV)によって行われたものです。「かぐや(SELENE)」で撮影した動画画像をJAXA臼田宇宙空間観測所にて受信し、その後、NHKにおいてデータ処理を行いました。

 なお、臼田宇宙空間観測所で受信したテレメトリデータにより、衛星の状態は正常であることを確認しています。

(注)今回、「地球の出」という表現を使っていますが、これは月周回衛星「かぐや(SELENE)」やアポロ有人宇宙船のように月のまわりを回る衛星で見られる現象です。月面上に立つ人間からは地球は絶えずほぼ同じ位置に見え、地球が地平線から昇ってくるような「地球の出」を見ることはできません。




ハイビジョンカメラ(広角)による「地球の出」の撮影映像



図1 かぐや搭載のハイビジョンカメラによる「地球の出」の撮影結果
 この画像は、平成19年11月7日14時52分(日本時間)に「かぐや(SELENE)」ハイビジョンカメラ(広角)から撮影され、JAXA臼田宇宙空間観測所にて受信した動画の一部を静止画像として切り出したものです。
 月面は北極付近で、地球にはアラビア半島、インド洋などが見えます。



ハイビジョンカメラ(望遠)による「地球の入り」の撮影映像



図2 かぐや搭載のハイビジョンカメラによる「地球の入り」の撮影結果
 この画像は、平成19年11月7日12時07分(日本時間)に「かぐや(SELENE)」ハイビジョンカメラ(望遠)から撮影され、JAXA臼田宇宙空間観測所にて受信した動画の一部を静止画像として切り出したものです。
 月面は南極付近で、地球の中央左にはオーストラリア大陸、右下にアジア大陸が見えています(画面の上が地球の南になっているため、オーストラリア大陸の上下が通常とは逆になっています)。




 下の画像は、月の南極付近の地平線に地球が沈む様子を示したものです。左端の画像から地球が沈み切る右端の画像まで約70秒かかっています。



図3 ハイビジョンカメラにより撮影した「地球の入り」の様子





図4 「かぐや」と月・地球の位置関係





図5 ハイビジョンカメラ(HDTV)の取付位置



表1 ハイビジョンカメラ(HDTV)の主要諸元
  HDTV
カメラ特徴
センサ
使用チップ数
プリズム
レンズ
FOV(視野角)


CCD(1920×1080:有効画素数)
3チップ
ダイクロイックプリズムによる三原色分光
固定焦点(T:望遠、W:広角)
広角:51.23°(水平), 30.17°(垂直)
望遠:15.60°(水平), 8.80°(垂直)