プレスリリース

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熱帯降雨観測衛星(TRMM)などを用いた「世界の雨分布速報」の公開について

平成19年11月14日

宇宙航空研究開発機構
科学技術振興機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測研究センター(EORC)では、熱帯降雨観測衛星(TRMM)などの地球観測衛星の観測データを用いて、準リアルタイム(観測後約4時間)での高分解能の世界の雨量の分布図を作成し、その画像をインターネット上に公開することとしましたので、お知らせいたします。
  この画像は1時間毎に提供(更新)され、過去24時間の雨分布のアニメーション画像も見ることができます。
このような準リアルタイムでのシステム構築により、アジアの発展途上国をはじめとする、台風や豪雨災害が頻発するにも関わらず地上で雨の情報が不足している地域に対して、速やかな情報提供を行うことが可能となりました。
なお、雨量の算出には、(独)科学技術振興機構(JST)のプロジェクト「GSMaP(※注)」による、高時空間分解能のマップ作成とTRMM搭載の降雨レーダ「PR」の情報を利用した世界最先端の研究成果を利用しています。



※注:「GSMaP」…戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「水の循環系モデリングと利用システム」
研究領域(研究総括:虫明功臣 福島大学理工学群共生システム理工学類 教授)の研究課題である
「衛星による高精度高分解能全球降水マップの作成」(研究代表者:岡本謙一 大阪府立大学大学院工
学研究科 教授)のプロジェクト。

【サイト入口はこちらから】
JAXA/ EORC 世界の雨分布速報:http://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm(日本語版)




参考

JAXAがこのシステムに使用しているデータは、TRMM搭載のTMIセンサ、Aqua搭載のAMSR-E(アムサー・イー)センサ、DMSP衛星シリーズ搭載のSSM/Iセンサでの観測、及び静止気象衛星の観測によるものです。衛星観測から推定した全球の雨量分布(赤道上で約10km四方、1時間平均の雨量分布)を準リアルタイムかつ毎時に可視化し、定常的に公開するのは日本では初めてのことです。静止気象衛星の雲画像データから雨域の移動の情報を利用して雨量を推定することにより、1時間毎に画像提供が可能となりました。また観測後約4時間以内という画像提供の速さは、AMSR-Eなどのマイクロ波放射計データを利用した全球の雨量分布推定としては、世界的に見ても最速のもののひとつです。
また、JAXAは(独)土木研究所と共同で本システムの洪水予測への適用性を高める研究を行っており、この研究は発展途上国地域での洪水災害軽減に寄与することが期待されています。さらに、海上の台風の雨量観測が可能となり、台風予測の検証やそれによる予測精度の向上などにも役立つことも期待されています。


用語解説

TRMM(トリム):
日米の共同ミッションとして1997年11月にH‐IIロケットで打ち上げられた人工衛星。日本が開発した世界初の衛星搭載型降雨レーダ(PR)と米国開発によるマイクロ波放射計(TMI)、可視・赤外放射計(VIRS)の3種類の降雨観測センサを搭載し、熱帯・亜熱帯地域の降雨観測に特化した目的を持つ。2007年11月現在、運用中であり、11月28日に観測
10周年を迎える。

Aqua搭載AMSR-E(アクア搭載アムサー・イー):
米国地球観測衛星「Aqua」(2002年5月打ち上げ)に搭載されている高性能のマイクロ波放射計。JAXAが開発・運用。地球から放射される微弱な電波を観測することで、降雨量や海面水温、海氷分布などを昼夜の別なく、天候に左右されずに計測可能。2007年11月現在、運用中。


DMSP搭載SSM/I(ディー・エム・エス・ピー搭載エス・エス・エム・アイ):
  米国の軍事気象衛星「DMSP」シリーズに搭載されているマイクロ波放射計。最初のSSM/Iセンサは、1987年打ち上げのDMSP-F8に搭載され、以後、後続のDMSPシリーズに搭載されている。常時2-3台が運用されており、本システムでは、F13、F14、F15号のデータを利用。


関連リンク

JAXA/EORC TRMMプロジェクト ホームページ
http://www.eorc.jaxa.jp/TRMM/index_j.htm

JST/CREST GSMaPプロジェクト ホームページ
http://www.radar.aero.osakafu-u.ac.jp/~gsmap/

JST/CREST 「水の循環系モデリングと利用システム」ホームページ
http://www.yae-mizu.jst.go.jp/yae-mizu/start/default.html

サイト見本
図1:JAXA/EORC世界の雨分布速報のホームページトップ。最新の雨分布の画像が表示される。日本語、英語の両方が利用可能のほか、過去画像の検索表示や、過去24時間の雨画像のムービー、さらに、Google Earthを利用して表示する機能などを持つ。
画像は、2007年11月7日0時(世界時)の雨量分布。雲画像は、気象庁、EUMETSAT(欧州気象衛星機構)、NOAA(米国海洋大気局)及び日本気象協会の提供による


図2:JAXA/EORC世界の雨分布速報のGoogle Earth表示のサンプル。
画像は、2007年11月7日0時(世界時)の雨量分布。雲画像は、気象庁、EUMETSAT、NOAA及び日本気象協会の提供による。