プレスリリース

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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)データを用いた
「高精度土地被覆図」の公開について

平成22年9月13日

宇宙航空研究開発機構

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の観測データを用いて、日本のほぼ全域の高精度土地被覆図を作成し、その画像をインターネット上に公開することとしましたので、お知らせいたします。
 今回公開する高精度土地被覆図(図1)は、「だいち」(ALOS)に搭載されている高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2; アブニール・ツー)(※1)の観測データを主に用いて作成したもので、国や地方自治体が行っている植生調査や森林管理、土砂災害などの調査、食糧安全保障への貢献など実利用の分野や、生態系研究等の研究分野など、様々なアプリケーションにおける基礎情報として利用されます。将来的には、気候変動観測衛星(GCOM-C; ジーコム・シー) (※2)による全地球規模での土地被覆図の作成・高精度化や、次期高分解能光学センサによる、より詳細な土地被覆調査へとつなげることが期待されます(図2)。
 この土地被覆図は、一部の離島を除いた日本のほぼ全域を50m四方の細かさ(解像度)で9つの種類(分類カテゴリー)に分けた画像です。9つのカテゴリーとは、[1]水域、[2]都市、[3]水田、[4]畑地、[5]草地、[6]落葉樹、[7]常緑樹、[8]裸地、[9]雪氷になります。土地被覆図の算出には、植物の季節変化(フェノロジー)を考慮するために多時期のアブニール・ツー画像を用いており、地形にともなう歪みと撮影時の大気状態の違いによる影響を補正することで高精度化をはかりました。
 なお、本土地被覆図の作成にあたっては、筑波大学との共同研究の一環としてアルゴリズム開発を行なっています。今後、さらに分類精度の向上を進め更新していく予定です。

【サイト入り口はこちらから】
JAXA 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター(EORC)
高精度土地被覆図(日本全域):http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/lulc/lulc_jindex.htm (日本語版)

用語解説
※1)高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2; アブニール・ツー)
AVNIR-2は、青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測する際には幅70kmの範囲を10mの解像度で観測できる能力があります。また、東西方向に44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しているため、災害時の緊急観測など即時の観測が可能です。

※2)気候変動観測衛星(GCOM-C; ジーコム・シー)
「地球環境変動観測ミッション(GCOM: Global Change Observation Mission)」は、宇宙から地球の環境変動を長期にわたって、グローバルに観測することを目的としたプロジェクトです。大気、海洋、陸、雪氷といった地球全体を長期間(10〜15年)観測することによって、水循環や気候変動の監視とそのメカニズムを解明することが期待されています。GCOMには水循環変動観測衛星(GCOM-W)と気候変動観測衛星(GCOM-C)の2つのシリーズがあります。このうちGCOM-Cは雲、エアロゾル(大気中のちり)、海色、植生、雪氷などを観測します。

関連リンク
 JAXA/EORC ALOS解析研究プロジェクト
 http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/index_j.htm
 陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」
 http://www.jaxa.jp/projects/sat/alos/index_j.html



図1 今回公開する高精度土地被覆図(左:日本全域, 右:関東地方の拡大例)


図2 土地被覆図の利用拡大