プレスリリース

このプレスリリースは宇宙開発事業団(NASDA)が発行しました

プリント

AMSR-Eデータリリースについて

平成15年6月18日

宇宙開発事業団

本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。

データリリースまでの経緯

  • H14.5. 4 EOS Aqua衛星打ち上げ
  • H14.6.12 AMSR-E初画像
  • H14.8.29 初期機能確認審査
    → 校正・検証フェーズへ移行

  • オホーツク海氷観測における砕氷船「そうや」からの現場観測
    ◆定常地上観測データとの比較
     - ラジオゾンデデータ
     - 海洋ブイデータ
    ◆観測実験
     - オホーツク海氷観測実験
     - 若狭湾固体降水観測実験
  • H15.5.28 データ提供確認会

物理量検証

  • 物理量検証の一例(積算水蒸気量)。左図はAMSR-Eによる積算水蒸気量の推定値(縦軸)と、ラジオゾンデ※データから算出した水蒸気量(横軸)の比較散布図。右図は使用したラジオゾンデ観測の分布。

    *気球により大気の温度・湿度・気圧等を計測するもので、高層気象観測とも呼ばれる。各国の気象現業機関等により定常的に観測が実施されている。

プロダクトと目標精度

プロダクト目標精度現状精度
輝度温度 1K 1K
積算水蒸気量 3.5 kg/m2 < 3.5 kg/m2
積算雲水量 0.05 kg/m2 アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み
降水量 10% アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み
海上風速 1.5 m/s < 1.5 m/s
海面水温 0.5 ℃ 〜 0.6 ℃
海氷密接度 10% アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み
積雪深 20%または5cm アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み

AMSR-Eプロダクト例:積算水蒸気量


1日分(夜間データのみ)の積算水蒸気量分布 2003年6月7日

AMSR-Eプロダクト例:海面水温


月平均(夜間データのみ)の全球海面水温分布 2002年12月

プロダクトの現状

  • 輝度温度プロダクト(レベル1*)
    他衛星データ等との比較により、配布可能なレベルに達していることを確認した。


  • 高次プロダクト(レベル2、3)
    積算水蒸気量、海面水温、海上風速等、いくつかの物理量については、現在までにほぼ目標のレベルに達していることが確認できている。これは入力となるL1プロダクトの品質が妥当であることを示しており、他の物理量についても高次プロダクトリリースまでに目標を達成できる見込みである。

     *レベル3の輝度温度平均プロダクトも含む

今後の予定

  • レベル1プロダクトは、宇宙開発委員会にて了承を得た後、速やかに配布を開始する。
  • レベル2以上の高次プロダクトは、アルゴリズム調整と検証を完了し、8月中に順次公開の予定。
時期項目
6月中旬 レベル1プロダクトリリース
6月中旬〜 過去データのレベル1再処理
7月中/下旬 高次アルゴリズム引渡し確認会
8月〜 高次プロダクト(Ver.1)リリース

AMSR-E全球画像公開ページ

AMSR-Eの全球画像を定常的に作成し、毎日更新している。現在のところ輝度温度、海面水温、水蒸気量、海氷密接度を公開中。

http://www.eorc.nasda.go.jp/AMSR/
→ Level3 ブラウズ をクリック

89GHz A受信機V偏波の出力低下について

 AMSR-Eは6〜89GHzまでの6周波数帯で、それぞれ水平(H)偏波・垂直(V)偏波で観測を行っている。89GHz帯にはA,B2つの受信機があり、総チャンネル数は14である。
 14チャンネルの内、89GHz A受信機V偏波チャンネルの出力電圧が低下している。この状態が継続すると、H16年8月頃に観測対象(150K)の出力が、観測不能状態まで低下すると予想される。
 不具合原因は現在究明中である。
 89GHz帯はA受信機の他、B受信機においても観測を実施しており、ミッションへのインパクトは低いと考えられる。
添付1 観測領域イメージ図
添付2 観測不能後のシミュレーション画像



添付1 観測領域イメージ

 89GHz帯では、右図に示すように、A,B受信機により、観測領域の抜けを回避している。その為、A受信機出力がなくなると、観測領域の抜けが発生する。

 (米国のマイクロ波放射計のTMIは、右図のBのみと同様の状態で観測している)

添付2 観測不能後のシミュレーション画像

AMSR-E 89GHz水平偏波による北日本付近の輝度温度画像。白い領域ほど輝度温度が高い。左図はA系とB系を両方用いた場合、右図はB系のみを用いた場合を示している。A系の情報が抜けている分だけ、右図の画像が粗くなっている。


前ページと同様の図で、日本付近全体を表示したもの。