本日開催された宇宙開発委員会において、下記のとおり報告をいたしました。
データリリースまでの経緯
- H14.5. 4 EOS Aqua衛星打ち上げ
- H14.6.12 AMSR-E初画像
- H14.8.29 初期機能確認審査
→ 校正・検証フェーズへ移行

オホーツク海氷観測における砕氷船「そうや」からの現場観測 |
◆定常地上観測データとの比較
- ラジオゾンデデータ
- 海洋ブイデータ
◆観測実験
- オホーツク海氷観測実験
- 若狭湾固体降水観測実験 |
- H15.5.28 データ提供確認会
物理量検証
- 物理量検証の一例(積算水蒸気量)。左図はAMSR-Eによる積算水蒸気量の推定値(縦軸)と、ラジオゾンデ※データから算出した水蒸気量(横軸)の比較散布図。右図は使用したラジオゾンデ観測の分布。
*気球により大気の温度・湿度・気圧等を計測するもので、高層気象観測とも呼ばれる。各国の気象現業機関等により定常的に観測が実施されている。
プロダクトと目標精度
プロダクト | 目標精度 | 現状精度 |
輝度温度 |
1K |
1K |
積算水蒸気量 |
3.5 kg/m2 |
< 3.5 kg/m2 |
積算雲水量 |
0.05 kg/m2 |
アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み |
降水量 |
10% |
アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み |
海上風速 |
1.5 m/s |
< 1.5 m/s |
海面水温 |
0.5 ℃ |
〜 0.6 ℃ |
海氷密接度 |
10% |
アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み |
積雪深 |
20%または5cm |
アルゴリズム調整及び検証中
リリースまでに達成の見込み |
AMSR-Eプロダクト例:積算水蒸気量
1日分(夜間データのみ)の積算水蒸気量分布 2003年6月7日
AMSR-Eプロダクト例:海面水温
月平均(夜間データのみ)の全球海面水温分布 2002年12月
プロダクトの現状
- 輝度温度プロダクト(レベル1*)
他衛星データ等との比較により、配布可能なレベルに達していることを確認した。
- 高次プロダクト(レベル2、3)
積算水蒸気量、海面水温、海上風速等、いくつかの物理量については、現在までにほぼ目標のレベルに達していることが確認できている。これは入力となるL1プロダクトの品質が妥当であることを示しており、他の物理量についても高次プロダクトリリースまでに目標を達成できる見込みである。
*レベル3の輝度温度平均プロダクトも含む
今後の予定
- レベル1プロダクトは、宇宙開発委員会にて了承を得た後、速やかに配布を開始する。
- レベル2以上の高次プロダクトは、アルゴリズム調整と検証を完了し、8月中に順次公開の予定。
時期 | 項目 |
6月中旬 |
レベル1プロダクトリリース |
6月中旬〜 |
過去データのレベル1再処理 |
7月中/下旬 |
高次アルゴリズム引渡し確認会 |
8月〜 |
高次プロダクト(Ver.1)リリース |
AMSR-E全球画像公開ページ
AMSR-Eの全球画像を定常的に作成し、毎日更新している。現在のところ輝度温度、海面水温、水蒸気量、海氷密接度を公開中。
http://www.eorc.nasda.go.jp/AMSR/
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89GHz A受信機V偏波の出力低下について
- AMSR-Eは6〜89GHzまでの6周波数帯で、それぞれ水平(H)偏波・垂直(V)偏波で観測を行っている。89GHz帯にはA,B2つの受信機があり、総チャンネル数は14である。
14チャンネルの内、89GHz A受信機V偏波チャンネルの出力電圧が低下している。この状態が継続すると、H16年8月頃に観測対象(150K)の出力が、観測不能状態まで低下すると予想される。
不具合原因は現在究明中である。 - 89GHz帯はA受信機の他、B受信機においても観測を実施しており、ミッションへのインパクトは低いと考えられる。
- 添付1 観測領域イメージ図
添付2 観測不能後のシミュレーション画像
添付1 観測領域イメージ
89GHz帯では、右図に示すように、A,B受信機により、観測領域の抜けを回避している。その為、A受信機出力がなくなると、観測領域の抜けが発生する。
(米国のマイクロ波放射計のTMIは、右図のBのみと同様の状態で観測している) |
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添付2 観測不能後のシミュレーション画像
AMSR-E 89GHz水平偏波による北日本付近の輝度温度画像。白い領域ほど輝度温度が高い。左図はA系とB系を両方用いた場合、右図はB系のみを用いた場合を示している。A系の情報が抜けている分だけ、右図の画像が粗くなっている。
前ページと同様の図で、日本付近全体を表示したもの。