S-310/S-520/SS-520

チームリーダが語る私たちのミッション

観測ロケットは主に宇宙科学観測用に開発された固体ロケットで、高度100kmから1000kmの宇宙空間を飛行しながら落下するまでの間に各種観測や実験を行う小型飛翔体です。天文観測やプラズマ物理観測、超高層大気観測などの理学観測の他、微小重力実験や大型構造物の伸展展開といった宇宙工学実験にも使用されています。新規開発された電子機器や制御装置の実飛行環境での検証にも効果を上げてきました。観測機器や実験装置はロケット上部の頭胴部と呼ばれる場所に収納され、実験終了後はロケット本体とともに海上に落下します。

観測ロケットは、主として鹿児島県大隅半島東端に位置する内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられます。オーロラ直接観測のため南極基地やノルウェーアンドーヤ基地からも打ち上げられたことがあります。内之浦宇宙空間観測所からは過去46年間に科学衛星打ち上げ用Mロケットも含めて大小様々な観測ロケット約400機が打ち上げられました。現在では年2機程度の頻度で観測ロケットを打ち上げています。

観測ロケット実験の魅力の第1は実験提案から実施(実験成果の獲得)まで短期間で実現できる点です。実験は年1回、広く大学等の研究者に公募します。実験が採択されると約1年間設計検討した後、打ち上げ前の地上試験(噛合せ試験といいます)で全機能を確認した後、打ち上げに臨みます。あまりロケットや衛星計画に馴染みのない研究者も多く、提案者の要求とそれを実現するためのシステム調整に大半の時間が費やされます。苦労して設計改修した機器が大空に飛び立ち、見事予定通り動作した時の研究者の喜びと感動は忘れることができません。

観測ロケットの魅力の第2はJAXA若手職員が中心となって各号機毎のシステム検討を進めている点です。提案者の要求を確実に実現するためにはどうしたらよいか、毎号機異なる難題を解決しています。観測ロケットプロジェクトで得た実体験を糧にして、より大型の将来ミッションで力を発揮してくれることを期待しています。

(写真:噛合せ試験中の観測ロケットS-520-24号機の頭胴部と著者(右)。左は副室長の吉田裕二さん。)

(2008年7月23日 更新)

プロジェクトマネージャ 石井信明